子どもが元気になる在宅ケア
1版
医療法人財団はるたか会・NPO法人あおぞらネット 理事
梶原厚子 編著
定価
5,060円(本体 4,600円 +税10%)
- B5判 320頁
- 2017年7月 発行
- ISBN 978-4-525-50291-1
子どもたちの在宅生活を支えるために!
障害や疾患をもつ子どもたちと家族が安心して在宅で過ごすためには,訪問看護師による支援が欠かせない.障害をもつ子どものとらえ方,疾患の基礎知識や看護のポイントを詳説するとともに,障害児をとりまく制度・福祉・教育等の知識を網羅.小児在宅ケアの“要”となる訪問看護師の必読書.
様式(図1-45 24時間暮らしのシート,図1-46 見通しシート,図1-49 モニタリングシート,図1-50 スケジュール表)
- 目次
- 序文
目次
1章 成長と発達を促す関わりを知ろう
1. 乳幼児期の関わりで大切にしていること
2. 子どもの認知機能(感覚と運動)の発達と遊び
3. ベビーケア
4. 事例を通して学ぶ 訪問看護の展開
5. 暮らしの中で工夫していること
2章 子どもの捉え方とケアを知ろう
1. 子どもの健康を守る
2. 子どもの成長と発達
3. 子どもの日常生活
4. 子どもの体調不良
5. 障害をもつ子どもの栄養管理
3章 子どもの病態と看護のポイントを知ろう
1. 呼吸器疾患
①呼吸器疾患の解剖生理
②子どもの代表的な呼吸器疾患─気管切開を中心に
2. 重症心身障害
①重症心身障害とは
②てんかん
3. 悪性腫瘍
4. 心疾患
5. 腸疾患
①腸疾患をもつ子どもの在宅医療
②腸疾患をもつ子どもの看護
6. 緩和ケア・ターミナルケア
4章 子どもが受ける医療を知ろう
1. NICU
2. 小児科外来・病棟
3. 入所施設・短期入所・通所
4. 在宅医療
①訪問看護
②訪問診療
③在宅で受けられるその他の医療サービス
5. 喀痰吸引等研修の枠組みと訪問看護事業所の役割
5章 障害児・者支援を知ろう
1. 相談支援専門員
2. 障害児が利用できる制度
3. 児童発達支援事業等
①ほのかのおひさま
②ほわわ と あっと
4. 教育支援
5. 就労支援
6. 障害者グループホーム
1. 乳幼児期の関わりで大切にしていること
2. 子どもの認知機能(感覚と運動)の発達と遊び
3. ベビーケア
4. 事例を通して学ぶ 訪問看護の展開
5. 暮らしの中で工夫していること
2章 子どもの捉え方とケアを知ろう
1. 子どもの健康を守る
2. 子どもの成長と発達
3. 子どもの日常生活
4. 子どもの体調不良
5. 障害をもつ子どもの栄養管理
3章 子どもの病態と看護のポイントを知ろう
1. 呼吸器疾患
①呼吸器疾患の解剖生理
②子どもの代表的な呼吸器疾患─気管切開を中心に
2. 重症心身障害
①重症心身障害とは
②てんかん
3. 悪性腫瘍
4. 心疾患
5. 腸疾患
①腸疾患をもつ子どもの在宅医療
②腸疾患をもつ子どもの看護
6. 緩和ケア・ターミナルケア
4章 子どもが受ける医療を知ろう
1. NICU
2. 小児科外来・病棟
3. 入所施設・短期入所・通所
4. 在宅医療
①訪問看護
②訪問診療
③在宅で受けられるその他の医療サービス
5. 喀痰吸引等研修の枠組みと訪問看護事業所の役割
5章 障害児・者支援を知ろう
1. 相談支援専門員
2. 障害児が利用できる制度
3. 児童発達支援事業等
①ほのかのおひさま
②ほわわ と あっと
4. 教育支援
5. 就労支援
6. 障害者グループホーム
序文
私は0歳から100歳を超えた方々まで「なんでもご相談ください!」という言葉をキャッチフレーズに,1996年から愛媛県松山市とその周辺,人口約55万人ほどのエリアで地域支援や在宅医療,訪問看護に16年間ほど取り組み,2012年より現職に就いています.この20年間は,地域福祉が措置から契約の時代に変わっていき,介護保険法や障害者総合支援法の施行,児童福祉法の改正などを当事者とそのご家族とともに体感しました.
医療が高度化し進歩する中で,今までは失っていた命を救うことができるようになりました.その結果,在宅医療では,特に個別性が強く表出されるために,病院での看護の経験では到底説明がつかないようなスペシャルニーズをもった人たちに出会うことになりました.そのニーズに臨機応変に対応するために,本人が過去に受けた治療や暮らし方を知りたいと考えるようになり,どんどん低年齢の時期に興味が深まりました.そして小児在宅医療や地域支援に関わるようになったのです.
小児科の経験がない私が在宅で子どもたちに関わることができたのは,ご本人やそのご家族に出会い,その家庭で行われているケアを学び,それを信じ,そこからエビデンスを見つけてきたからだと思います.そして高齢者や難病の方の看護の経験も生かしつつ「子どもが元気になる在宅ケア」を深めることができました.どんなに障害が重くても多くの病気を抱えていても出会ったそのときには,「より健康的であるためには何をすればよいのか」と,常に自問自答しています.
医療はどんどん進化し,変わっていきます.その昔,私が看護師になったころには,褥瘡のケアは乾燥や日光浴が効果的であるとされていました.また,当時はストマケアに使われるパウチは,木のお椀とゴムのベルトが補装具として支給されていました.今とはまったく違った対処方法ですが,その時には,それが正しい治療だと思われていたのです.
30年以上前にがんの治療を受けて以来,ストマケアに木のお椀とゴムのベルトを使っていた70歳代の女性が,再発して再手術を受けました.そのとき,専門職が適切なパウチの使用を提案しましたが,長年にわたって愛用している木のお椀のほうが漏れずに快適で動き回ることができ,暮らしに対応していました.脳梗塞後に寝たきりになったものの,十数年間甘酒を主体にした栄養を摂って経鼻経管栄養で元気に暮らしている70歳代の男性にも出会いました.地域で暮らしている医療的ケアが必要な人たちは,自力で生きる力をもっているのだと知りました.その暮らしぶりは,医療と普通の暮らしの「よい加減」を保っているのでした.そのような出会いから,看護がどんどん統合されて得心し,看護そのものが暮らしに寄り添ったものとなり,ライフワークとしても専門職としても大好きな仕事になっていきました.
この20年間,地域を見てきて感じるのは,急速に少子高齢化が進んだために子どもの社会的施策が立ち遅れているのではないかということです.子どもを産みにくく育てにくい家庭,職場,社会環境になっている現状で,医療的ケアが必要な子どもや,重症心身障害児はさらに暮らしにくくなっています.
そのような背景の中,2017年2月7日に「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が国会に提案されました.高齢者だけではなく,子ども,子育て,障害児・者,高齢者を含めた包括的な支援体制づくりに努める旨の法案が提出されたのです.0歳から100歳を超えた方まで,切れ目のない支援体制を構築する.そのために厚生労働省に,「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部も設置されました.
本書では,子どもたちが地域で暮らしていく際に必要な医療・福祉・教育と社会資源をわかりやすく解説しました.職種や分野の枠を超えた内容になっていますから,子どもの在宅ケアに関わる多職種の通訳になりうる人材輩出につながればと考えています.また,障害理解を深めるために,年齢的な変化やその病態,障害特性をわかりやすく解説し,目の前の子どもに何が起きているのか,どのように関わればよいのか,看護師やリハビリスタッフ,介護職,保育士,教員など多職種の方々にご理解いただけるような内容になっています.
「暮らし続けられる街をつくる」「暮らしの場所は自分で選べる」─そんな活動の手掛かりになれば幸いです.各項をご執筆いただいた方々には,ご尽力いただきましたことを心から感謝いたします.
2017年5月
医療法人財団はるたか会・NPO法人あおぞらネット 理事
梶原厚子
医療が高度化し進歩する中で,今までは失っていた命を救うことができるようになりました.その結果,在宅医療では,特に個別性が強く表出されるために,病院での看護の経験では到底説明がつかないようなスペシャルニーズをもった人たちに出会うことになりました.そのニーズに臨機応変に対応するために,本人が過去に受けた治療や暮らし方を知りたいと考えるようになり,どんどん低年齢の時期に興味が深まりました.そして小児在宅医療や地域支援に関わるようになったのです.
小児科の経験がない私が在宅で子どもたちに関わることができたのは,ご本人やそのご家族に出会い,その家庭で行われているケアを学び,それを信じ,そこからエビデンスを見つけてきたからだと思います.そして高齢者や難病の方の看護の経験も生かしつつ「子どもが元気になる在宅ケア」を深めることができました.どんなに障害が重くても多くの病気を抱えていても出会ったそのときには,「より健康的であるためには何をすればよいのか」と,常に自問自答しています.
医療はどんどん進化し,変わっていきます.その昔,私が看護師になったころには,褥瘡のケアは乾燥や日光浴が効果的であるとされていました.また,当時はストマケアに使われるパウチは,木のお椀とゴムのベルトが補装具として支給されていました.今とはまったく違った対処方法ですが,その時には,それが正しい治療だと思われていたのです.
30年以上前にがんの治療を受けて以来,ストマケアに木のお椀とゴムのベルトを使っていた70歳代の女性が,再発して再手術を受けました.そのとき,専門職が適切なパウチの使用を提案しましたが,長年にわたって愛用している木のお椀のほうが漏れずに快適で動き回ることができ,暮らしに対応していました.脳梗塞後に寝たきりになったものの,十数年間甘酒を主体にした栄養を摂って経鼻経管栄養で元気に暮らしている70歳代の男性にも出会いました.地域で暮らしている医療的ケアが必要な人たちは,自力で生きる力をもっているのだと知りました.その暮らしぶりは,医療と普通の暮らしの「よい加減」を保っているのでした.そのような出会いから,看護がどんどん統合されて得心し,看護そのものが暮らしに寄り添ったものとなり,ライフワークとしても専門職としても大好きな仕事になっていきました.
この20年間,地域を見てきて感じるのは,急速に少子高齢化が進んだために子どもの社会的施策が立ち遅れているのではないかということです.子どもを産みにくく育てにくい家庭,職場,社会環境になっている現状で,医療的ケアが必要な子どもや,重症心身障害児はさらに暮らしにくくなっています.
そのような背景の中,2017年2月7日に「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が国会に提案されました.高齢者だけではなく,子ども,子育て,障害児・者,高齢者を含めた包括的な支援体制づくりに努める旨の法案が提出されたのです.0歳から100歳を超えた方まで,切れ目のない支援体制を構築する.そのために厚生労働省に,「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部も設置されました.
本書では,子どもたちが地域で暮らしていく際に必要な医療・福祉・教育と社会資源をわかりやすく解説しました.職種や分野の枠を超えた内容になっていますから,子どもの在宅ケアに関わる多職種の通訳になりうる人材輩出につながればと考えています.また,障害理解を深めるために,年齢的な変化やその病態,障害特性をわかりやすく解説し,目の前の子どもに何が起きているのか,どのように関わればよいのか,看護師やリハビリスタッフ,介護職,保育士,教員など多職種の方々にご理解いただけるような内容になっています.
「暮らし続けられる街をつくる」「暮らしの場所は自分で選べる」─そんな活動の手掛かりになれば幸いです.各項をご執筆いただいた方々には,ご尽力いただきましたことを心から感謝いたします.
2017年5月
医療法人財団はるたか会・NPO法人あおぞらネット 理事
梶原厚子