PICCの教科書
失敗しない!挿入から管理までのポイント
1版
藤田医科大学病院 副院長 岩田充永 監修
藤田医科大学 保健衛生学部 講師 酒井博崇 編集
定価
2,750円(本体 2,500円 +税10%)
- B5判 133頁
- 2021年8月 発行
- ISBN 978-4-525-50401-4
PICCのメリットから実際の手順・管理までこの1冊でわかる!
「PICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)」は,海外では広く普及しており,日本でもさらなる普及率の増加が見込まれている.PICCは,他のカテーテルと比較し,安全面に大きなメリットがある.また,適切に管理すればカテーテルを長期間留置することも可能であるため,患者負担も軽減することになる.
本書は,PICCを取り扱う医療スタッフを対象とした教科書である.看護師による38の「特定行為」の1つとしても「PICC挿入」が盛り込まれており,医師のみならず、診療看護師やそれを目指す看護師にもその知識・スキルが求められている.
PICCの特徴およびその使い方の基本スキルを身に付けられるよう,本書では,カテーテルの使い分けから,PICC挿入の手順,PICC留置中の管理・合併症対策までのポイントを整理した.挿入手順・管理については、そのポイントを「web動画」でも確認できる.また,臨床現場でみられた問題をもとにトラブルシューティング事例も取り上げた.
- 序文
- 目次
序文
PICC(Peripherally Inserted Central venous Catheter)は,末梢静脈から挿入できる中心静脈カテーテル(Central Venous Catheter:CVC)です.内頸静脈や大腿静脈から挿入する従来型のCVCは医師しか行えませんが,PICCは特定行為研修を修了した看護師であれば挿入が許されています.今までは医師が可能なタイミングを待ってCVCを挿入していましたが,PICCは医師からの指示書により看護師が挿入できるため,患者状態に合わせて実施することが可能となります.
筆者らは,NP養成大学院で特定行為研修を修了した看護師です.藤田医科大学病院ではFNP(Fujita Nurse Practitioner)として勤務しています.当院ではFNPが中心となり医師監督下のPICCチームを形成し,PICC挿入は医師から依頼を受け実施しています.その活動の拡がりが寄与し,2018年には当院のPICC使用は従来型CVCの使用を上回り,その8割以上をFNPが挿入しています.
この結果に至るまでには,安全面を最大限配慮するため,医師,看護師,患者等からの信頼を得る必要がありました.その背景には,幾度にもわたり重ねてきたチームディスカッションとともに,積み上げてきた多くの臨床経験があります.2021年度現在,FNPは研修を含め26名となり,PICCチーム内での指導体制も整備しています.
筆者らのPICC挿入に関する見解は,下記①〜③にまとめられます.
①従来型CVCに比べ致死的合併症は少なく,患者のADL制限も少ない.
②ただトレーニングには時間を要し,ショックなど患者急変時は,末梢からの血管確保が困難であり,PICCが不適切な場合もある.
③中心静脈に留置することから侵襲的な処置であり,挿入前の適切な判断と,挿入後の経過観察と管理をするためのチーム連携が重要な鍵である.
このように,PICCはメリットがある反面,制約もあり,決して安易な処置ではないため,筆者らは医師と相談しながら慎重に実施しています.
今回,医師だけでなく,特定行為研修を修了した看護師,それを目指す看護師がPICCの挿入・管理等などの基本を学ぶ「教科書」として本書を執筆しました.内容には看護師の知識が浅いエコー,CT画像についても触れました.また,トラブルシューティング事例も取り上げ,困った時にどうするかを解説しました.PICCの挿入・管理のための知識を医学的視点,看護的視点から編集し,一冊にまとめています.本書が臨床での研鑽を積むときの教科書となり,患者への安全・安心な医療の提供にお役に立てれば幸いです.
2021年7月
酒井博崇
筆者らは,NP養成大学院で特定行為研修を修了した看護師です.藤田医科大学病院ではFNP(Fujita Nurse Practitioner)として勤務しています.当院ではFNPが中心となり医師監督下のPICCチームを形成し,PICC挿入は医師から依頼を受け実施しています.その活動の拡がりが寄与し,2018年には当院のPICC使用は従来型CVCの使用を上回り,その8割以上をFNPが挿入しています.
この結果に至るまでには,安全面を最大限配慮するため,医師,看護師,患者等からの信頼を得る必要がありました.その背景には,幾度にもわたり重ねてきたチームディスカッションとともに,積み上げてきた多くの臨床経験があります.2021年度現在,FNPは研修を含め26名となり,PICCチーム内での指導体制も整備しています.
筆者らのPICC挿入に関する見解は,下記①〜③にまとめられます.
①従来型CVCに比べ致死的合併症は少なく,患者のADL制限も少ない.
②ただトレーニングには時間を要し,ショックなど患者急変時は,末梢からの血管確保が困難であり,PICCが不適切な場合もある.
③中心静脈に留置することから侵襲的な処置であり,挿入前の適切な判断と,挿入後の経過観察と管理をするためのチーム連携が重要な鍵である.
このように,PICCはメリットがある反面,制約もあり,決して安易な処置ではないため,筆者らは医師と相談しながら慎重に実施しています.
今回,医師だけでなく,特定行為研修を修了した看護師,それを目指す看護師がPICCの挿入・管理等などの基本を学ぶ「教科書」として本書を執筆しました.内容には看護師の知識が浅いエコー,CT画像についても触れました.また,トラブルシューティング事例も取り上げ,困った時にどうするかを解説しました.PICCの挿入・管理のための知識を医学的視点,看護的視点から編集し,一冊にまとめています.本書が臨床での研鑽を積むときの教科書となり,患者への安全・安心な医療の提供にお役に立てれば幸いです.
2021年7月
酒井博崇
目次
1章 PICCとは何か
1.はじめに
2.PICC についての基礎知識
A.静脈ライン確保の目的と種類
B.カテーテルの種類と特徴~どう使い分ける?~
C.デバイス選択のアルゴリズム
D.輸液治療の教育基準と継続教育について
column 1 医療安全管理におけるPICCの重要性!
2章 PICC挿入前に知っておきたい基礎知識
超音波画像診断装置の使い方
1.超音波画像診断装置(エコー)
2.エコーの原理
3.探触子(プローブ)
4.gain(明るさ調節)
5.depth(深さ調節)
6.カラードプラ
7.実際のエコー画像
胸部X線写真の読影
1.読 影
2.CT撮像のメリット・デメリット
3.診療放射線技師法
マキシマル・バリアプリコーション
1.手指衛生
2.無菌操作
A.清潔操作
B.清潔野の作成注意点
3章 PICCの挿入手順
X線透視下におけるPICC挿入
1.X線透視下によるPICC挿入の特徴
A.脈以外の血管への迷入を予防できる
B.盲目的にガイドワイヤを挿入することで生じる合併症を防止できる
C.適切な位置にPICCを挿入することができ,挿入後の調節などが不要
2.X線透視下でのPICC挿入方法・注意点
column 2 カテーテル挿入方法に関する用語の整理
over-the-wire 方式によるPICC挿入
1.over-the-wire方式のPICC挿入の特徴
2.X線透視下でのover-the-wire方式のPICC挿入方法・注意点
ベッドサイド(非X線透視下)におけるPICC挿入
1.ベッドサイド(非X線透視下)でのPICC挿入の特徴
2.ベッドサイド(非X線透視下)でのPICC挿入方法・注意点
column 3 右腕か? 左腕か? PICC挿入はどちらの腕から行うのがより安全か
column 4 近年のPICCの実績
ベッドサイド(非X 線透視下)におけるより安全な挿入方法
1.磁場指標,心電図指標を用いたシャーロック3CGの特徴
A.磁場指標
B.心電図指標(ECG法)
2.シャーロック3CGを用いたパワーPICCRの挿入方法・注意点
column 5 カテーテル先端の最適位置について
4章 PICCの管理と合併症対策
PICC留置期間中の管理方法と観察ポイント
1.感染率の低減のために必要なこと
2.刺入部の管理
3.側管など接続部に関する管理
4.閉塞などのトラブルに注意
PICCの合併症と予防・対処方法
1.PICCカテーテル挿入時の穿刺・留置に伴う合併症と予防・対処方法
2.PICCカテーテル留置後に伴う合併症と予防・対処方法
column 6 PICCの海外での実績
5章 こんなときどうする?トラブルシューティング事例
case 1 静脈穿刺に失敗した場合,困難な場合
case 2 ガイドワイヤが挿入できない場合
case 3 ガイドワイヤを進めることができない
case 4 カテーテルを進めることができない
case 5 ダイレータを穿刺して抜去する場合
case 6 介助者が不在のまま単独でPICC挿入を行う
case 7 カテーテル迷入
case 8 逆血が来ない
case 9 動脈を誤穿刺してしまった
case 10 拘縮していて挿入体位がとれない
case 11 PICC留置中に発熱した,CRBSIを疑う場合
case 12 ドレッシング材の交換について
case 13 留置位置が変わる
case 14 PICCが抜けてきた,患者がPICCを自己抜去した
case 15 カテーテルを抜去している最中に抵抗を感じた場合
case 16 カテーテル脇からの出血が止まらない
付録 最適位置の画像確認
1.はじめに
2.PICC についての基礎知識
A.静脈ライン確保の目的と種類
B.カテーテルの種類と特徴~どう使い分ける?~
C.デバイス選択のアルゴリズム
D.輸液治療の教育基準と継続教育について
column 1 医療安全管理におけるPICCの重要性!
2章 PICC挿入前に知っておきたい基礎知識
超音波画像診断装置の使い方
1.超音波画像診断装置(エコー)
2.エコーの原理
3.探触子(プローブ)
4.gain(明るさ調節)
5.depth(深さ調節)
6.カラードプラ
7.実際のエコー画像
胸部X線写真の読影
1.読 影
2.CT撮像のメリット・デメリット
3.診療放射線技師法
マキシマル・バリアプリコーション
1.手指衛生
2.無菌操作
A.清潔操作
B.清潔野の作成注意点
3章 PICCの挿入手順
X線透視下におけるPICC挿入
1.X線透視下によるPICC挿入の特徴
A.脈以外の血管への迷入を予防できる
B.盲目的にガイドワイヤを挿入することで生じる合併症を防止できる
C.適切な位置にPICCを挿入することができ,挿入後の調節などが不要
2.X線透視下でのPICC挿入方法・注意点
column 2 カテーテル挿入方法に関する用語の整理
over-the-wire 方式によるPICC挿入
1.over-the-wire方式のPICC挿入の特徴
2.X線透視下でのover-the-wire方式のPICC挿入方法・注意点
ベッドサイド(非X線透視下)におけるPICC挿入
1.ベッドサイド(非X線透視下)でのPICC挿入の特徴
2.ベッドサイド(非X線透視下)でのPICC挿入方法・注意点
column 3 右腕か? 左腕か? PICC挿入はどちらの腕から行うのがより安全か
column 4 近年のPICCの実績
ベッドサイド(非X 線透視下)におけるより安全な挿入方法
1.磁場指標,心電図指標を用いたシャーロック3CGの特徴
A.磁場指標
B.心電図指標(ECG法)
2.シャーロック3CGを用いたパワーPICCRの挿入方法・注意点
column 5 カテーテル先端の最適位置について
4章 PICCの管理と合併症対策
PICC留置期間中の管理方法と観察ポイント
1.感染率の低減のために必要なこと
2.刺入部の管理
3.側管など接続部に関する管理
4.閉塞などのトラブルに注意
PICCの合併症と予防・対処方法
1.PICCカテーテル挿入時の穿刺・留置に伴う合併症と予防・対処方法
2.PICCカテーテル留置後に伴う合併症と予防・対処方法
column 6 PICCの海外での実績
5章 こんなときどうする?トラブルシューティング事例
case 1 静脈穿刺に失敗した場合,困難な場合
case 2 ガイドワイヤが挿入できない場合
case 3 ガイドワイヤを進めることができない
case 4 カテーテルを進めることができない
case 5 ダイレータを穿刺して抜去する場合
case 6 介助者が不在のまま単独でPICC挿入を行う
case 7 カテーテル迷入
case 8 逆血が来ない
case 9 動脈を誤穿刺してしまった
case 10 拘縮していて挿入体位がとれない
case 11 PICC留置中に発熱した,CRBSIを疑う場合
case 12 ドレッシング材の交換について
case 13 留置位置が変わる
case 14 PICCが抜けてきた,患者がPICCを自己抜去した
case 15 カテーテルを抜去している最中に抵抗を感じた場合
case 16 カテーテル脇からの出血が止まらない
付録 最適位置の画像確認