カテゴリー: 東洋医学 | 総合診療医学/プライマリ・ケア医学
あつまれ!! 飯塚漢方カンファレンス
漢方処方のプロセスがわかる
1版
飯塚病院 東洋医学センター 漢方診療科 吉永 亮 著
定価
3,960円(本体 3,600円 +税10%)
- B5判 190頁
- 2021年7月 発行
- ISBN 978-4-525-47151-4
漢方診療の基本がわかる,思考がわかる,処方がわかる
漢方薬の処方を覚えると普段の診療の幅を大きく広げることができますが,一から覚えるのはハードルが高いと思っていませんか?
本書では基本の陰陽虚実,六病位,気血水といった概念から脈診・舌診・腹診の診察法までしっかり学ぶことができます.リョウ先生,ヒロミ先生,T部長とのカンファレンスを通して,漢方医の思考を身に付けていきましょう.問診の意図がわかればどんな漢方薬を用いればいいのかわかってくるはずです.
これから漢方を勉強したい,感染症や慢性疾患の治療の選択肢を増やしたい方にぜひおすすめです.
- 序文
- 目次
- 書評
- 推薦の序
現在,私は漢方専門医として漢方教育に携わる機会も増えてきました.その一環として当科では,研修にくる医師に加え,近隣の医療機関や漢方教育に携わる先生方などを対象とした漢方の症例検討会を行っています.その会では,症例とその治療経過を提示して,どの漢方薬を選択するか参加者の先生にも候補を考えてもらいます.その際は病名やフローチャートから漢方を選択するのでなく,実際の診療を想定して処方選択のプロセスを学べる形式としています.
そこで本書は,私が外来研修で経験したような学びを書面上で行うことができるように,実際の漢方診療と症例カンファレンスを再現するような内容を目指しました.本書で呈示する症例は私が経験して,症例検討会で用いた症例がもとになっています.そして本書に登場する家庭医のリョウ先生は私自身がモデルです.リョウ先生の上司であるヒロミ先生,T部長とのカンファレンスを通じて,漢方医学の専門用語や診察を学んでいきます.漢方には様々な流派がありますが,本書の漢方の考え方の基本は,私の漢方の師匠筋にあたる寺澤捷年先生の「症例から学ぶ和漢診療学(医学書院)」,三潴忠道先生の「はじめての漢方診療十五話(医学書院)」に基づいています.漢方医学の詳しい解説はこれらの書籍をご参照ください.本書では自分が漢方を学ぶうえで理解しづらかった箇所,指導医の先生からいただいた明快な説明,症例検討会に参加した先生からの質問など,初学者のつまずきやすい,わかりにくい漢方のポイントをとくに強調して書きました.
本書が読者の皆様が漢方を学ぶうえでの一助となりましたら幸甚です.最後になりましたが,このような機会を与えてくださり,読みやすく編集いただいた南山堂編集部の皆様,さらにこれまで漢方のご指導をいただき,ご自身も登場キャラになってT部長のギャグまでご提供いただいた当科の田原英一部長にこの場を借りて御礼申し上げます.
2021年5月
吉永 亮
陰陽虚実
六病位
気血水
漢方の診察方法
漢方診療のポイント
陰陽虚実 編
寒がりですか? 体が冷えますか?
脈の力とお腹の力
風邪で冷えてきつい
手足の先が冷えて困ります
六病位 編
インフルエンザには麻黄湯?
のどが痛くて汗ばみます……
こじれた風邪には……
体が火照ってきついです……
繰り返す小児の腹痛
「冷え」で悪化する過敏性腸症候群
非常につらい倦怠感
気血水 編
月経困難の女性を診る
芍薬甘草湯が効かないこむら返り
雨天で悪化する頭痛には……
食欲不振には六君子湯?
心窩部がつかえて苦しい
最近,疲れやすいんです……
応用問題 編
お腹がゴロゴロいって下痢します
嫌な夢をみて眠れない……
顔がのぼせて不安で眠れません
目が飛び出るほどの激しい咳!
索引
金城謙太郎(帝京大学医学部救急医学講座 総合診療科)
約10年前,一人の家庭医療研修医は漢方薬が効くことを体験し,さらに多くの漢方薬処方ができればと考えていました.理解のある指導医らのはからいで,朝の「傷寒論」の輪読会にはじまり,問診,診察,処方を一人ひとり丁寧に行う漢方治療の現場に陪席し,生薬研究会,生薬の作り方を数ヵ月にわたり学ぶ機会を得たのが飯塚病院漢方診療科でした.その研修医とは私のことで,それらの経験から現在も漢方薬を処方させていただいています.
この新刊は,私が飯塚病院漢方診療科で学んだ漢方の考え方である「陰陽虚実」,「六病位」,「気血水」などの基本事項から,診察法である「脈診」,「腹診」,「舌診」などがはじめの総論でしっかり解説されています.その後は症例カンファレンス形式で,どのように考えて漢方薬を処方するかを実臨床に沿ってわかりやすく解説されています.西洋医学が不得意な冷え,のぼせ,倦怠感,疲労感,風邪の症状,こむら返り,つかえ感などに,あたかも漢方専門医のそばにいるかたちで漢方処方を擬似体験することができるのです.私もかつて一緒に学ばせていただいた日々を思い出しながら,新たな知識を得ることができ大変勉強になりました.
著者の吉永先生は自治医科大学卒業後,地域医療に従事していたご経験からもプライマリ・ケア医が知りたい事や学びにつながるポイントを押さえた内容で,漢方処方の実践が症例ごとによくわかる内容になっています.とくに,ある程度漢方薬の処方を経験し,さらに多くの症例にどのような薬を出すべきか悩んでいる研修医や指導医,そして地域で医療に携わり西洋医学と漢方処方を合わせて地域の人々の困っていることを解決したい諸先生に是非ご一読されることをお勧めします.
読後に,今後さらに幅広い症例に読者が対応できるような続編が出ればよいと願ってしまうような名著です.
著者の吉永 亮先生は盟友として,かつては私の在籍していた飯塚病院 漢方診療科に訪れながら,離島などへき地医療に従事し,漢方を活用していた.現在は飯塚病院で,入院患者を受け持つ漢方専門医また指導医として活躍している.その漢方歴から,漢方に興味をもつ人はもちろん,あまり興味をもたない医師たちにも理解しやすい入門書をまとめるに至ったと思われる.
漢方医学は臨床効果を求めて発達してきた.古くは天然の草根木皮を嘗めて経験的に薬効を知り,その生薬をさらに組み合わせてより有効な治療手段,すなわち方剤が形成された.生薬や方剤の効果を基として,漢方医学的理論が整理されたのであろう.さらに漢方医学的診断(証)は,証に応じた方剤が有効であって初めて確定される.すなわち漢方医学の基礎は,実臨床にこそある.本書は一見,平易に書き進めれているが,その根底には漢方の基本に対する確固たる認識があるからこそ,魅力的なのである.
漢方を志す意思の有無にかかわらず,多くの実地医家,医学生に参加してほしいカンファレンスとして,本書を推薦する次第である.
2021年5月
公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター
漢方医学講座 教授
三潴
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