本書の改訂2版が発刊されて約3年が過ぎました．新型コロナウイルス感染症がようやく収束に向かい，さまざまな活動が以前のように戻ってきました．がん医療に関しては，がんゲノム医療，免疫チェックポイント阻害薬といった薬物療法などがさらに進歩しました．
　改訂3版ではがんの疫学のアップデート，新規薬剤の追加はもちろんですが，第3章における食道がん・肝がん・胆道がん・子宮がん・卵巣がん・腎がん・白血病・悪性リンパ腫の新規掲載がポイントです．がん種別では，改訂2版までの6項目から一気に14項目に倍増しました．コラムにもオンライン診療やCAR-T細胞療法などのトピックスが追加されています．
　集学的がん診療の重要性は言うまでもありません．治療方針の決定は医師中心になりますが，その判断基準には医療スタッフの意見が不可欠です．たとえば，抗悪性腫瘍薬の選択には薬剤師の助言が必須です．医師はどうしても薬剤の有効性を追求しがちですが，安全性を最優先する薬剤師のサポートがあってこそレジメンの決定が妥当なものになると言えましょう．また，今後の療養の場所の選択には，医師のみの判断は不可能であり，看護師・医療ソーシャルワーカーからの意見が必要です．がん支持医療は単なる副作用対策に終わらずに，栄養サポート，就労・生きがい支援までを視野に入れています．これらを実現するには，管理栄養士や公認心理師，リハビリ専門職（理学療法士・作業療法士・言語聴覚士）の関与が必要です．本書はこうした多くの職種の人たちにも読んでいただきたいです．
　日本がんサポーティブケア学会には17の部会があり，そのなかには漢方部会が含まれます．全身倦怠感・食欲不振・末梢神経障害などの難治性の副作用に漢方が活用されています．漢方部会が執筆・編集した『がんサポーティブケアのための漢方活用ガイド』が2020年11月に南山堂から発刊され，現在改訂中です．本書とあわせて読んでいただけると，「患者さんのためにできることは何か」を追求する真摯な臨床医・医療スタッフにはおおいに参考になると確信いたします．
　最後になりましたが，改訂3版の作成においても大変お世話になりました，株式会社南山堂の松村みどり氏に深く感謝申し上げます．

2024年7月
福井県済生会病院にて　元雄良治