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カテゴリー: 外科学一般  |  臨床看護学

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輸液カテーテル管理の実践基準

輸液治療の穿刺部位・デバイス選択とカテーテル管理ガイドライン

1版

日本VADコンソーシアム 編集

定価

1,320(本体 1,200円 +税10%)


  • B5判  46頁
  • 2016年2月 発行
  • ISBN 978-4-525-50111-2

日本の医療環境・チーム医療の状況を踏まえた輸液カテーテル管理の実践基準!

近年,輸液治療は急速に発達し,新たな輸液手技の使用が拡大している.また,看護師による静脈確保が一般化するなど,チーム医療の進展も見られる. CDCガイドライン, INS(米国輸液看護協会)の基準や,近年発表された新たなエビデンスをもとに,日本特有の医療環境やチーム医療の状況を踏まえながら輸液カテーテル管理の実践基準を作成した.

  • 序文
  • 目次
序文
 治療目的の静脈注射(静脈内への薬剤や輸液投与)にも,検査目的の静脈採血にも静脈穿刺が伴うことから,注射行為はおそらく日常最も頻繁に行われている侵襲的な医療行為だといえます.静脈穿刺,静脈留置に用いられる器材類(Vascular Access Devices:VAD)には多様な選択肢,使用方法が存在しますが,わが国では,関係する医療者が一堂に会して情報を交わし,科学的な議論をする場は限られています.
 静脈注射は長い間,医師だけが行える行為でした.2002 年の行政解釈の変更で,診療の補助行為として,医師の指示のもとに看護師が行える行為になり,その際には安全に行うための教育,研修,そして体制の整備がセットにされ,日本看護協会の指針なども発表されました.しかし,実質的には静脈注射が看護師によって行われてきたという現状追認の社会風潮がある一方,指導的あるいは教育的な医療施設の大半は,看護師が注射業務に関わってこなかったという背景もあり,教育・研究体系は未だ十分ではありません.
 医師は患者への輸液・薬剤の処方や指示は行い,静脈穿刺,カテーテル留置も行いますが,静脈路の維持管理は専ら看護師任せであり,投与経路や使用VADまでには余り深く関わりません.薬剤師は,注射液の調製・監査には関与してもVADや投与方法の選択には関わらず,また臨床工学技士も輸液ポンプ類の電気的,装置的な保守点検以上にVADへの関わりはありません.そのため現場の業務は,専ら各施設の経験の積み重ねや販売業者の情報に基づいた知識に依存しているのが現状です.このように当分野で日本の臨床システムが反映された科学的根拠が積み上げられる土壌がないことは大きな課題です.
 この間にも,日本医療機能評価機構などから,医療事故の中では注射・投薬関連が最も多く,看護師が医療事故の直接の当事者となる事例や疫学研究が多数報告され続けています.また,血流感染の防止や職務感染の防止などの重要性も認識されて来ていますが,現場で実際どうすれば良いのかに関しては,感染制御や静脈栄養,あるいは放射線診断など専門領域を背景にした指針はあるものの,領域を越えた一般臨床を対象にしたものでもありません.何より基本的に欧米の根拠や情報に依存した内容が中心であり,日本特有の医療チーム構成,医療事情に適合できない内容が含まれます.
 このため,私ども日本VADコンソーシアムの輸液ガイドライン作成ワーキンググループ(Japanese Vascular Access Device Working Group:JVADWG)は,日本の一般臨床で望まれるVADの適用方法に関わる意見が客観的に評価され,医療の質の向上につながる機会が限られていることを認識し,地域包括医療法(看護師の特定行為研修)の施行により,医療行為が医師の指示のもと,広く看護師に開放されるのを機に,VADの臨床使用指針を提案することで日本の患者医療に貢献したいと考えました.
 JVADWGは,2014年4月に発足したVADの臨床使用に関心を持つ多職種からなる有志医療者グループです.7 名と少人数ではあり,すべての領域を網羅したとは言えませんが,偏らない幅広い臨床領域と職域をカバーしています.それぞれのメンバーは,特定の団体や領域,あるいは企業の利益を代表する立場ではなく,個人の知識と経験に基づいて,患者の最善の利益を考えてVAD使用の臨床指針に関する意見を討議し,全員一致の原則で指針を集約しました.
 VADに関しては,現状でレベルの高い科学的根拠が希薄であることから,指針の策定に先立ち,メンバー間で以下の4点で合意を形成しました.
 ① 科学的根拠は最大限に重視するものの,日本の医療体制の実情に合致しないと全員が一致した際は,その根拠には縛られない.
 ② 現状で行われていなくとも,患者の利益に鑑み今後は行われるべきだと全員が一致して考える事項は前向き(proactive)に採用する.
 ③ 根拠の曖昧な事項に関しては,デルファイ法を用いて意見集約を試みる.
 ④ 指針は,不足しているこの領域の科学的な根拠を補強する研究を惹起する出発点,叩き台となることを目指し,以後の幅広い討論の場での改善,改訂を目指す.
 約1年半をかけて作成した指針は,これまで2015年7月の第16回アジア静脈経腸栄養学会学術大会(会長 東口髙志),2015年10月の日本臨床麻酔学会第35回大会(会長 鈴木利保)でメンバーが概略を発表し,医療界の関心の高さを実感してきました.今回ここに指針を提案し,JVADWGも発展拡大させ,従来の医療の枠組みを越えより幅広い関係者の自由な参加と議論を目指した日本VADコンソーシアム(Japan Vascular Access DeviceConsortium:JVADC)として再出発することとしました.本指針は,そのJVADCでの議論の礎となるものです.皆様方の建設的なご意見,ご助言により,より的確な内容に進化し,真に日本の臨床に貢献するガイドラインに成長することを願うものです.最後に,ガイドライン作成にあたり,患者,医療者,そして提案者である我々JVADWGの立場の法的保護の観点から,法学者であり,生命倫理学に造詣の深い甲斐克則氏(早稲田大学法学学術院教授)には貴重な助言をいただきました.ここに深謝申し上げます.

2016年1月
JVADWG 代表
聖路加国際大学 特任教授
宮坂勝之
目次
ガイドライン
 Ⅰ ガイドラインの目的
 Ⅱ 対象者
 Ⅲ ガイドラインポリシー
 Ⅳ エビデンスレベルと推奨度
 Ⅴ 用語の定義
 Ⅵ 推奨基準
   1 輸液治療に必要な能力・教育基準
   2 輸液治療での感染管理基準
   3 輸液治療での安全管理基準
   4 静脈留置カテーテル選択基準
   5 静脈留置カテーテル挿入部位の選択基準
   6 静脈留置カテーテル挿入方法の基準
   7 静脈留置カテーテルの管理・抜去基準
 Ⅶ 文 献

資 料
 1 ガイドラインの作成の過程
 2 輸液カテーテル類の挿入方法
 3 中心静脈カテーテル挿入部の皮膚消毒
 4 カテーテル留置に伴う合併症,有害事象
 5 配合変化が起こりやすい主な注射剤
 6 デバイス選択アルゴリズム
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