カテゴリー: 臨床看護学
くすりがわかる 作用機序×使い方×観察・ケア
1版
宮崎大学医学部看護学科臨床薬理学 教授 柳田俊彦 監修
一般社団法人日本病院薬剤師会 会長 武田泰生 編集
熊本大学病院薬剤部 教授・薬剤部長 齋藤秀之 編集
大分大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長 伊東弘樹 編集
宮崎大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長 池田龍二 編集
定価
3,960円(本体 3,600円 +税10%)
- B5判 452頁
- 2023年12月 発行
- ISBN 978-4-525-50071-9
薬の作用機序とケアがつながる,だからわかる!
作用機序をはじめとする特徴,選び方や使い方のポイント,観察・ケアの3つの構成で薬を解説.
作用機序を知ることで,薬の特徴や使い方がしっかり理解できる.特徴や使い方がわかると,根拠をもったケアにつながる.
はじめて薬理学にふれる学生から,薬を学び直したい臨床現場のベテランまで,薬のことを知りたいすべての人におすすめする1冊.オールカラー.
- 序文
- 目次
- 書評
序文
医学・看護学の進歩とともに治療法やケア,薬の使い方も大きく変化しており,それに伴い,医療者に求められる薬の知識も膨大なものとなってきています.
薬物治療にチーム医療として携わる医師と看護師の薬との関わり方をみると,それぞれの大変さが明らかになります.医師が自身の受け持ち患者に対して専門領域の薬を能動的に選択するのに対し,看護師は病棟すべての患者を対象として個々の患者に向き合いながら,適切な薬物治療が実践されるように,すでに処方された薬について受動的に対応することになります.医師の立場で自身の専門とする領域,さらにはそれに関連する様々な専門領域の情報をアップデートしていくだけでも大変ですが,看護師の場合は,配属される病棟によってよく使われている薬が大きく違うという厳しい現実があります.新人看護師はもちろんのこと,ベテランの看護師であっても,配属先が変われば知らない薬だらけということが起こりえます.
厚生労働省に認められた薬価収載の医薬品は,約1万3,000品目(2023年8月時点)に及びます.それだけの治療薬すべてに詳しくなることはおよそ不可能ですし,現実的ではありません.薬の多さ,作用機序の複雑さゆえに,薬理学を苦手としている人も多いでしょう.また,大事だということはもちろんわかっているけれども,どこから手をつけたらいいかわからない,いざ本を読んでみても,難解な説明とカタカナばかりが並んでいてお手上げだという人も多いかもしれません.
そこで本書では,臨床で役立つ薬の知識について,薬に対する苦手意識を払拭できるよう,できるだけ平易な文章と図・イラストを多用し解説しました.臨床で必要とされる薬物相互作用の知識などは,個々の薬で理解することも大切ですが,基本となるルールや原則を知ることで応用できるようになります.そのような観点から,第1章では,薬全般についての基礎知識として,薬がどのように体内で効果を発揮するのか,それぞれの剤形にはどのような意味があるのか,用法の意味,添付文書の読み方,ジェネリック医薬品とは何か,などについて解説しています.また,第2章では,臨床で使われる機会の多い薬剤について,それぞれの作用機序,適応,ケア・観察のポイントや投与時の注意点などについて解説しています.
本書の作成にあたっては,宮崎大学,鹿児島大学,熊本大学,大分大学の薬剤部に所属している薬剤師の先生をはじめとして,多くの薬理学・臨床薬理学の教育研究者に参画いただき,臨床の現場において質問の多いこと,注意すべきことをできるだけわかりやすく記載いただきました.本書の編集にあたり,ご尽力いただきました多くの先生方,そして本書の企画段階から完成まで,根気強く丁寧に支えていただきました南山堂の松村みどり氏,海賀一早氏,古川晶彦氏に心より感謝申し上げます.
2023年10月
柳田俊彦
薬物治療にチーム医療として携わる医師と看護師の薬との関わり方をみると,それぞれの大変さが明らかになります.医師が自身の受け持ち患者に対して専門領域の薬を能動的に選択するのに対し,看護師は病棟すべての患者を対象として個々の患者に向き合いながら,適切な薬物治療が実践されるように,すでに処方された薬について受動的に対応することになります.医師の立場で自身の専門とする領域,さらにはそれに関連する様々な専門領域の情報をアップデートしていくだけでも大変ですが,看護師の場合は,配属される病棟によってよく使われている薬が大きく違うという厳しい現実があります.新人看護師はもちろんのこと,ベテランの看護師であっても,配属先が変われば知らない薬だらけということが起こりえます.
厚生労働省に認められた薬価収載の医薬品は,約1万3,000品目(2023年8月時点)に及びます.それだけの治療薬すべてに詳しくなることはおよそ不可能ですし,現実的ではありません.薬の多さ,作用機序の複雑さゆえに,薬理学を苦手としている人も多いでしょう.また,大事だということはもちろんわかっているけれども,どこから手をつけたらいいかわからない,いざ本を読んでみても,難解な説明とカタカナばかりが並んでいてお手上げだという人も多いかもしれません.
そこで本書では,臨床で役立つ薬の知識について,薬に対する苦手意識を払拭できるよう,できるだけ平易な文章と図・イラストを多用し解説しました.臨床で必要とされる薬物相互作用の知識などは,個々の薬で理解することも大切ですが,基本となるルールや原則を知ることで応用できるようになります.そのような観点から,第1章では,薬全般についての基礎知識として,薬がどのように体内で効果を発揮するのか,それぞれの剤形にはどのような意味があるのか,用法の意味,添付文書の読み方,ジェネリック医薬品とは何か,などについて解説しています.また,第2章では,臨床で使われる機会の多い薬剤について,それぞれの作用機序,適応,ケア・観察のポイントや投与時の注意点などについて解説しています.
本書の作成にあたっては,宮崎大学,鹿児島大学,熊本大学,大分大学の薬剤部に所属している薬剤師の先生をはじめとして,多くの薬理学・臨床薬理学の教育研究者に参画いただき,臨床の現場において質問の多いこと,注意すべきことをできるだけわかりやすく記載いただきました.本書の編集にあたり,ご尽力いただきました多くの先生方,そして本書の企画段階から完成まで,根気強く丁寧に支えていただきました南山堂の松村みどり氏,海賀一早氏,古川晶彦氏に心より感謝申し上げます.
2023年10月
柳田俊彦
目次
第1章 本当に知ってる?薬の基礎知識
1 薬が効くメカニズム (薬物動態学と薬力学)
2 剤形のしくみと特徴
3 薬の用法・用量
4 薬の副作用
5 薬物相互作用
6 ポリファーマシー
7 薬の適正使用
8 妊娠・授乳と薬物
9 添付文書・処方箋の読み方
10 ジェネリック医薬品・ バイオシミラー
11 OTC医薬品
第2章 知っておきたい! よく使われるあの薬
1 痛みや炎症に使う薬
1 抗炎症薬・解熱鎮痛薬
2 免疫疾患・アレルギーに使う薬
1 ステロイド
2 抗ヒスタミン薬
3 免疫抑制薬
4 分子標的薬
3 感染症に使う薬
1 抗菌薬
2 抗ウイルス
3 抗真菌薬
4 消毒薬
4 精神・神経疾患に使う薬
1 抗てんかん薬
2 パーキンソン病治療薬
3 片頭痛治療薬
4 抗うつ薬・気分安定薬
5 睡眠薬
6 抗不安薬
7 抗精神病薬
8 認知症治療薬
9 麻酔薬
10 筋弛緩薬
5 循環器疾患に使う薬
1 抗血小板薬
2 抗凝固薬
3 降圧薬
4 昇圧薬
5 抗不整脈薬
6 利尿薬
6 呼吸器疾患に使う薬
1 鎮咳薬・去痰薬
2 気管支喘息治療薬
7 消化器疾患に使う薬
1 制酸薬・胃粘膜保護薬
2 止瀉薬
3 整腸薬
4 下 剤
8 腎・泌尿器疾患に使う薬
1 排尿障害治療薬
9 内分泌疾患に使う薬
1 ホルモン製剤
2 甲状腺疾患治療薬
10 代謝疾患に使う薬
1 血糖降下薬
2 インスリン製剤
3 脂質異常症治療薬
4 高尿酸血症治療薬
5 骨粗鬆症治療薬
11 産婦人科領域で使う薬
1 妊娠・分娩時に用いる薬
2 子宮・卵巣に作用する薬
12 がんに使う薬
1 殺細胞性抗がん薬・ ホルモン療法薬
2 分子標的薬
3 免疫チェックポイント阻害薬
4 オピオイド製剤
5 制吐薬
6 G-CSF 製剤(顆粒球コロニー 刺激因子製剤)
13 皮膚・眼疾患に使う薬
1 保湿薬
2 褥瘡治療薬
3 緑内障治療薬
14 輸 液
1 水・電解質輸液
2 高カロリー輸液
3 脂肪乳剤
15 漢方製剤
1 薬が効くメカニズム (薬物動態学と薬力学)
2 剤形のしくみと特徴
3 薬の用法・用量
4 薬の副作用
5 薬物相互作用
6 ポリファーマシー
7 薬の適正使用
8 妊娠・授乳と薬物
9 添付文書・処方箋の読み方
10 ジェネリック医薬品・ バイオシミラー
11 OTC医薬品
第2章 知っておきたい! よく使われるあの薬
1 痛みや炎症に使う薬
1 抗炎症薬・解熱鎮痛薬
2 免疫疾患・アレルギーに使う薬
1 ステロイド
2 抗ヒスタミン薬
3 免疫抑制薬
4 分子標的薬
3 感染症に使う薬
1 抗菌薬
2 抗ウイルス
3 抗真菌薬
4 消毒薬
4 精神・神経疾患に使う薬
1 抗てんかん薬
2 パーキンソン病治療薬
3 片頭痛治療薬
4 抗うつ薬・気分安定薬
5 睡眠薬
6 抗不安薬
7 抗精神病薬
8 認知症治療薬
9 麻酔薬
10 筋弛緩薬
5 循環器疾患に使う薬
1 抗血小板薬
2 抗凝固薬
3 降圧薬
4 昇圧薬
5 抗不整脈薬
6 利尿薬
6 呼吸器疾患に使う薬
1 鎮咳薬・去痰薬
2 気管支喘息治療薬
7 消化器疾患に使う薬
1 制酸薬・胃粘膜保護薬
2 止瀉薬
3 整腸薬
4 下 剤
8 腎・泌尿器疾患に使う薬
1 排尿障害治療薬
9 内分泌疾患に使う薬
1 ホルモン製剤
2 甲状腺疾患治療薬
10 代謝疾患に使う薬
1 血糖降下薬
2 インスリン製剤
3 脂質異常症治療薬
4 高尿酸血症治療薬
5 骨粗鬆症治療薬
11 産婦人科領域で使う薬
1 妊娠・分娩時に用いる薬
2 子宮・卵巣に作用する薬
12 がんに使う薬
1 殺細胞性抗がん薬・ ホルモン療法薬
2 分子標的薬
3 免疫チェックポイント阻害薬
4 オピオイド製剤
5 制吐薬
6 G-CSF 製剤(顆粒球コロニー 刺激因子製剤)
13 皮膚・眼疾患に使う薬
1 保湿薬
2 褥瘡治療薬
3 緑内障治療薬
14 輸 液
1 水・電解質輸液
2 高カロリー輸液
3 脂肪乳剤
15 漢方製剤
書評
この著者は,なぜ“薬”を“くすり”と書いたの?
「薬の勉強,辛いと感じたことはありませんか?」 とても大事だと思うことも多いはずです.なんとかしたくて,いろいろな本を買ってみたけど,結局よくわからない…….
私がこの書籍に興味をもったのは,表紙の“くすりがひらがな”だったからです.そして,監修者に興味がわき,見てみると,泌尿科医師の資格を持つ薬理学教育者であり,かつ看護学科長であることから,看護師にとって薬の勉強がいかに難しいか,教育を通してよく実感されているからだと察しました.監修者は,くすりと書くことで,まずは,手にとって見てほしい,そして,読んでみたいというモチベーションを高めたいと思われたのでしょう.
まさに,私はその罠にかかってしまい,推しの1冊となりました.「くすりがわかる」ということは,作用機序を知り,使い方がわかり,観察をケアに繋げることができると言い換えることができます.このことからも,看護師のための書籍といっても過言ではありません.
推しとなった本書を推薦する3つの特徴を以下に示します.
1.わかりやすい解説と豊富な図版・イラスト
この書籍は,複雑な薬の作用機序や使い方のポイントをわかりやすく丁寧に,図など視覚的な要素を組み合わせて解説しています.学んだ内容を知識として確実に定着させることでしょう.
2.薬の知識を学ぶ「基本パターン」
本書には,薬の知識を学ぶ基本パターンがあり,下記①~④で構成されています.
① 薬剤のポイント:薬の種類と作用機序を学ぶ
② 使い方のポイント:薬の選択・使い分け・投与時の注意などに関する知識を学ぶ
③ 観察・ケアのポイント:投与後の副作用観察などの経過管理,休薬期間などの注意事項を学ぶ
④ よく使われる薬剤一覧:医薬品ごとに用法・用量,使用上の注意事項などを確認する
この基本パターンで薬の知識を身に付けることにより,自信を持った薬の観察・ケアにつながるでしょう.
3.いまさら聞けない薬の知識を知る「第1章」
本書「第1章 本当に知ってる? 薬の基礎知識」では,基礎的な薬理学理論のみならず,いまさら聞けない薬の知識について,臨床での実践に応用できる基本となるルールや原則を身に付けるといった観点で解説されています.
『くすりがわかる 作用機序×使い方×観察・ケア』は,臨床現場でのスキル向上に役立つでしょう.また,看護学生が実習中に必要とする薬の知識を効果的に学ぶことも期待できます.療養者に最も適切な薬剤投与に関して,看護師として医師・薬剤師と共通用語でディスカッションできると思うと,明日からの看護実践が楽しみになりました.
真田弘美(石川県立看護大学学長/東京大学名誉教授)
「薬の勉強,辛いと感じたことはありませんか?」 とても大事だと思うことも多いはずです.なんとかしたくて,いろいろな本を買ってみたけど,結局よくわからない…….
私がこの書籍に興味をもったのは,表紙の“くすりがひらがな”だったからです.そして,監修者に興味がわき,見てみると,泌尿科医師の資格を持つ薬理学教育者であり,かつ看護学科長であることから,看護師にとって薬の勉強がいかに難しいか,教育を通してよく実感されているからだと察しました.監修者は,くすりと書くことで,まずは,手にとって見てほしい,そして,読んでみたいというモチベーションを高めたいと思われたのでしょう.
まさに,私はその罠にかかってしまい,推しの1冊となりました.「くすりがわかる」ということは,作用機序を知り,使い方がわかり,観察をケアに繋げることができると言い換えることができます.このことからも,看護師のための書籍といっても過言ではありません.
推しとなった本書を推薦する3つの特徴を以下に示します.
1.わかりやすい解説と豊富な図版・イラスト
この書籍は,複雑な薬の作用機序や使い方のポイントをわかりやすく丁寧に,図など視覚的な要素を組み合わせて解説しています.学んだ内容を知識として確実に定着させることでしょう.
2.薬の知識を学ぶ「基本パターン」
本書には,薬の知識を学ぶ基本パターンがあり,下記①~④で構成されています.
① 薬剤のポイント:薬の種類と作用機序を学ぶ
② 使い方のポイント:薬の選択・使い分け・投与時の注意などに関する知識を学ぶ
③ 観察・ケアのポイント:投与後の副作用観察などの経過管理,休薬期間などの注意事項を学ぶ
④ よく使われる薬剤一覧:医薬品ごとに用法・用量,使用上の注意事項などを確認する
この基本パターンで薬の知識を身に付けることにより,自信を持った薬の観察・ケアにつながるでしょう.
3.いまさら聞けない薬の知識を知る「第1章」
本書「第1章 本当に知ってる? 薬の基礎知識」では,基礎的な薬理学理論のみならず,いまさら聞けない薬の知識について,臨床での実践に応用できる基本となるルールや原則を身に付けるといった観点で解説されています.
『くすりがわかる 作用機序×使い方×観察・ケア』は,臨床現場でのスキル向上に役立つでしょう.また,看護学生が実習中に必要とする薬の知識を効果的に学ぶことも期待できます.療養者に最も適切な薬剤投与に関して,看護師として医師・薬剤師と共通用語でディスカッションできると思うと,明日からの看護実践が楽しみになりました.
真田弘美(石川県立看護大学学長/東京大学名誉教授)