カテゴリー: 教養課程の医学教科書
新保育学
改訂5版
信州大学 教授 岡野雅子 著
実践女子短期大学 教授 松橋有子 著
昭和女子大学 教授 熊澤幸子 著
岩手大学 教授 武田京子 著
埼玉大学 准教授 吉川はる奈 著
定価
2,090円(本体 1,900円 +税10%)
- B5判 188頁
- 2011年8月 発行
- ISBN 978-4-525-63005-8
家庭科教員養成カリキュラム,教科に関する専門教育科目「保育学」のテキスト.改訂5版では,統計データの更新,育児ストレス,子どもの生活や父親・母親との関わりについてなど最近の動きも盛り込み,保育実習については写真を多用した.コラムには「イクメン」「赤ちゃんポスト」など今日的な話題を多数掲載した.
- 序文
- 目次
序文
2011 年 3 月 11 日午後 2 時 46 分に発生した東日本大震災は,大津波による広範囲にわたる甚大な被害をもたらした.さらに,この地震により東京電力福島第一原子力発電所が被害に遭い,放射能汚染の影響が懸念される事態に至った.いま,日本の国民全体が心を一つにして,この大災害からの復興に向けて頑張ろうとしている.電力不足は必至な状況となり,無駄な電力消費を止めて節電することが生活者の課題となった.今まで,ふわふわとした生活の中で,物やエネルギ-をいかに過剰に消費していたかが思い知らされ,先人の知恵に学び地に足をつけた堅実な生活を送ることが大切であることを,改めて思い知らされている.このことは,大きな犠牲をもたらした未曾有の自然災害から我々が学ぶことができた大きな収穫ではなかろうか.
子どもは生活の中で育つ.日々の生活が子どもを育てる土壌である.誕生から小学校就学までの子ども,すなわち乳幼児を対象とする保育学であるが,乳幼児はなお一層これが当てはまり,乳幼児は生活環境の中で周囲の人々とのかかわりを通して発達する.ちなみに,『幼稚園教育要領』(2008 年 3 月文部科学省告示)は「幼児期の教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり,幼稚園教育は,幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行うものであることを基本とする」という文章から始まっている.したがって,毎日の生活を健やかに送ることができるように整えることは,人間の存在自体の有り様にかかわることであって,それ故に先人たちが長い年月をかけて智恵を重ねてきたのであり,それがその環境の中で育つ乳幼児の健やかな発達をもたらすことになるといえる.
わが国の小学校,中学校,高等学校の教育は,文部科学大臣が告示する『学習指導要領』に基づいて行われているが,小学校および中学校『学習指導要領』は 2008 年 3 月に改訂・告示され,高等学校『学習指導要領』は 2009 年 3 月に改訂・告示された.保育を学校教育の教科の中で学習することは,従来から家庭科で行われている.それは,乳幼児期はほとんどの場合に家庭生活の中で家族に囲まれて育つので,家庭生活を科学することが命題である家庭科の中の一領域として保育学があることは,理に叶っているといえる.今回の『学習指導要領』の改訂で,家庭科教育の中の保育領域は,さらに一層重視されることになった.
乳幼児はいずれ大人となり,次の時代を担う人材となる.それだからこそ育てる側は人間発達のスタ-ト時点である乳幼児とかかわることの重要性と責任を認識することが求められる.それは,育てる側に目を向けると健全な市民であることの要件の一つであるといえるだろう.そのためには,人間が健やかに育つプロセスを学び,子どもの育ちを支える適切な態度を身につけることが必要である.つまり,保育学は,健全な市民であるための資質を育てることに資する科学であるといえる.教育の出発点である乳幼児期の保育を理解するために本書がお役に立てば幸いである.
2011年 夏
執筆者を代表して 岡野雅子
子どもは生活の中で育つ.日々の生活が子どもを育てる土壌である.誕生から小学校就学までの子ども,すなわち乳幼児を対象とする保育学であるが,乳幼児はなお一層これが当てはまり,乳幼児は生活環境の中で周囲の人々とのかかわりを通して発達する.ちなみに,『幼稚園教育要領』(2008 年 3 月文部科学省告示)は「幼児期の教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり,幼稚園教育は,幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行うものであることを基本とする」という文章から始まっている.したがって,毎日の生活を健やかに送ることができるように整えることは,人間の存在自体の有り様にかかわることであって,それ故に先人たちが長い年月をかけて智恵を重ねてきたのであり,それがその環境の中で育つ乳幼児の健やかな発達をもたらすことになるといえる.
わが国の小学校,中学校,高等学校の教育は,文部科学大臣が告示する『学習指導要領』に基づいて行われているが,小学校および中学校『学習指導要領』は 2008 年 3 月に改訂・告示され,高等学校『学習指導要領』は 2009 年 3 月に改訂・告示された.保育を学校教育の教科の中で学習することは,従来から家庭科で行われている.それは,乳幼児期はほとんどの場合に家庭生活の中で家族に囲まれて育つので,家庭生活を科学することが命題である家庭科の中の一領域として保育学があることは,理に叶っているといえる.今回の『学習指導要領』の改訂で,家庭科教育の中の保育領域は,さらに一層重視されることになった.
乳幼児はいずれ大人となり,次の時代を担う人材となる.それだからこそ育てる側は人間発達のスタ-ト時点である乳幼児とかかわることの重要性と責任を認識することが求められる.それは,育てる側に目を向けると健全な市民であることの要件の一つであるといえるだろう.そのためには,人間が健やかに育つプロセスを学び,子どもの育ちを支える適切な態度を身につけることが必要である.つまり,保育学は,健全な市民であるための資質を育てることに資する科学であるといえる.教育の出発点である乳幼児期の保育を理解するために本書がお役に立てば幸いである.
2011年 夏
執筆者を代表して 岡野雅子
目次
1 章 保育を学ぶ
A.「保育」とは何か
B.なぜ「保育」を学ぶのか
1.子どもという存在
2.保育を学ぶ意義
3.男女ともに保育を学ぶ必要性
4.青年期の課題―親性を身につける
5.「いまの自分」「これからの自分」を通して「人間の発達」を考える
コラム:赤ちゃんポスト
2 章 子どもの発達
A.母体の健康管理と子どもの誕生
1.生殖
B.子どもの心身の発育・発達
1.発育・発達の個別性と共通性
2.乳幼児期の重要性
3.子どもの身体発育
4.子どもの精神発達
コラム:母体の喫煙が胎児に及ぼす影響
コラム:受精卵診断
コラム:育児日記
コラム:代理母・代理出産
コラム:セクシュアリティの発達
3 章 子どもを育てる
A.愛着と自律
1.基本的な信頼感の形成
2.愛着とはなにか
3.こころの安全基地―愛着の重要性
4.愛着とその後の発達の関係―愛着から自律へ
B.親のかかわりと人格形成
1.家庭における教育
2.家庭という環境と子どもの発達
3.親の養育態度と子どもの人格
4.子どもの発達と家庭教育の課題
C.父親・母親の保育責任
1.子育ての第一義的責任は誰か
2.「子どもを育てること」は「喜び」と「苦労」の両方がある
3.家庭におけるしつけ
4.男女の協力と父親の役割
5.子育てと地域の交流
D.親の不適切なかかわりとその影響
1.親の育児ストレスと育児不安
2.親の不適切なかかわり
3.親の不適切なかかわりが子どもの心身に及ぼす影響
コラム:イクメン(育MEN)
4 章 子どもの育つ環境の整備
A.子どもの生活と遊び
1.子どもの生活
2.子どもの遊びと文化
B.家庭保育と集団保育
1.子どもが育つ環境の変化
2.保育の目標
3.家庭保育
4.集団保育
C.児童福祉
1.子どもの権利と福祉
2.児童憲章
3.児童福祉法
4.児童の権利に関する条約
5.児童虐待防止法
D.子育て支援
1.少子社会の到来
2.子育て支援策
3.さまざまな保育所
4.子育てネットワーク
コラム:ブックスタートと絵本の読み聞かせ
コラム:アドボカシー
コラム:性的虐待を予防するには
コラム:児童虐待防止支援
コラム:待機児童
コラム:地域がすすめる子育てプラン
5 章 子どもとふれ合う
A.保育実習の意味を考えよう
B.自分の子ども時代を振り返ってみよう
C.子どもの様子を観察してみよう
1.観察の種類
2.観察をするときの注意事項
D.子どもと一緒に遊んでみよう
E.保育者としての自分の役割を考えてみよう
1.保育者としての心構え
2.保育者の役割
F.保育実習
G.実習経験を生かそう
6 章 家庭における看護
A.病気や事故の予防と手当て
1.死因順位
2.新生児
3.乳幼児突然死症候群(SIDS)
4.感染症
5.悪性新生物
6.神経系の病気
7.泌尿器系の病気
8.消化器系の病気
9.皮膚の病気
10.耳鼻科の病気
11.アレルギー疾患
12.小児生活習慣病
13.不慮の事故
14.発達障害
B.家庭における看護
1.注意を要する症状
2.基本的な看護
3.救急処置
コラム:予防接種は受けるべきか
コラム:ピロリ菌から子どもを守ろう
コラム:心的外傷後ストレス障害(PTSD)
コラム:子どもの不慮の事故
コラム:AED 普及で社会復帰可能な状態での生存率が増えている
資料1. 母子保健法
資料2. 母体保護法
資料3. 健康増進法
資料4. 児童福祉法
資料5. 児童の権利に関する条約
資料6. 児童虐待の防止等に関する法律
資料7. 就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律
資料8. 少子化社会対策基本法
資料9. 次世代育成支援対策推進法
資料10.育児・介護休業法
資料11.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
A.「保育」とは何か
B.なぜ「保育」を学ぶのか
1.子どもという存在
2.保育を学ぶ意義
3.男女ともに保育を学ぶ必要性
4.青年期の課題―親性を身につける
5.「いまの自分」「これからの自分」を通して「人間の発達」を考える
コラム:赤ちゃんポスト
2 章 子どもの発達
A.母体の健康管理と子どもの誕生
1.生殖
B.子どもの心身の発育・発達
1.発育・発達の個別性と共通性
2.乳幼児期の重要性
3.子どもの身体発育
4.子どもの精神発達
コラム:母体の喫煙が胎児に及ぼす影響
コラム:受精卵診断
コラム:育児日記
コラム:代理母・代理出産
コラム:セクシュアリティの発達
3 章 子どもを育てる
A.愛着と自律
1.基本的な信頼感の形成
2.愛着とはなにか
3.こころの安全基地―愛着の重要性
4.愛着とその後の発達の関係―愛着から自律へ
B.親のかかわりと人格形成
1.家庭における教育
2.家庭という環境と子どもの発達
3.親の養育態度と子どもの人格
4.子どもの発達と家庭教育の課題
C.父親・母親の保育責任
1.子育ての第一義的責任は誰か
2.「子どもを育てること」は「喜び」と「苦労」の両方がある
3.家庭におけるしつけ
4.男女の協力と父親の役割
5.子育てと地域の交流
D.親の不適切なかかわりとその影響
1.親の育児ストレスと育児不安
2.親の不適切なかかわり
3.親の不適切なかかわりが子どもの心身に及ぼす影響
コラム:イクメン(育MEN)
4 章 子どもの育つ環境の整備
A.子どもの生活と遊び
1.子どもの生活
2.子どもの遊びと文化
B.家庭保育と集団保育
1.子どもが育つ環境の変化
2.保育の目標
3.家庭保育
4.集団保育
C.児童福祉
1.子どもの権利と福祉
2.児童憲章
3.児童福祉法
4.児童の権利に関する条約
5.児童虐待防止法
D.子育て支援
1.少子社会の到来
2.子育て支援策
3.さまざまな保育所
4.子育てネットワーク
コラム:ブックスタートと絵本の読み聞かせ
コラム:アドボカシー
コラム:性的虐待を予防するには
コラム:児童虐待防止支援
コラム:待機児童
コラム:地域がすすめる子育てプラン
5 章 子どもとふれ合う
A.保育実習の意味を考えよう
B.自分の子ども時代を振り返ってみよう
C.子どもの様子を観察してみよう
1.観察の種類
2.観察をするときの注意事項
D.子どもと一緒に遊んでみよう
E.保育者としての自分の役割を考えてみよう
1.保育者としての心構え
2.保育者の役割
F.保育実習
G.実習経験を生かそう
6 章 家庭における看護
A.病気や事故の予防と手当て
1.死因順位
2.新生児
3.乳幼児突然死症候群(SIDS)
4.感染症
5.悪性新生物
6.神経系の病気
7.泌尿器系の病気
8.消化器系の病気
9.皮膚の病気
10.耳鼻科の病気
11.アレルギー疾患
12.小児生活習慣病
13.不慮の事故
14.発達障害
B.家庭における看護
1.注意を要する症状
2.基本的な看護
3.救急処置
コラム:予防接種は受けるべきか
コラム:ピロリ菌から子どもを守ろう
コラム:心的外傷後ストレス障害(PTSD)
コラム:子どもの不慮の事故
コラム:AED 普及で社会復帰可能な状態での生存率が増えている
資料1. 母子保健法
資料2. 母体保護法
資料3. 健康増進法
資料4. 児童福祉法
資料5. 児童の権利に関する条約
資料6. 児童虐待の防止等に関する法律
資料7. 就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律
資料8. 少子化社会対策基本法
資料9. 次世代育成支援対策推進法
資料10.育児・介護休業法
資料11.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律