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カテゴリー: 臨床看護学

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科学的根拠から考える 助産の本質

1版

三砂ちづる 編
<執筆者(執筆順)>
三砂ちづる、左古かず子、野口真貴子、信友智子、竹原健二、矢島床子、川上桂子、松﨑政代、松本亜紀、鈴木雅子、加藤章子、小山内泰代、新福洋子、笹川恵美、福島富士子、宗 祥子、春名めぐみ

定価

1,980(本体 1,800円 +税10%)


  • A5判  100頁
  • 2021年2月 発行
  • ISBN 978-4-525-50181-5

人間の生理学的プロセスを重視した助産とは何か

助産師が,母子にとって最良の助産ケアを提供するためには,「助産の本質」を自らの軸としてもつことが欠かせない.疫学,助産,母性保健,国際保健医療,民俗学を専門とする筆者らが,科学的根拠から助産の本質とは何かを語る.

  • 序文
  • 目次
序文
 科学的根拠に基づいた医療,というとき,真っ先に名前のあがるイギリスの疫学者Archibald Cochraneは,人間はもともと回復する力をもっているからその力を損なう可能性のある医療介入はできるだけ避けるべきであり,どうしても医療介入をしなければならない場合は,科学的根拠に基づいたもののみ行うべきだ,と述べていた.「科学的根拠」とは,だから,一義的に,「なるべく慎み深くあるべき医療介入を,それでもどうしても使わなければならないときに,求めるもの」,である.
 助産は,何より,人間のもつ生理学的プロセスを重視する.その生理学的プロセスを妨げようとする医療介入が必要だとすれば,それこそ「科学的根拠」がなければならない.だから「科学的根拠から考える助産の本質」とは,言葉をかえれば,いかにして助産は女性とともにあり,生理学的プロセスに立ち返ることができるか,ということと同義であると思う.

 この本は,大変,個人的なきっかけによって生まれた.2018年9月,前職場であった国立公衆衛生院(のち国立保健医療科学院)時代の元学生さんたちが中心に企画された編者の還暦祝いで,現在は助産教員であるおひとりが,ふとつぶやいた言葉から始まったのだ.彼女曰く,

   聞いてくださいよ,この間,試験に「分娩の三要素を書け」という問題を出したんですよね.もちろん分娩の三要素は,「娩出力,産道,娩出物」,です.そうしたら,学生の1人が「やる気,勇気,元気」って書いてきたんですよ.もちろん間違いですけどね,でもねえ,お産ってそういうところ,ありますからね.間違い,というのもしのびない気持ちがしました…….

 聞いていた私たちは,いや,ほんと,そうだよな,お産は「やる気,勇気,元気」だな,と思って,「やる気,勇気,元気の助産」っていう本をつくりたいですね,などと,いろめきたった.その場に多くの助産教員や母性保健の研究者が集まっていて,編集者までおられたので,なかなかいい本ができるのではないか,と思ったのである.結局,タイトルは「科学的根拠から考える助産の本質」という,公衆衛生関係者が集まってつくるにふさわしいものに落ち着いたが,この本の源流は「やる気,勇気,元気」なお産を語りたい,というところにあったのだ.
 編者は,母性保健を専門分野とする疫学者であり,この本の第1章と第8章を書いた.第2章,第4章,第6章,第7章の執筆者は助産師で,国立公衆衛生院(のち国立保健医療科学院)で出会い,現在は助産教員として,国際保健ワーカーとして,第一線で働いておられる方々である.助産のプロであるが,同時に公衆衛生マインドのある方々である.第3章は疫学,第5章は民俗学を専門とする出産の分野に関わる研究者による執筆である.コラムは,敬愛する現場の助産師の方々に書いていただいた.1人ひとりをよく知り,助産分野に造詣の深い南山堂の編集者,高柳ユミさんにお世話になれたことは大変な幸運だった.
 「助産」を前に出した本であるが,私自身は助産師ではない.助産師ではないからこそ,日本の助産を外から客観的に見ることができると思う.日本の助産師の特質,開業助産師のありようは,世界の文化遺産に指定されるべき人類の財産である,とも思う.日本の助産師のファンでもある.この本が1人でも多くの助産師,助産学生,また助産に興味をもつ方に届くことを願っている.

2021年1月
三砂ちづる
目次
第1章 助産と科学的根拠(三砂ちづる) 
研究者の意図  
科学的根拠が変えるもの  
EBMの歴史と助産  

第2章 助産パラダイム(野口真貴子)
日本の助産の特徴  
助産所での助産ケア
日本の助産への所期  

第3章 生活の場としての助産所 (竹原健二)
生活の中にある助産所  
助産所の適応である妊娠・分娩の正常な経過  
生活の立て直しと健康管理  
妊産婦に寄り添う  

第4章 病院での助産の本質 (川上桂子)
病院と助産師
一般病院で助産師が働くことの実際 ―筆者の経験から―
助産師が病院で働くこと
病院での助産の本質とは何か

第5章 青ヶ島から考える伝統的な出産介助者の役割 (松本亜紀)
出産介助者研究の潮流
青ヶ島の事例にみる出産介助者の役割とその本質

第6章 日本の助産と国際保健医療 (加藤章子)
世界の妊産婦の健康を守る戦略
日本の助産の本質
日本の助産の本質を世界に伝えることの意義
国際保健医療における助産師の役割

第7章 助産師教育の本質とこれから(笹川恵美)
日本の助産師教育 
世界の助産師教育  
助産師教育に用いられるガイドライン  
助産師教育で大切にしていること  

第8章 なぜいま,助産なのか(三砂ちづる)
魚は水が見えない
生理学的プロセスを引き出す知恵と科学的根拠
生理学的プロセスを失うということ
「生の原基」の守り手

資料 助産をめぐる主な出来事(笹川恵美,春名めぐみ)

Column
切れ目のない関わりを実現する開業助産所(左古かず子)
With Woman (信友智子)
永遠に続く産む性を支える(矢島床子)
助産師の理念とその本質(松﨑政代)
助産師から養護教諭へ(鈴木雅子)
対象に関心を寄せ,人間の尊厳を守る(小山内泰代)
世界の女性と助産師が進む道づくり(新福洋子)
産後ケアの地平(福島富士子)
お産の本質とは何か(宗 祥子)
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