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カテゴリー: 臨床薬学

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できる薬剤師はバイタルサインをどうみるか

1版

一般社団法人日本在宅薬学会 理事長/
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長 狭間研至 著

定価

2,200(本体 2,000円 +税10%)


  • A5判  112頁
  • 2023年1月 発行
  • ISBN 978-4-525-70641-8

「服薬後」の患者フォローを,バイタルサインを使いこなして実践する

超高齢社会の到来,医師の働き方改革などの影響を受け,継続的な患者フォローや薬効の評価など,チーム医療における薬剤師の役割は転換期を迎えている.この新たな役割を果たすためには,バイタルサインを測定し,患者状態をアセスメントする能力が欠かせない.
では,薬局薬剤師が患者のバイタルサインを測るとき,一体どこをみて,何を考えればいいのだろうか.
本書は,薬局薬剤師のあり方に一石を投じた『薬剤師のためのバイタルサイン』(2010年)の改訂新版として登場.
これからバイタルサインにふれる読者に向け,測定手技から薬学的視点でのアセスメントを解説し,令和の時代に求められる新たな薬剤師の姿を伝える一冊.

  • 序文
  • 目次
  • 書評1
  • 書評2
序文
はじめに

 処方箋を応需し,処方監査をして疑義があれば照会して解消したあと,正確・迅速に調剤し,わかりやすい服薬指導とともに薬を渡す.もしあなたが,そんな仕事の毎日になんともいえない閉塞感や虚無感を感じ,薬剤師を諦めそうになっているとすれば,ぜひ,本書を手に取っていただきたい.
 薬剤師がさまざまなネガティブな感情をもっている最大の理由は,現在の保険調剤業務において,薬学部時代に必死に習得した薬学的知識を活かせず,そのために,患者はもとより,ほかの医療職種からも医療における専門家としての認識と,ある意味ではリスペクトを得られない仕組みになっているからである.
 この状況を打破するためには,薬剤師が薬を渡した後までのフォローが鍵となる.薬剤師は,自らが調剤し投薬した薬が患者の身体のなかでどうなっているかを,薬理学・薬物動態学・製剤学といった薬学的専門性を駆使して読み解くことができる.これは,薬剤師にしかできない患者の状態の「謎解き」である.この結果とともにバイタルサインの情報を追加し,処方医に適切なタイミングでフィードバックすることが可能になれば,薬物治療の質を飛躍的に向上させるだけでなく,薬剤師の専門性は明確になるのだ.そのために,患者の状態を示すさまざまなバイタルサインを自分自身でチェックできることが不可欠なのである.
 本書では,薬剤師が学ぶべきバイタルサインについて,その背景や基本的な知識,そして,現場での活用のポイントについてわかりやすくまとめた.あなたが「できる薬剤師」になるためのヒントを手に入れるきっかけになればと願っている.

2022年11月
狭間研至
目次
1 薬剤師を取り巻く環境
 「調剤薬局」を考える
 社会資源としての薬局・薬剤師を見直す
 医薬品医療機器等法の改正が示すもの

2 薬剤師とバイタルサイン
 AKYでしか話せなかったバイタルサイン
 薬局・薬剤師を取り巻く環境の変化
 バイタルサインが変える薬局・薬剤師のあり方

3 バイタルサインを活用するためにはじめるべきこと
 取り組むきっかけは?
 器具を準備しよう!
 知識・技能の習得には?
 環境を整備しよう!

4 バイタルサインの測定・記録・アセスメント
 血 圧
 呼 吸
 脈 拍(心拍)
 体 温
 意 識
 尿 量

5 バイタルサインの変化からみる薬の副作用
 循環器系薬の副作用
 呼吸器系薬の副作用
 消化器系薬の副作用
 薬剤性肝障害
 筋・神経系薬の副作用
 アナフィラキシーショック

6 バイタルサインが拓く薬局・薬剤師の新たな展望
 医療現場で進むタスク・シフティング,タスク・シェアリング
 薬剤師とのタスク・シフティング/シェアリングが進まない理由
 医師と薬剤師の関係を変えるためのポイント
 バイタルサインを活用し在宅医療で活動し始めたときに訪れる3つの段階
 薬剤師の「時間・気力・体力」を温存させるシステム作り
 診療報酬・調剤報酬の変化への対応を急げ
 薬剤師が対人業務に取り組むメリット
書評1
平井みどり(神戸大学 名誉教授/京都大学医学研究科 特任教授(健康情報学))


 バイタルサインは身体の状況を表す測定数値,それ以上でも以下でもない.しかし,身体内部で生じているイベントの直接的反映がバイタルサインであり,思った以上に身体状況を物語ってくれる.薬剤師が聴診器? と不審がられたこともあったらしいが,時は流れて聴診器はなくとも,バイタルサインをみる手段はさまざま出現した.それとともに,バイタルサインの意味をどう捉えるか,それによって何がわかるのかを理解し活用できることが,薬剤師に求められるようになった.
 バイタルサインの活用はあちこちに存在する.新型コロナウイルスの流行で,体温測定は一般化した.それだけで感染を見抜くのは難しいが,ひとつの目安とはなる.血圧は普段の値が大事であり,通常の値から大きく外れたときには,何らかのトラブルが存在していることが多い.本人は大丈夫と思っていても,思わぬ事故につながることもある.喘息患者の吸入指導を丁寧に行っていても,呼吸音が粗ければきちんと薬が気管支に届いてない可能性もある.運動もしないのに脈拍数が多い場合は,循環器や内分泌の専門医を受診することを勧めたほうがいいだろう.
 バイタルサインと「できる薬剤師」を結びつけるためには,バイタルサインの生理的意味を理解するとともに,治療薬の効果や副作用がバイタルサインにどんな変化をもたらすかを理解し,実際の患者に適用できることが必要である.本書はバイタルサインの意味や活用方法の具体例を丁寧にわかりやすく教えてくれる.今や薬学部の学生教育でもバイタルサインを測定するようになり,手技を覚えただけでは「できる薬剤師」とはいえないようになった.バイタルサインを活用すれば患者メリットとなり,ひいては薬剤師業務の本質と深く結びつくことを主張しているのが本書である.
 「在宅医療に関わらないから,バイタルサインをみるチャンス/必要性がない」という人がいるが,そんなことはない.改正医薬品医療機器等法に,治療薬投与後の継続的な観察が義務付けられたことは,腕組みして患者を遠くから眺めたり,話だけで判断するのではなく,薬剤師が患者の症状を含む情報を直接取ることを求めているのではないか.患者の何を見て,どう考え行動するかが「できる薬剤師」を決める.
 医師との協議のベースになるのは,薬物治療の内容だけでなく,患者の状態に関する情報のやり取りである.疑義照会がうまくいかない,タスクシェアやタスクシフティングがうまく進まない理由はそこだと思う.同じベースに立脚して,本当に患者のためになる協議を行うためにも,基本となるバイタルサインは「自ら」測定し,「意味を考える」ことが薬剤師には求められている.
書評2
変化の時代だからこその“バイタルサイン”

山本雄一郎(有限会社アップル薬局 代表取締役)

 パンデミックは時代の変化を加速させる.薬局業界においては,電子処方箋やオンライン服薬指導などがそうだ.そして,それらのシェアが高まっていけば,立地産業の側面の強い,いわゆる調剤薬局は経営的に対策を迫られることになる.また,令和元年改正薬機法によって,薬剤使用期間中の患者フォローアップが薬剤師の義務となったわけだが,電話やSNSを用いての患者状態や副作用の確認だけでよいのか,と戸惑うこともままある.
 このタイミングでの“バイタルサイン”の提案はさすがの一言.バイタルサインという手段をもっているか否かが,これらの課題に対する選択肢の数に直結することになるからだ.バイタルサインという手段を手にした薬剤師は,副作用モニタリングの視点や薬歴に記載される用語など,様々な変化が生じることになる.バイタルサインを踏まえた薬学を用いる薬剤師とそうでない薬剤師,どちらができる薬剤師なのかは言うまでもないだろう.
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