カテゴリー: 医学・医療一般
DPCデータにみる医療の質の指標化と改善
急性期病院の診療パフォーマンスの評価
1版
京都大学大学院 教授 今中雄一 監修
東京大学公共政策大学院 関本美穂 編集
定価
4,180円(本体 3,800円 +税10%)
- B5判 203頁
- 2011年7月 発行
- ISBN 978-4-525-43171-6
京都大学が主催するDPCデータ解析プロジェクトの15年間の成果をまとめた.本書の臨床指標やデータ解析は現役の医療従事者が行っており,現実に即した内容である.臨床指標と経営指標,あるいは医療の質の担保と効率的な医療提供がどのように繋がるのかを理論的かつ具体的に示し,指標が導き出されるまでの経緯や方法,その理由までを解説した.
- 序文
- 目次
序文
現在は大変厳しい時代の最中にある.さらに,未曾有の東日本大震災を経験し,医療も生活も経済も一層難しい世の中となっている.医療が受けられること,提供できることこそが改めて問われてきた.その中で,多くの人が連帯を強め,人々の忍耐と努力により医療が支えられている.力及ばぬ小生も復興には真摯な態度で臨まねばならない.そして,このような国家的危機を乗り越えて霧が晴れても,依然目の前には,慢性的で巨大な危機的問題が対峙している.それは,社会保障そして医療をいかに存続していけるのか,という課題である.医療の最も重要な提供場面において,質の向上と経済性の向上を両立させ加速させることが,一層求められている.
このような中,情報技術や使えるデータ基盤の進展により,医療のデータ化,可視化が進んでいる.医療をよりよく展開していくための運営・経営においても,診療報酬,地域医療計画や地域医療再生計画などの制度・政策においても,現在は,データの活用が急速な勢いで進んでいく転換期にあるといえよう.これらにおけるデータ活用は,数年後にはさらに大きな進化を見せているはずだ.
本書は,医療のパフォーマンスの評価・向上に役立つという大目標のもと,『臨床活動について,DPCデータの分析と解釈や活用の実際を示す』ために作成したものである.今後のDPCデータの分析や活用,そして他のデータ分析にも,必ずや応用できたり,ヒントになることがあると考えている.また,本書は,既存のDPC関連書籍と違って,臨床活動に焦点を当てているのが特徴である.
本書は,次のような読者を想定し,少しでも役立ててもらえることを目指している.
◎データ活用を強化して,病院医療の運営を向上させたい方〔病院の経営幹部,部門の長〕
◎実際の医療向上に,また,データ分析に携わる方〔医師・医療者,データ分析担当者〕
◎医療の制度,政策にデータを活用していく必要を感じている方〔行政,政策立案者〕
◎将来の医療人や学生,医療のデータや評価を教える教科書を探している方〔先生と学生〕
◎さまざまな動機により医療の評価について調べている方〔医療の利用者〕
われわれの教室には,各診療科の専門医をはじめ,医療の多様な専門性を有する者が,医療の質と経済性の評価・向上の研究・実践のために,集まってきてくれている.そのようなメンバーでの議論や分析,そして協力病院の方々や医療にかかわる多くの方々の助言や議論をベースに本書の完成に至った.
本書を,臨床活動の可視化や,医療の質・運営の向上の足がかりとしていただけると幸いである.
2011年6月
京都大学大学院医学研究科 教授
今中雄一
このような中,情報技術や使えるデータ基盤の進展により,医療のデータ化,可視化が進んでいる.医療をよりよく展開していくための運営・経営においても,診療報酬,地域医療計画や地域医療再生計画などの制度・政策においても,現在は,データの活用が急速な勢いで進んでいく転換期にあるといえよう.これらにおけるデータ活用は,数年後にはさらに大きな進化を見せているはずだ.
本書は,医療のパフォーマンスの評価・向上に役立つという大目標のもと,『臨床活動について,DPCデータの分析と解釈や活用の実際を示す』ために作成したものである.今後のDPCデータの分析や活用,そして他のデータ分析にも,必ずや応用できたり,ヒントになることがあると考えている.また,本書は,既存のDPC関連書籍と違って,臨床活動に焦点を当てているのが特徴である.
本書は,次のような読者を想定し,少しでも役立ててもらえることを目指している.
◎データ活用を強化して,病院医療の運営を向上させたい方〔病院の経営幹部,部門の長〕
◎実際の医療向上に,また,データ分析に携わる方〔医師・医療者,データ分析担当者〕
◎医療の制度,政策にデータを活用していく必要を感じている方〔行政,政策立案者〕
◎将来の医療人や学生,医療のデータや評価を教える教科書を探している方〔先生と学生〕
◎さまざまな動機により医療の評価について調べている方〔医療の利用者〕
われわれの教室には,各診療科の専門医をはじめ,医療の多様な専門性を有する者が,医療の質と経済性の評価・向上の研究・実践のために,集まってきてくれている.そのようなメンバーでの議論や分析,そして協力病院の方々や医療にかかわる多くの方々の助言や議論をベースに本書の完成に至った.
本書を,臨床活動の可視化や,医療の質・運営の向上の足がかりとしていただけると幸いである.
2011年6月
京都大学大学院医学研究科 教授
今中雄一
目次
第1章 診療活動の指標化プロジェクト“QIP”
QIPと制度・政策の流れ
診療情報管理とDPC包括評価(診断群分類に基づく支払制度)
データの活用
質改善(データ活用)のインフラと組織文化
第2章 医療の質と指標:概念体系と実例
医療の質とその評価軸
医療評価の立場・スコープと評価手法
「システムの質」の評価と臨床指標
質の保証と改善,そして説明力
第3章 急性期病院の入院機能を表す3つの指標
平均在院日数─ありふれた指標
平均在院日数の意味─湊 先生との出会い
急性期病院の機能
病院の機能分化と地域連携
症例数─診療圏の大きさを表す指標
在院日数─急性期医療の質を表す指標
1日単価─診療の集中度を表す指標
病院レベル・診療科レベル・疾患レベルの入院機能評価
急性期病院の収益構造
第4章 急性期病院の外来機能
入院患者をどこから獲得するか?
紹介率と逆紹介率
急性期病院の診療機能に関する指標
急性期病院における一般外来診療の比重
一般外来診療の比重が高い病院とは
外来診療に対するマンパワーと入院診療に対するマンパワー
病院の設立主体と入院診療・外来診療の機能
外来診療の評価とDPCデータ
外来診療のための診断群分類“APG”
外来診療の評価の必要性
第5章 患者アウトカムの評価
患者アウトカムとは
DPCデータで評価できる患者アウトカム
アウトカム指標としての「死亡」
ロジスティック回帰分析による死亡予測因子の同定
急性心筋梗塞の死亡予測モデル
「症例数-アウトカム関係」と支払制度に関する議論
DPCデータを利用した「症例数-アウトカム関係」の検討
集中治療室(ICU)患者の死亡予測モデル
Administrative dataを利用したICU患者の死亡予測モデル
DPCデータを利用したICU患者の死亡予測モデルの開発
予測モデルの性能
DPCデータを利用したアウトカム評価の問題点
DPCデータによる予測死亡率の年次推移
病名入力と予測死亡率
DPCデータとアウトカム評価
病院全体の質の評価としての「死亡率」
第6章 医療の標準化
医療における「バラツキ」
なぜ「標準化」が必要なのか?
医療の標準化は,医療の質の向上につながるのだろうか?
在院日数や医療費のバラツキはどこから生まれるか?
病院間・医師間で医療のやり方はどのように違うか?─解析例(1):周術期の予防的抗菌薬投与
医療の標準化をどのように評価するか?─解析例(2):白内障治療の標準化
がん治療における標準化─解析例(3):卵巣がんの化学療法の標準化
DPCデータを利用した,卵巣がんの術後化学療法の評価
DPCデータを利用した,がん治療の評価における問題点
第7章 手術室の利用と運営
プロローグ─手術部師長の憂うつ
医療機関にとって手術室の運営はなぜ重要なのか?
手術室運営のアウトプット指標
手術室運営のインプット指標
手術室の効率的な利用
時間外の緊急手術に対する診療報酬
手術の難易度と診療報酬
手術室運営に必要な資源と,その効率的利用
手術室を効率的に運営するために
第8章 医療資源消費の評価
医療資源消費とは
診断群分類と医療資源消費
医療資源消費のベンチマーキングの例:血液製剤
診療報酬制度を利用した経済誘導
輸血リスクを考慮した血液製剤使用量の評価
輸血の適切性の評価
輸血の適切性の評価とケースミックスを調整した使用量
抗菌薬使用のベンチマーキング
周術期の抗菌薬投与と術後感染性合併症の発生
抗菌薬の使用パターンから病院感染を同定する
周術期の抗菌薬投与の評価
DPCデータを利用した病院感染発生割合の推定─妥当性評価
第9章 診療の推移の評価
医療技術の進歩と診療の変化
乳がんの外科的治療の変遷
ガイドラインの影響
日本における乳がんの外科的治療の推移
個々の病院における診療の変化
第10章 支払制度と診療の変化
医師の診療を変えるには
医療における成果主義:P4P
経済的インセンティブによる医療サービスの変化
管理型医療「マネッジドケア」
アメリカの包括支払制度:PPS
DPCに基づく包括支払制度と経済的インセンティブ
DPCに基づく包括支払制度による診療の変化
第11章 医療連携・地域連携
急性期病院の在院日数適正化と医療機能分化
日本の急性期病院の在院日数はなぜ長いのか?
医療機関の機能分化の考え方
「医療連携・地域連携」とは
「連携」を評価するための指標
在院日数や退院先に関連する因子を考える
在院日数や転院と患者因子
在院日数に関連する因子と転院割合に関連する因子の違い
転院割合が同じような病院間で,平均在院日数が異なるのはなぜか?
在院日数短縮のために病院ができること
在院日数に関連する因子の解析結果のまとめ
今後のDPCデータ解析に求められるもの
Column 1 コード体系とデータセットの課題
Column 2 臨床的パフォーマンス指標の典型例
Column 3 データ活用や改善に重要な「組織文化」
Column 4 診断群分類(ケースミックス分類)と診療情報電子化の必要性
Column 5 O/E比の考え方
Column 6 箱ひげ図の読み方
Column 7 感染対策の普及と診療報酬
参考資料
附表1-症例数の多い20の診断群分類における在院日数のバラツキの評価
附表2-症例数の多い20の診断群分類における1入院あたり医療費のバラツキの評価
附表3-症例数の多い20の診断群分類における1日あたり医療費のバラツキの評価
附表4-主要な疾患・術式における抗菌薬使用パターン
索 引
QIPと制度・政策の流れ
診療情報管理とDPC包括評価(診断群分類に基づく支払制度)
データの活用
質改善(データ活用)のインフラと組織文化
第2章 医療の質と指標:概念体系と実例
医療の質とその評価軸
医療評価の立場・スコープと評価手法
「システムの質」の評価と臨床指標
質の保証と改善,そして説明力
第3章 急性期病院の入院機能を表す3つの指標
平均在院日数─ありふれた指標
平均在院日数の意味─湊 先生との出会い
急性期病院の機能
病院の機能分化と地域連携
症例数─診療圏の大きさを表す指標
在院日数─急性期医療の質を表す指標
1日単価─診療の集中度を表す指標
病院レベル・診療科レベル・疾患レベルの入院機能評価
急性期病院の収益構造
第4章 急性期病院の外来機能
入院患者をどこから獲得するか?
紹介率と逆紹介率
急性期病院の診療機能に関する指標
急性期病院における一般外来診療の比重
一般外来診療の比重が高い病院とは
外来診療に対するマンパワーと入院診療に対するマンパワー
病院の設立主体と入院診療・外来診療の機能
外来診療の評価とDPCデータ
外来診療のための診断群分類“APG”
外来診療の評価の必要性
第5章 患者アウトカムの評価
患者アウトカムとは
DPCデータで評価できる患者アウトカム
アウトカム指標としての「死亡」
ロジスティック回帰分析による死亡予測因子の同定
急性心筋梗塞の死亡予測モデル
「症例数-アウトカム関係」と支払制度に関する議論
DPCデータを利用した「症例数-アウトカム関係」の検討
集中治療室(ICU)患者の死亡予測モデル
Administrative dataを利用したICU患者の死亡予測モデル
DPCデータを利用したICU患者の死亡予測モデルの開発
予測モデルの性能
DPCデータを利用したアウトカム評価の問題点
DPCデータによる予測死亡率の年次推移
病名入力と予測死亡率
DPCデータとアウトカム評価
病院全体の質の評価としての「死亡率」
第6章 医療の標準化
医療における「バラツキ」
なぜ「標準化」が必要なのか?
医療の標準化は,医療の質の向上につながるのだろうか?
在院日数や医療費のバラツキはどこから生まれるか?
病院間・医師間で医療のやり方はどのように違うか?─解析例(1):周術期の予防的抗菌薬投与
医療の標準化をどのように評価するか?─解析例(2):白内障治療の標準化
がん治療における標準化─解析例(3):卵巣がんの化学療法の標準化
DPCデータを利用した,卵巣がんの術後化学療法の評価
DPCデータを利用した,がん治療の評価における問題点
第7章 手術室の利用と運営
プロローグ─手術部師長の憂うつ
医療機関にとって手術室の運営はなぜ重要なのか?
手術室運営のアウトプット指標
手術室運営のインプット指標
手術室の効率的な利用
時間外の緊急手術に対する診療報酬
手術の難易度と診療報酬
手術室運営に必要な資源と,その効率的利用
手術室を効率的に運営するために
第8章 医療資源消費の評価
医療資源消費とは
診断群分類と医療資源消費
医療資源消費のベンチマーキングの例:血液製剤
診療報酬制度を利用した経済誘導
輸血リスクを考慮した血液製剤使用量の評価
輸血の適切性の評価
輸血の適切性の評価とケースミックスを調整した使用量
抗菌薬使用のベンチマーキング
周術期の抗菌薬投与と術後感染性合併症の発生
抗菌薬の使用パターンから病院感染を同定する
周術期の抗菌薬投与の評価
DPCデータを利用した病院感染発生割合の推定─妥当性評価
第9章 診療の推移の評価
医療技術の進歩と診療の変化
乳がんの外科的治療の変遷
ガイドラインの影響
日本における乳がんの外科的治療の推移
個々の病院における診療の変化
第10章 支払制度と診療の変化
医師の診療を変えるには
医療における成果主義:P4P
経済的インセンティブによる医療サービスの変化
管理型医療「マネッジドケア」
アメリカの包括支払制度:PPS
DPCに基づく包括支払制度と経済的インセンティブ
DPCに基づく包括支払制度による診療の変化
第11章 医療連携・地域連携
急性期病院の在院日数適正化と医療機能分化
日本の急性期病院の在院日数はなぜ長いのか?
医療機関の機能分化の考え方
「医療連携・地域連携」とは
「連携」を評価するための指標
在院日数や退院先に関連する因子を考える
在院日数や転院と患者因子
在院日数に関連する因子と転院割合に関連する因子の違い
転院割合が同じような病院間で,平均在院日数が異なるのはなぜか?
在院日数短縮のために病院ができること
在院日数に関連する因子の解析結果のまとめ
今後のDPCデータ解析に求められるもの
Column 1 コード体系とデータセットの課題
Column 2 臨床的パフォーマンス指標の典型例
Column 3 データ活用や改善に重要な「組織文化」
Column 4 診断群分類(ケースミックス分類)と診療情報電子化の必要性
Column 5 O/E比の考え方
Column 6 箱ひげ図の読み方
Column 7 感染対策の普及と診療報酬
参考資料
附表1-症例数の多い20の診断群分類における在院日数のバラツキの評価
附表2-症例数の多い20の診断群分類における1入院あたり医療費のバラツキの評価
附表3-症例数の多い20の診断群分類における1日あたり医療費のバラツキの評価
附表4-主要な疾患・術式における抗菌薬使用パターン
索 引