カテゴリー: 臨床薬学 | 総合診療医学/プライマリ・ケア医学
日本プライマリ・ケア連合学会
薬剤師研修ハンドブック 基礎編
1版
日本プライマリ・ケア連合学会 編集
定価
4,070円(本体 3,700円 +税10%)
- B5判 296頁
- 2014年5月 発行
- ISBN 978-4-525-70711-8
地域医療の担い手として,いま薬剤師が期待されている.日本プライマリ・ケア連合学会ではプライマリ・ケア認定薬剤師制度を創設し,研修が行われているが,本書はその参考となるテキストである.保険薬局で働く薬剤師や在宅医療に関わる薬剤師に求められる知識を広くカバーしており,地域医療においてさらに活躍するのに有用な一冊.
- 序文
- 目次
序文
かねがね私には2つの疑問があります.1つは日本における医療職の職務範囲が,国民からではなく医療職からの規定であることです.もう1つは,ほとんどすべてが医師の指示によって動く柔軟性に欠けた日本の医療システムです.
前者は国民から見た場合のシームレスな医療の妨げになっています.救急救命士の挿管でさえ,長い議論の後に2004年に法整備ができたのですから,医療行為の限定範囲について変更することは大変なことです.もちろん,十分な議論と安全性の保証があってこそ変更可能であることは間違いありません.しかし,そのことは確かに安全性の確保にはつながっていますが,社会基盤の前提がきわめて大きな変化をきたしている現在,制度そのものが疲労を起こしていることも事実です.薬剤師,医師,歯科医師,看護師などの職務領域の主たるものは厳格に規定されなければなりませんが,職種同士に重なり合う部分がないと,それは医療を受ける側からのシームレスな医療にはなり得ないと考えるのです.職種同士の領域の隙間に落ちる患者はいないのでしょうか.
後者については,日本の医療が世界的に評価されているのは,先達による歴史ある保健インフラの整備とともに,医師を中心に優れた医療職群が機能的に働いてきた証です.これについても前提となるものが大きく変化した今,このままで持続可能かどうかはきわめて疑わしくなっています.
高齢化,少子化,人口偏在,人口減の社会はひたひたと深刻化を増しています.担い手は不足し,医療や介護の需要は圧倒的に拡大します.つまり,領域を超えて対応せざるを得ない疾病や介護の問題を有する高齢者に対して,あらゆる専門職が住民や行政とともに連携をとり,支え合わなければ乗り越えられないのです.
同時に,現象面からの喫緊の対応としてのあり方とは別に,薬剤師という仕事の本質を考える時に,現状のプライマリ・ケアへの軸足の弱さを案ずるのは私だけではないと思います.
薬剤師がその専門教育を社会に還元するいくつかの道の1つに,プライマリ・ケアがあります.本書は多職種協働を数十年間にわたって唱えてきた私ども日本プラマリ・ケア連合学会が立案から深く携わってきたプライマリ・ケア認定薬剤師制度のテキストであると同時に,日本の多くの薬剤師がプライマリ・ケアの現場に果敢に踏み込んで欲しいという,私どもの強い願いを込めて刊行したものです.
真の多職種協働のために,プライマリ・ケアの何たるかを理解した多くの薬剤師がともに活躍されることを願っています
2014年4月
日本プライマリ・ケア連合学会 理事長
丸山 泉
前者は国民から見た場合のシームレスな医療の妨げになっています.救急救命士の挿管でさえ,長い議論の後に2004年に法整備ができたのですから,医療行為の限定範囲について変更することは大変なことです.もちろん,十分な議論と安全性の保証があってこそ変更可能であることは間違いありません.しかし,そのことは確かに安全性の確保にはつながっていますが,社会基盤の前提がきわめて大きな変化をきたしている現在,制度そのものが疲労を起こしていることも事実です.薬剤師,医師,歯科医師,看護師などの職務領域の主たるものは厳格に規定されなければなりませんが,職種同士に重なり合う部分がないと,それは医療を受ける側からのシームレスな医療にはなり得ないと考えるのです.職種同士の領域の隙間に落ちる患者はいないのでしょうか.
後者については,日本の医療が世界的に評価されているのは,先達による歴史ある保健インフラの整備とともに,医師を中心に優れた医療職群が機能的に働いてきた証です.これについても前提となるものが大きく変化した今,このままで持続可能かどうかはきわめて疑わしくなっています.
高齢化,少子化,人口偏在,人口減の社会はひたひたと深刻化を増しています.担い手は不足し,医療や介護の需要は圧倒的に拡大します.つまり,領域を超えて対応せざるを得ない疾病や介護の問題を有する高齢者に対して,あらゆる専門職が住民や行政とともに連携をとり,支え合わなければ乗り越えられないのです.
同時に,現象面からの喫緊の対応としてのあり方とは別に,薬剤師という仕事の本質を考える時に,現状のプライマリ・ケアへの軸足の弱さを案ずるのは私だけではないと思います.
薬剤師がその専門教育を社会に還元するいくつかの道の1つに,プライマリ・ケアがあります.本書は多職種協働を数十年間にわたって唱えてきた私ども日本プラマリ・ケア連合学会が立案から深く携わってきたプライマリ・ケア認定薬剤師制度のテキストであると同時に,日本の多くの薬剤師がプライマリ・ケアの現場に果敢に踏み込んで欲しいという,私どもの強い願いを込めて刊行したものです.
真の多職種協働のために,プライマリ・ケアの何たるかを理解した多くの薬剤師がともに活躍されることを願っています
2014年4月
日本プライマリ・ケア連合学会 理事長
丸山 泉
目次
第1章 プライマリ・ケアと薬剤師
1 プライマリ・ケアとは何か
2 プライマリ・ケアにおける薬剤師の役割
3 これからの薬剤師教育について
4 新たに導入される総合診療専門医の位置づけと薬剤師との連携
5 プライマリ・ケア認定薬剤師制度
第2章 良好な薬剤師-患者関係
第3章 プライマリ・ケアにおける服薬指導・支援
1 服薬指導・支援の基本
2 医薬品情報の活用
3 在宅での服薬指導・支援
4 高齢者への服薬指導・支援
5 小児への服薬指導・支援
6 妊産婦・授乳婦への服薬指導・支援
第4章 薬剤師の視点で行うトリアージ&アクション
1 第4章をお読みいただく前に
2 救急初療のアプローチ
3 ショック状態を見極める
4 危険な胸痛を見極める
5 危険な発熱・頭痛を見極める
6 在宅の意識障害を見極める
7 見逃せない小児の危険な状態
第5章 薬剤師が関わる生活習慣指導
1 食事指導
2 禁煙支援
3 減酒・断酒指導
4 運動指導
5 ストレスコントロール
第6章 薬剤師によるメンタルヘルスケア
1 メンタルヘルスケアとは
2 メンタルヘルスケアにおける薬剤師の役割
3 うつ病のケア
4 自殺予防
5 アルコール・薬物依存
第7章 在宅ケア
1 在宅医療とは
2 在宅ケアにおける介護保険制度
3 地域包括ケアとは
4 在宅ケアにおける多職種協働
5 在宅緩和ケア
第8章 プライマリ・ケアにおけるセルフメディケーション
1 セルフメディケーションにおける薬剤師の役割
2 OTC医薬品の知識と活用
3 漢方薬の知識と活用
4 健康食品の知識と活用
5 医療機器の知識と活用
第9章 地域活動
1 薬物乱用防止活動
2 学校薬剤師活動
3 住民健康教育
4 アンチ・ドーピング
5 薬剤師と地域の関わり
6 災害医療における薬剤師の役割
第10章 これからの地域連携・チーム医療
1 地域医療計画における地域連携
2 チーム医療とは
3 薬薬連携
4 多職種協働のコツ
①医師
②歯科医師
③看護師
④栄養士・管理栄養士
⑤リハビリテーション関連職種
⑥ケアマネジャー
5 多職種間教育(IPE),多職協働活動(IPW)
1 プライマリ・ケアとは何か
2 プライマリ・ケアにおける薬剤師の役割
3 これからの薬剤師教育について
4 新たに導入される総合診療専門医の位置づけと薬剤師との連携
5 プライマリ・ケア認定薬剤師制度
第2章 良好な薬剤師-患者関係
第3章 プライマリ・ケアにおける服薬指導・支援
1 服薬指導・支援の基本
2 医薬品情報の活用
3 在宅での服薬指導・支援
4 高齢者への服薬指導・支援
5 小児への服薬指導・支援
6 妊産婦・授乳婦への服薬指導・支援
第4章 薬剤師の視点で行うトリアージ&アクション
1 第4章をお読みいただく前に
2 救急初療のアプローチ
3 ショック状態を見極める
4 危険な胸痛を見極める
5 危険な発熱・頭痛を見極める
6 在宅の意識障害を見極める
7 見逃せない小児の危険な状態
第5章 薬剤師が関わる生活習慣指導
1 食事指導
2 禁煙支援
3 減酒・断酒指導
4 運動指導
5 ストレスコントロール
第6章 薬剤師によるメンタルヘルスケア
1 メンタルヘルスケアとは
2 メンタルヘルスケアにおける薬剤師の役割
3 うつ病のケア
4 自殺予防
5 アルコール・薬物依存
第7章 在宅ケア
1 在宅医療とは
2 在宅ケアにおける介護保険制度
3 地域包括ケアとは
4 在宅ケアにおける多職種協働
5 在宅緩和ケア
第8章 プライマリ・ケアにおけるセルフメディケーション
1 セルフメディケーションにおける薬剤師の役割
2 OTC医薬品の知識と活用
3 漢方薬の知識と活用
4 健康食品の知識と活用
5 医療機器の知識と活用
第9章 地域活動
1 薬物乱用防止活動
2 学校薬剤師活動
3 住民健康教育
4 アンチ・ドーピング
5 薬剤師と地域の関わり
6 災害医療における薬剤師の役割
第10章 これからの地域連携・チーム医療
1 地域医療計画における地域連携
2 チーム医療とは
3 薬薬連携
4 多職種協働のコツ
①医師
②歯科医師
③看護師
④栄養士・管理栄養士
⑤リハビリテーション関連職種
⑥ケアマネジャー
5 多職種間教育(IPE),多職協働活動(IPW)