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カテゴリー: 東洋医学  |  癌・腫瘍学

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がん漢方

1版

国際医療福祉大学 学長/慶應義塾大学医学部 名誉教授 北島政樹 監修
北里大学薬学部 今津嘉宏 編集

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  197頁
  • 2012年8月 発行
  • ISBN 978-4-525-42581-4

本書はがん治療における漢方治療をエビデンスと臨床経験に基づき解説した1冊である.がん薬物治療により惹起する副作用の軽減を目的とした漢方治療をはじめ,栄養・疼痛管理など,診療科横断的なマネジメントを補完・代替する漢方治療の実際などについて症例を盛り込み,わかりやすく解説した.

  • 序文
  • 目次
序文
監修のことば

 21世紀のがん医療に於いて,免疫治療,遺伝子治療ペプチドワクチンなどによる先進的医療が注目を浴びる時代に,「がん領域の漢方治療」という異なる視点からがん医療を論じる書籍「がん漢方」を企画した編者に敬意を表したい.従来,西洋医学はがん細胞を中心に攻撃し,漢方医学は宿主の免疫力を高めると認識されてきたが,両者を癒合させ効果を増強させるという考えが本書の根幹にあると想定される.
 両医学の癒合が論じられるのも,近年に至り,漢方における基礎・臨床研究によるエビデンスが蓄積され,二重盲検試験による信頼性の高い副作用調査や薬物動態試験が多施設共同研究として行われるようになったからである.さらに漢方薬の保険収載も信頼性と普及に貢献していると云える.保険収載に於いては元日本医師会会長武見太郎先生のご尽力の賜物と云われている.先生は常に「日本は外国の薬に頼るばかりで独自の薬が乏しい」と語られ,漢方を世界に発信することが夢であられた.まさに先生の夢が具現化し得たと云っても過言ではない.漢方は今や時代の潮流として研究成果が蓄積され,SurgeryやGastroenterologyなど海外のトップジャーナルに掲載され,毎年ASCO(米国臨床腫瘍学会)やDDW(米国消化器病週間)で発表されるようにもなった.その結果,海外での研究が推進され,シカゴ大学やUCLAなどでの共同研究も進行中である.このような時代背景のなかで,がん治療に於ける漢方の位置付けはどうなのであろうか.西洋・東洋医学を基本理念とした両者の欠如した効能を補い合う漢方は,抗がん薬に対する末梢神経障害,あるいは術後の体力低下や腸管運動障害など東洋医学で云う「気を補う補(気)剤」として評価されている.すなわち,免疫力やホルモン分泌を活性化し,抗がん薬の効果を高めている.特に補中益気湯,大建中湯,六君子湯,および牛車腎気丸が汎用され,わが国に於いては公的資金による研究成果も挙げている.一方,今や漢方はFDAの認可を受け,臨床治験も日米間で推進されている.米国の云う“補完代替医療”の範疇から完全に脱却したと云え,がん医療に於いて先進医療が展開されるなか,一条の光明となることを期待する.

2012年 夏
国際医療福祉大学 学長/慶應義塾大学医学部 名誉教授
北島政樹




 平成21年度厚生労働省がん研究助成金による「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班で行われた「がん診療に携わる医師および薬剤師の漢方治療と代替医療に関する意識調査」によれば,がん患者に対して漢方を処方したことがある医師は73.5%,その漢方薬の「処方意図がわかる」と回答した薬剤師は25.6%,「処方内容を患者に説明できる」と回答したのは19.3%でした.
 今回,がん治療に漢方医学を活用することを「がん漢方」と名付けました.「がん漢方」は,これまで経験学的に行われてきた漢方医学をがん治療において西洋医学と同じようにエビデンスに基づいた治療の選択肢として行うためのものです.がん治療における漢方薬の役割を明確にするために,がん治療と漢方医学のこれまでの歴史的関わりについて安達勇先生にまとめていただきました.基礎的研究によって解明された漢方薬の働きについては河野透先生にお願いいたしました.臨床の現場で漢方医学を活用するためのヒントを星野惠津夫先生に,薬学的側面からは伊東俊雄先生にお願いいたしました.さらに漢方医学をより理解しやすいように漢方理論をまとめました.漢方薬をそれぞれの病態に合わせて活用するために,周術期管理に関しては,齋藤伸也先生,佐々木一晃先生にお願いいたしました.がん化学療法の副作用対策には,太田惠一朗先生,沖本二郎先生,進藤吉明先生,森清志先生,日高隆雄先生にお願いいたしました.がん転移の抑制効果については基礎的研究を踏まえ済木育夫先生にまとめていただきました.
 がん診療における横断的マネジメントとして栄養管理にもふれ,緩和ケアについては,園部聡先生,川原玲子先生,恵紙英昭先生,大野智先生にそれぞれの領域における漢方薬の使い分けをまとめていただきました.在宅医療における漢方薬の活用方法について提案し,最後に副作用を中心として漢方薬を実際に使うときの注意事項を保険診療におけるルールも含めて解説させていただきました.
 医師,歯科医師,薬剤師,看護師などがん治療に携わるすべての医療関係者の方々に活用していただければ幸いです.

2012年 夏
北里大学薬学部
今津嘉宏


目次
第1章 がん領域の漢方治療に必要な基礎知識

■がん治療の歴史からひも解く「西洋医学と漢方医学」の有用性
1 がん医療の変遷
2 漢方医療が重要視されてきた背景
3 がん緩和治療に漢方治療を併用する臨床的意義
4 緩和医療における本治と標治による中西医融合療法
5 緩和ケアにおける漢方方剤の使用法


■がん治療を支える漢方薬のエビデンス
1 高まる漢方薬のエビデンス
2 六君子湯
3 牛車腎気丸
4 半夏瀉心湯


■漢方医学的視点からみたがん患者が呈する基本的病態
1 わが国のがんの現況と漢方の役割
2 がんの治療に漢方医学が必要な理由
3 「癌証」の概念とその治療法
4 「補剤」とは何か
5 西洋医学的抗がん治療と漢方「補剤」の作用点の違い
6 「癌証」に対する補剤の適用法
7 がん患者に対する漢方薬の投与法
8 がん患者の症状緩和における「次の一手」としての漢方薬
9 漢方使用の著効例

■がん領域における漢方処方の組み立て方
—診察の基本から処方のコツまで—
1 どうして, 漢方医学理論が必要なのか?
2 漢方の診察
3 漢方の診断
4 漢方の処方
5 瘀 血


■西洋薬×漢方薬によるがん薬物療法の薬学的管理
1 漢方エキス剤の応用
2 漢方薬と西洋薬との併用
3 服薬指導とアドヒアランス
4 効果的な漢方薬の使用
5 がん治療ならびにがんによる疼痛対策
6 排便・下痢対策



第2章 がん治療をサポートする漢方薬とその使い方

■術前投与による手術侵襲の緩和
1 侵襲と炎症
2 SIRSという概念
3 手術侵襲によるSIRS
4 SIRS の制御とステロイド
5 CARSという概念とSIRS/CARSのバランス
6 術後経過とSIRS/CARS
7 SIRS/CARS の制御と漢方薬
8 手術と漢方薬
9 がん患者の術前処置としての補中益気湯の投与
10 補中益気湯の薬理作用とSIRS/CARSの制御

■術後イレウスの予防
1 消化器外科手術後に発生する合併症
2 大建中湯の効果と作用メカニズム
3 大建中湯の使い方
4 漢方薬使用の著効例


■術後の有害事象軽減
1 補剤による消化器がん術後の有害事象軽減や免疫系に対する効果
2 漢方薬使用の著効例


■フルオロウラシル系薬の副作用対策
1 がん薬物治療時の漢方治療の基本的な考え方
2 フルオロウラシル系薬剤
3 がん薬物治療の副作用軽減に用いられる代表的方剤


■シスプラチン・カルボプラチンの副作用対策
1 シスプラチンとカルボプラチンの副作用
2 シスプラチン腎障害に対する柴苓湯の効果
3 カルボプラチン骨髄抑制に対する十全大補湯の効果
4 シスプラチンによる悪心・ 嘔吐,食欲不振などの
消化器症状に対する漢方薬の効果
5 抗がん薬副作用軽減を目的とした漢方薬の服用時期
6 抗がん薬副作用軽減を目的とした漢方薬選択のポイント
7 漢方薬使用の著効例


■オキサリプラチンの副作用対策
1 オキサリプラチンと末梢神経障害
2 末梢神経障害とは
3 オキサリプラチンによる末梢神経障害への対策
4 なぜ牛車腎気丸? その機序は?
5 症 例

■イリノテカンの副作用対策
1 イリノテカンについて
2 イリノテカンに伴う下痢について
3 イリノテカンに伴う全身倦怠感
4 漢方服用の投与タイミングと患者指導のポイント
5 漢方薬使用の著効例


■タキサン系薬の副作用対策
1 タキサン系薬の位置づけ
2 パクリタキセルによる末梢神経障害のメカニズム
3 パクリタキセルによる神経障害性疼痛の臨床経過と
芍薬甘草湯の臨床効果
4 芍薬甘草湯の作用メカニズム
5 芍薬甘草湯の服用時の留意点
6 漢方薬使用の著効例


■がん転移の抑制効果
1 天然薬物への期待と基礎研究
2 漢方医学における証と証診断
3 漢方薬(補剤)および関連方剤
4 十全大補湯の経口投与によるがんの悪性化進展
(プログレッション)の抑制
5 十全大補湯によるがん転移の抑制効果と その作用機序
6 十全大補湯関連方剤の経口投与による
がん転移の抑制効果と構成生薬の組み合せ
7 漢方方剤のハーモナイゼーション効果
8 漢方方剤の効果発現は臓器選択性(反応の場)あるいは
体質(系統差)が関係しているか?
9 現行の治療と漢方方剤との併用による転移抑制効果の増強



第3章 漢方・補完代替医療による診療科横断的な
がん患者のマネジメント

■栄養管理に有効な漢方薬
1 栄養アセスメント
2 がん患者の栄養アセスメント
3 がん患者への栄養療法
4 栄養管理における漢方療法
5 漢方薬使用の著効例


■緩和ケアに有効な漢方薬
1 緩和ケアとは
2 がん治療と緩和ケア
3 緩和ケアと緩和医療
4 緩和医療と漢方
5 緩和医療において使用される漢方
6 漢方薬使用の著効例
7 漢方薬内服の工夫
8 漢方薬をよりよく内服していただくために
9 漢方薬を処方するにあたって


■がんの経過に伴う症状へ有効な漢方薬
1 緩和ケアチームにおける漢方製剤の使用状況
2 投与方法と特殊製剤
3 漢方薬使用の著効例


■メンタルケアに有効な漢方薬
1 疫 学
2 診 断
3 精神症状に対する漢方薬
4 漢方薬選択のポイント
5 漢方薬使用の著効例


■緩和ケアで期待される補完代替医療の科学的検証
1 補完代替医療とは
2 補完代替医療の科学的根拠(エビデンス)
3 コミュニケーションの重要性


■漢方療法のリスクマネジメント
1 漢方薬および生薬製剤の安全性と副作用
2 漢方薬および生薬製剤の服薬指導時の注意点
3 漢方薬同士の併用について
4 併用禁忌,慎重投与,併用注意
5 西洋薬との相互作用
6 保険診療におけるルール


■在宅がん患者のセルフメディケーションと漢方薬
1 「薬箱」 をがん患者へ届ける
2 がん患者家族との連携について
3 「薬箱」 には何を入れるのか?
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