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アルゴリズムで考える薬剤師の臨床判断

症候の鑑別からトリアージまで

改訂2版

昭和大学医学部薬理学 教授 木内祐二 編

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  241頁
  • 2022年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-70292-2

鑑別・トリアージの流れが“わかる・できる” 患者サポートに必携の一冊!

薬局窓口で症状を訴える患者に対して,「どう対応すべきか分からない」「判断が難しい」といった悩みを感じたことはありませんか? 
薬剤師による「臨床判断」とは,心身の異常や症候を訴える来局者の健康相談に適切に対応し,疾患や病状を推測したうえで緊急対応,受診勧奨,OTC薬の推奨,生活指導などから妥当な対応方法を選択(トリアージ)する,この一連の臨床推論・判断の流れのことをいいます.
本書では,薬局で活用できる臨床判断アルゴリズムをもとに15症候の臨床判断を解説しました.

  • 序文
  • 推薦の序
  • 目次
  • 書評
序文
 本書は,薬局などでしばしば遭遇する代表的な症候を訴える来局者に適切に対応するため,症候別に,「基本的な症候を示す疾患」を発生頻度の高い疾患,見逃してはならない緊急性の高い疾患,その他の疾患に分けて概説しました.また,「来局者からの情報収集と疾患推測」として,各疾患の症状の特徴を患者から得られる情報(LQQTSFA)別に整理するとともに,薬局の現場で活用しやすいようにアルゴリズムを提示しています.さらに,薬局でトリアージを行う際のポイントを「来局者に対する判断と対応」にまとめ,緊急対応,受診勧奨,OTC 薬などの選択の指標を示しました.改訂にあたっては,日常的な薬剤師の場面にさらに対応できるよう,新たに意識障害,悪心・嘔吐,関節痛を加えた15 症候とし,初版よりさらに充実した内容としました.
 これからの地域社会では,超高齢化のさらなる進展,地域医療の担い手や家庭内の介護者の不足などに対応するため,地域の実情に合った住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となった地域包括ケアシステムの充実が望まれています.その中で,薬局が地域の主要な医療施設としてより積極的に機能し,地域住民に対するプライマリ・ケアの窓口として,また,セルフメディケーションの支援者として,薬局の薬剤師が地域住民の健康の回復・維持・向上に責任ある判断と行動をすることが期待されています.この期待に応えるためには,処方箋調剤と服薬指導に加え,心身の異常・症候(症状)を訴える来局者の健康相談に適切に対応して疾患や病状を推測し,OTC 薬の推奨や受診勧奨などから妥当な対応方法の選択(トリアージ)を行う能力が求められます.この一連の薬剤師の臨床推論・判断の流れと責任ある行動を本書では「臨床判断」と呼んでいます.また,年々増加している在宅患者への訪問時にも,薬剤師自らが患者の病状を把握し,病状の変化時に適切に対応する必要がありますが,その際にも的確な臨床判断の能力が求められます.加えて,2016 年に制度化された「健康サポート薬局」でも,こうした臨床判断とトリアージの能力を身に付け,日常的に実践する薬剤師が求められています.
 本書を,薬剤師の日常の業務のみならず,健康サポート薬局の研修時の参考書,薬学生の実習や卒後の研修などでも幅広く利用していただき,これからの薬剤師に求められる基本的な能力である臨床判断の実践に役立てていただければ,何より幸いです.


2022 年春
編者 木内祐二
推薦の序
 2020 年4 月,薬機法・薬剤師法等の一部が改正されました.その結果,それまで130 年間変わることのなかった薬局の定義と薬剤師の役割が大きく変わったことは記憶に新しい事と思います.実務の現場では医療環境・医療技術の進歩,画期的な新薬の登場や住民・患者の要望に即応するよう,今回の法改正で示された業務や役割を果たしてきましたが,法的な位置づけは変わることがありませんでした.そうした視点からみれば,2020 年薬機法等の改正はわが国の薬剤師・薬局にとって「コペルニク変革」と言っても過言ではないほど,大きな視点の転換であったと思います.調剤のみならず医薬品すべての供給拠点として機能することが求められる「薬局」,そして地域住民・患者の医薬品使用状況を継続的,一元的に収集・管理・観察・保存し,それらの情報を活用してその住民・患者の安全・安心な薬物治療を確保する役割を担う「薬剤師」,それが21 世紀の薬剤師・薬局の在り様であり,地域包括ケアシステムの中で期待される薬剤師・薬局の姿と言えるでしょう.
 初版が2015 年に発行された本書は,すでにして今回の法改正があることを見通していたかのように,調剤薬の提供や服薬指導,さらにはOTC 薬の販売の際に,薬剤師が医薬品選択のために心がけねばならない臨床判断の考え方を,患者の訴える症状と疾病の両面からアプローチできるよう逆引き検索機能が工夫されています.そればかりか,その時々に薬剤師が患者や相談者にどう対応することが最適なのかという対応方法までが,まるでコンピュータ・プログラムを作成するように論理的なアルゴリズムによって解説されています.さらに,その判断に至る経過で不可欠な疾病の解説や,図表あるいは写真などを豊富に示すことで,医療現場はもとより,薬局の店頭で実際に患者などを目の前にしての対応を疑似的に体感できる構成となっているユニークな解説書です.
 本書は,超高齢社会において期待される薬剤師の役割と機能を着実に,的確に果たすうえで,医療現場にとどまらず開局薬局にあっても活用できる座右の書として,常に身近に置くにふさわしい薬剤師必携の図書であると確信をしています.

2022 年春
公益社団法人 日本薬剤師会 会長
山本信夫
目次
第1章 総 論
1. 薬剤師による臨床判断のプロセス

第2章 アルゴリズムで考える臨床判断
1. 発 熱
2. 頭 痛
3. 発 疹
4. 浮 腫
5. 嚥下困難・障害
6. 腹 痛
7. 悪心・嘔吐
8. 下痢・便秘
9. 動悸・心悸亢進
10. 咳・痰・呼吸困難
11. 腰 痛
12. 関節痛
13. めまい
14. 意識障害
15. 記憶障害
書評
亀井 美和子(帝京平成大学薬学部 教授)

 医療機関にフリーアクセスができるわが国では,体調に不調や不安があれば重症度にかかわらず受診することができる.しかし,現実には,何科を受診すればよいのかわからない,受診時間に行けない,受診するほどでもないなどのさまざまな理由で受診していない人がいる.最近は,コロナ禍で医療機関を思うように受診できないという状態も生じている.その一方で,医療機関ではなく,まず薬局に足を運ぶ人がいる.地域に根ざした薬局はオープンで入りやすく,そこには相談しやすい薬剤師がいる.法律上も「調剤を行う場所」に加えて「薬学的知見に基づく指導を行う場所」になった薬局は,今後さらに地域住民に対するプライマリ・ケアの窓口として,また,セルフメディケーション支援の場として,地域の健康を支える柱となっていく.薬局の利用者は,健康な人から病気の人まで,病気も診療科や重症度にかかわらず幅が広いが,心身の不調を訴える方に適切に対応するためには,薬剤師が的確に判断し,行動する力を身に付けておかなければならない.その判断力と行動力につながる書籍が本書である.
 本書は,医師として医学・薬学教育に携わる木内祐二氏が,薬剤師の臨床判断能力向上に向けて編集した書籍の改訂版である.薬局でしばしば遭遇する発熱,頭痛,発疹,浮腫など来局者が訴える代表的な15 の症候について,来局者から聞き取った情報に基づき,アルゴリズム(判断のための流れ図)で,緊急受診なのか,受診勧奨なのか,OTC 薬推奨なのかなど,判断に至るまでの道筋がわかりやすく示されている.また,発生頻度の高い疾患,見逃してはならない緊急性の高い疾患,その他の疾患が概説されている.各症候を訴える来局者の症例を通じて,疾患やアルゴリズムの理解を深めることができるのも興味深く,執筆者の工夫が感じられる.
 薬局勤務者でなくとも,自らの臨床判断能力を養いたい薬剤師すべてにおすすめしたい書籍である.
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