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カテゴリー: 内科学一般  |  保健/福祉/介護

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STEP UP 生活習慣改善支援

メタボリックシンドロームぷらす

1版

帝京大学医学部 教授 寺本民生 編集

定価

3,080(本体 2,800円 +税10%)


  • B5判  130頁
  • 2009年11月 発行
  • ISBN 978-4-525-52301-5

特定健診保健指導や栄養指導で今すぐ使えるテキストが誕生しました.禁煙・食事療法・運動療法のサポートとコミュニケーションに加えて糖尿病,高血圧,脂質異常症からCKD,NASH,肥満症など生活習慣病の基礎知識までエキスパートがわかりやすく解説.これ1冊でこれまでのメタボの知識からステップアップした+αをコンパクトに学べます.

  • 序文
  • 目次
  • 書評
序文
 これまで高血圧,脂質異常症,糖尿病など生活習慣病では,薬物療法とあわせて,食事療法・運動療法に取り組むことの重要性が認識されてきた.これらの患者に対しては栄養指導や教育入院などの場面で,看護師,栄養士などコメディカルスタッフによる日常の食事やウオーキングなどの運動について講義もしくはアドバイスなどを通して患者の生活習慣改善を支援し,ある一定の効果をあげてきていることが知られている.
 さらに広げて,これら疾患の発症前,薬物療法を開始前の予備群の段階から,同様に生活習慣改善の重要性がうたわれるようになってきたのはここ数年のことである.
 2008年4月は,わが国の記念すべき予防医学の転換期であった.現在行われている「特定健診」が始まったのである.わが国の疾病対策は本格的な予防医学に入ったという記念日である.「健康日本21」という健康政策がある.しかし,これは,「21世紀における国民健康づくり運動」という位置づけであり,健康診断に取り入れたというものではない.もちろん,基本的背景は「特定健診」と同様であり,肥満の是正,食事,運動や禁煙の重要性を訴えたものではあったが,国民運動という位置づけであったためか,必ずしも当初の目標値をクリアーすることができなかった.
 一方,2005年に日本内科学会が,関連内科系7学会(日本動脈硬化学会,日本肥満学会,日本高血圧学会,日本糖尿病学会,日本腎臓学会,日本循環器病学会,日本止血血栓学会)の意見をまとめて,メタボリックシンドロームの診断基準を作成した.このメタボリックシンドロームという言葉は,その年の流行語としても採用され,国民の注目を集めた.というのは,国民が肥満を表現するのに「腹部肥満」という新しい言葉で肥満のなかでも悪玉肥満として認識し,しかも腹囲という具体的な数字を提示したことにより,イメージが作りやすく,その目標値が明確になったためであろう.
 ここを起点に政府は,メタボリックシンドロームの概念を特定健診・保健指導制度に盛り込み,国民に,もしくは地方行政や企業体に,国民の健康を守るための数値目標を達成することを行政指導として掲げたのである.このような経緯から,この特定健診のことを「メタボ健診」と呼ぶことが多い.
 誤解を解いておきたい.特定健診は,必ずしもメタボリックシンドロームを撲滅するための健診ではない.メタボリックシンドロームを減らすことにより,最終的には,わが国の死因の25%を占める動脈硬化性疾患を予防することこそが真の目的である.したがって,特定健診には,メタボリックシンドロームの診断基準には含まれていないLDL−コレステロールの測定や,喫煙歴の問診も含まれている.そして,これらのリスクがメタボリックシンドロームに加わった場合には,とくに医師・保健師・看護師・栄養士などによる保健指導が「積極的支援」として位置づけられていることはご存じの通りである.
 また,特定健診を通して,本格的な疾病を検出することも重要な任務である.これは,従来の職域もしくは地域による健診でも同様だったが,今回は,特定健診という枠組みで患者を「受診勧奨」という位置づけをして,積極的に医療機関に受診させることを勧めているのである.これまで,高血圧や脂質異常症と診断されていても医療機関を受診している人は30%くらいしかいないという事態を重く見たのである.軽症であれ,これらの疾病を早く医療機関で管理することこそが将来的な動脈硬化性疾患への進展を予防する上で重要であるという予防医学的知見に基づいた判断ということができよう.
 さらに,一歩進んで,行政が期待していることは,発症前の予備群の段階からセルフケアにつとめることで,医療機関に受診しなくてはならない人口を減らすことにより,医療費削減をもたらしたいというのが本来の狙いである.平成15年に制定された健康増進法の重要なポイントである「国民は,健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め,生涯にわたって,自らの健康状態を自覚するとともに,健康の増進に努めなければならない」という「国民の責務」に基づいている.
 しかし,医療現場では,患者や対象者への生活習慣改善支援,積極的支援といわれても,実際の業務は極めて困難であり,ましてやその成果を生み出すとなると至難の業である.これは,実際に現場を経験したものであれば,ほとんどの人が実感することである.しかし,この生活習慣改善支援こそがわが国の健康を守り,そして,日本国民のQOLに資することが大きいというプライドをもって医療スタッフは業務に当たりたいものである.また,国民のQOLが上がるということは,医療費削減,国民の総生産の増大など国家の経済に与える影響も多大なものであるという意識も大切である.
 本書のタイトルを「STEP UP 生活習慣改善支援 メタボリックシンドローム+(ぷらす)」と「+」をつけたことは,上で述べたように,まずは,単なる腹部肥満を改善するという目的ではなく,動脈硬化性疾患自体を予防することが特定健診の真の目的であるという意図がある.さらに,そのような生活習慣改善支援の業務が,保健指導・栄養指導を受けた人たちの子供たちにも影響し,将来の日本の健康に与える影響が多大であるということもご理解いただきたい.その結果として,日本という国の経済,ならびに国全体に大きく資することを意識して書名に「+」をつけた.
 そのような意味から,現場で多くのご指導をされている先生方やコメディカルの方の生の経験を活かして記載いただくと同時に,生活習慣改善支援に必要な基礎知識を身につけて,実際の支援に活かせる実務書としても役立ててほしいという意図をもって本書を構成した.多くの業務に当たられるコメディカルの方々の,お役に立てれば幸いである.そして,この生活習慣改善支援こそが国民の健康に資するところがあったとすると,本書を企画したものとしては望外の喜びである.
 最後に,本書の企画の段階から,ご協力いただいた,南山堂の編集部スタッフに深甚の感謝の意を表したい.


2009年9月
寺本民生
目次
STEP 1 ―Basic―
1 生活習慣病とメタボリックシンドロームにいま,なぜ取り組まなくてはならないか?
 1 なぜ,平成8年に成人病が生活習慣病になったのか?  (寺本民生)
    危険因子とは
    生活習慣の改善がもたらしたもの
    メタボリックシンドロームが注目されてきた経緯
    戦後日本で起こっていること
    40歳男性の肥満増加と食生活
    成人病から生活習慣病へ
    沖縄26ショック
 2 わが国の死因
    生活習慣病とは?
    健康増進法とは?
    少子高齢化の問題
 3 メタボリックシンドロームの本質
    メタボリックシンドロームという名称の経緯
    メタボリックシンドロームの診断基準
    メタボリックシンドローム対策は何を狙っているのか?


STEP 2 ―Approach―
2 知っておきたい! 喫煙と動脈硬化のキケンな関係   (横手幸太郎)
  1 喫煙の影響とは
    喫煙はいろいろな病気の原因になる
    喫煙と動脈硬化
    女性の喫煙は危険
    受動喫煙も危ない
    喫煙はなぜ動脈硬化を起こすのか
    喫煙は血液の流れを悪くする
    喫煙は血管壁へのコレステロール沈着を増やす
    喫煙は善玉コレステロールを減らす
    喫煙とメタボリックシンドロームの関係
    血管の修復細胞と喫煙
  2 喫煙のリスクをなくすために
    禁煙はキケンな関係を修復する

3 どうすればいいのか?禁煙指導うまくいくときいかないとき  (高橋裕子)
  1 タバコと健康の関わり
    禁煙治療とは
    能動喫煙とメタボリックシンドロームとの関連
    糖尿病における喫煙リスク
    受動喫煙の健康有害性
  2 禁煙支援をするにあたって
    臨床現場での禁煙支援ガイドライン
    禁煙する気持ちはないと答える喫煙者への対応
    禁煙のメリット
    禁煙のデメリット
    タバコの依存性
  3 具体的な禁煙支援策
    禁煙実行支援
    禁煙保険診療
    ニコチン代替療法
    経口禁煙補助薬
    禁煙継続支援(再喫煙の防止)
    再喫煙してしまったら
    禁煙と体重増加
    全国禁煙アドバイザー育成講習会と禁煙支援者認定

4 いま,食事療法にどう取り組むか   (丸山千寿子)
  1 栄養評価をして食事療法の方針を決定する
    メタボリックシンドロームで評価すべき項目
    栄養素の摂取と代謝上の問題点を探る
    栄養素摂取とメタボリックシンドローム診断基準との関連
    栄養素摂取とその他の指標との関連
  2 食生活の評価をする
    食品摂取上の問題点を探るために摂取頻度と量をチェックする
  3 自発的な食行動変容を支援する
    患者が自ら問題行動を抽出し,根本的な生活上の問題を見極めるのを支援する
    患者が目標を決めるのを支援する
    患者がアクションプラン(行動目標)を立てるのを支援する
    セルフモニタリングを勧めて自己評価させ,その結果についてコメントする

5 いま,運動療法にどう取り組むか?  (田中宏暁)
  1 運動療法の目的と目標
    運動の効用
  2 さまざまな運動療法と効果
    エネルギー消費量を高める工夫
    運動様式を変える
    ゆっくり走るコツ
    ベンチステップ運動の勧め
  3 運動強度とは
    生活活動,スポーツのエネルギー消費量
    Mets=運動時代謝(活動時代謝)÷安静時代謝
    持久力を高める工夫
  4 最適な負荷の見つけ方
    最大負荷テスト
    最大下運動テストによる方法
    トレーニング方法

6 いま,生活習慣改善支援で求められる医療スタッフの役割とは (村本あき子 津下一代)
  1 生活習慣改善支援とは
    指導ではなく支援
    主役は対象者
    対象者ニーズにあった支援とは?
    健康が最優先でない人には
    生活習慣改善支援の工夫
  2 プロフェッショナルな仕事を意識する
    保健指導は聞くこと,質問すること
    保健指導スキルアップのための運営体制とは

7 行動カウンセリング:生活習慣改善への心理的アプローチ   (足達淑子)
  1 心理的アプローチとは
        こころに届く支援を
    指導(治療)よりも支援(訓練)を
    行動カウンセリングの姿勢
    相手の気持ちや準備性に応じた支援を
    行動のきっかけと結果に注目する
    実行して欲しい行動を,本人の具体的な実生活上の行動として表す
  2 コミュニケーションを大切に
    「やる気」を引きだすために,治療者には何が必要か
    生活の視点から,本人に良いことが生じるように

8 一人ひとりを考える生活習慣改善支援   (野口 緑)
  1 生活習慣病を解決する「生活習慣改善支援(保健指導)」とは
    生活習慣改善支援の考え方
    あいづちが了解のサインとは限らない
    「ラーメンの汁を残して」的,指導の落とし穴
    一人ひとりに合わせたテーラーメイドの支援
    対象者本人の判断と選択を支援するための検査結果の説明
    検査結果は何のためにみるか
    検査結果を理解してもらうための支援方法,脱「バラバラ事件」
  2 具体的な生活習慣改善支援の例
    メタボリックシンドローム
    高血圧
    高血糖
  3 一人ひとりにあわせた生活習慣改善支援とは


STEP 3 ―Care+Cure―
9 動脈硬化を防ぐ!肥満症のきほん (宮崎 滋)
  1 肥 満
    肥満とは
    頻 度
    肥満と疾患
    肥満と一般的死亡原因
  2 肥満症
    肥満症とは
    脂肪分布の違い
    肥満症の分類
  3 メタボリックシンドローム
    診断基準
    診断の目的
    頻 度
  4 肥満,肥満症,メタボリックシンドロームの原因
    原 因
    肥満の原因は過食より運動不足
    脂肪摂食量の増加
  5 肥満症の治療
    治療目標
    食事療法
    運動療法
    行動療法
    薬物療法
    外科療法

10 動脈硬化を防ぐ!糖尿病のきほん (綿田裕孝 稲垣賀子)
  1 糖尿病の現実
    現 状
    糖尿病とは
    糖尿病の怖さ
    糖尿病を知ることが治療の第一歩
  2 言葉の意味を知る
    血糖値
    インスリン
    HbA1C
  3 糖尿病の診断と治療
    糖尿病の分類
    糖尿病診断基準
    糖尿病合併症
    糖尿病治療(薬物療法)

11 動脈硬化を防ぐ!高血圧のきほん  (三好賢一 大蔵隆文 檜垣實男)
  1 高血圧と動脈硬化
    血圧とは
    血圧の測定
    家庭血圧の測り方
    高血圧は動脈硬化を進行させる
    高血圧の原因はなにか?
  2 高血圧の治療法
    生活習慣の修正
    降圧薬治療
  3 その他の高血圧
    二次性高血圧
    白衣高血圧と仮面高血圧
    一過性の血圧上昇

12 動脈硬化を防ぐ!脂質異常症のきほん   (木下 誠)
  1 脂質異常症を知ろう
    脂質異常症とは
    脂質異常症と動脈硬化症
    わが国の脂質異常症の頻度
    脂質異常症をきたす原因
    家族性高脂血症
    脂質異常症を引き起こす病気や薬剤
  2 リポタンパク質の役割
    リポタンパク質
    リポタンパク質の種類
    リポタンパク質の代謝
    動脈硬化症とは
    リポタンパク質とプラークの関係
    脂質異常治療と動脈硬化症予防

13 リスクを防ぐ!CKDのきほん   (勅使川原早苗 和田 淳 槇野博史)
  1 慢性腎臓病(CKD)
    腎臓とは
    腎臓の働き
    腎臓の働きを示す検査値
    慢性腎臓病(CKD)とは
    CKDの症状
    CKD発症の主な原因および危険因子
    CKDの合併症
    CKDをとりまく社会的背景
    CKDの検査
    CKDの予防と治療
  2 メタボリックシンドロームの腎機能低下への影響
    メタボリックシンドロームとCKDの接点
    メタボリックシンドロームからみたCKDの治療と予防
    薬物治療
    CKDとメタボリックシンドロームの対策
       今後の課題

14 リスクを防ぐ!高尿酸血症のきほん (岡部英明 細谷龍男)
  1 高尿酸血症と生活習慣病
    高尿酸血症とは
    高尿酸血症と生活習慣病との関連
  2 メタボリックシンドロームにおける高尿酸血症の管理,治療
    食事療法
    飲酒制限
    運動の推奨

15 リスクを防ぐ!NASHのきほん   (徳重克年 八辻 覧 橋本悦子)
  1 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは
    NASHの病態
    NASHの検査と診断
    肝生検
    NASHの診断手順
    NASHの予後
    メタボリックシンドロームとNASHの関係
    メタボリックシンドロームと脂肪肝の関係
    海外からの報告
  2 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療法
    体重コントロール
    運動療法
    薬物治療

  参考文献・参考図書
      索 引
書評
評者:金澤康徳 先生 (自治医科大学 名誉教授)

 編集者の寺本民生教授は本書の編集の趣旨を序で述べておられるが,まず健康日本21が厚生労働省の21世紀健康戦略として始められた.これは国民の健康運動であり種々の項目について目標値を設定し,それの達成のための啓蒙活動をすることにより目標達成者を増やそうとしたが,小グループでは成功を見る場合もあったが,残念ながら日本全体としては良い成果を挙げることができなかった.わが国では会社員は入社したら定期健康診断で健康状態をチェックされ,非会社員は国民健康保険の傘下にあり,40歳以上になると成人病検診を受けているが,いずれの場合の一般的助言と指導がなされるのみでそれを次年度までフォローアップされることはなかった.そこで,検診の質を変革しメタボリックシンドローム中心として行い,異常者には指導を受けることを義務づけ,指導により病的状態を改善させる道筋を作ったことである.これを行わない場合は保険者に経済的ペナルティを与えるのが特徴である.
 現場では検診業務のみでなく,事後の指導業務が加わりかなり混乱も認められているので本書では各分野での専門家の参加を得て各項目が簡潔に記載されている.そして最後に①基本事項,②保健指導の実務,③指導の評価法と分割して,参考書として各項目の筆者達の著書を紹介している.大変わかりやすく,スマートな書物と思い,お勧めする.
(丹水社「Q&Aでわかる肥満と糖尿病③④,2010年 vol.9,No.2,p.274より)
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