カテゴリー: 臨床薬学
CRCのための治験支援業務ガイド
1版
NTT東日本関東病院 薬剤部長 折井孝男 編集
京都大学医学部附属病院 教授・薬剤部長 乾 賢一 編集
定価
3,300円(本体 3,000円 +税10%)
- B5判 206頁
- 2006年3月 発行
- ISBN 978-4-525-71301-0
本書は医療機関における治験の準備段階から治験終了時までのながれの中で,CRCが取り組む業務とともに,それに伴う法的事項などもQ&A形式で解説した.
CRC業務へ取り組む薬剤師・看護師におすすめの一冊.
- 序文
- 目次
序文
平成9年に「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」が省令として公布されて以来,ヒトを対象とする臨床試験(治験)について,計画,管理,記録,モニタリング,監査,報告など,厳格な基準がヘルシンキ宣言,ICHGCPに基づく国際的に共通な基準として定められている.この基準の遵守により被験者の人権,安全および福祉が保護され,臨床試験の倫理性と科学性が保証される.
厚生労働省はわが国における治験の空洞化に危機感を抱き,「全国治験活性化3ヵ年計画」を打ち出した.具体的な内容としては「治験ネットワーク化の推進」「医療機関の治験実施体制の充実」「患者の治験参加を支援する施策」「企業における治験負担の軽減」「臨床研究全体の推進」が提言された.
わが国の治験を推進する上で,速さ,信頼性,経済性の3つのキーワードをあげることができる.裏を反せば「遅い」「質が悪い」「コストが嵩む」ということが問題点としてあげられる.被験者をリクルートし,説明してから治験に参加して頂くまでの時間が非常にかかるという問題もある.時間がかかるということはコストもかかるということである.コストがかかるということは,対応をスムーズに行うことができないことになり「遅い」という問題に繋がる.このようななかで被験者のリクルートから健康被害の対応に至るまでにCRCが果たすべき役割は非常に重要である.従来,CRCはSMO(治験施設支援機関)からの派遣などとして行われてきたが,コストが高いなどの問題が生じている.大学病院などの施設では院内でCRCを養成しはじめた.
現在,被験者に参加利点のある治験を目指すためCRCの役割は非常に期待されている.治験に参加する被験者は,併用薬の制限,来院・検査などのスケジュール遵守,有効性,安全性において質の高いデータを得るためには,ある程度の行動管理も不可欠という理解を求められる.被験者が感じる治験にかかわる不便さを可能な限りくみ取り,治験の進行をスムーズに行うためには,医師による丁寧な説明だけでなく,CRCによる支援の必要性,重要性が高まっている.また,治験依頼者との連携についても,医療機関,製薬企業の双方に質の向上と開発に要する期間の短縮化,データマネジメントの迅速化の効率を図るといわれている症例報告書の電子化システム(EDC:Electronic Data Capture)などが進められている.このEDCにより電子的にデータを管理,運営することにより,データの信頼性に関する問題点を明確にすることができるようになる.
本書は医療機関における治験のながれ(治験準備段階,治験開始前,治験中,治験終了)の中でCRCが取り組む業務とともに,それに伴う法的事項などについても事例を挙げて解説して頂いた.医療機関におけるCRCは,薬剤師,看護師,臨床検査技師,放射線技師ら様々な職種により運営されている.本書では薬剤師,看護師のCRCの立場からご執筆頂いた.各々の立場からのCRC業務への取り組み,連携を図るためには相互の業務について知ることが必須である.
本書がCRCを目指したい,あるいはCRC業務の確認をしたい薬剤師,看護師のガイドライン的な役割,さらに,薬学生,看護学生のテキストとなり,臨床において発生する情報を入手するための一助となることを期待する.
おわりに本書の編集,出版に多大の協力をいただいた(株)南山堂編集部の方々に心よりお礼を申し上げる.
2006年早春
NTT東日本関東病院 薬剤部長 折井孝男
京都大学医学部附属病院 教授・薬剤部長 乾 賢一
厚生労働省はわが国における治験の空洞化に危機感を抱き,「全国治験活性化3ヵ年計画」を打ち出した.具体的な内容としては「治験ネットワーク化の推進」「医療機関の治験実施体制の充実」「患者の治験参加を支援する施策」「企業における治験負担の軽減」「臨床研究全体の推進」が提言された.
わが国の治験を推進する上で,速さ,信頼性,経済性の3つのキーワードをあげることができる.裏を反せば「遅い」「質が悪い」「コストが嵩む」ということが問題点としてあげられる.被験者をリクルートし,説明してから治験に参加して頂くまでの時間が非常にかかるという問題もある.時間がかかるということはコストもかかるということである.コストがかかるということは,対応をスムーズに行うことができないことになり「遅い」という問題に繋がる.このようななかで被験者のリクルートから健康被害の対応に至るまでにCRCが果たすべき役割は非常に重要である.従来,CRCはSMO(治験施設支援機関)からの派遣などとして行われてきたが,コストが高いなどの問題が生じている.大学病院などの施設では院内でCRCを養成しはじめた.
現在,被験者に参加利点のある治験を目指すためCRCの役割は非常に期待されている.治験に参加する被験者は,併用薬の制限,来院・検査などのスケジュール遵守,有効性,安全性において質の高いデータを得るためには,ある程度の行動管理も不可欠という理解を求められる.被験者が感じる治験にかかわる不便さを可能な限りくみ取り,治験の進行をスムーズに行うためには,医師による丁寧な説明だけでなく,CRCによる支援の必要性,重要性が高まっている.また,治験依頼者との連携についても,医療機関,製薬企業の双方に質の向上と開発に要する期間の短縮化,データマネジメントの迅速化の効率を図るといわれている症例報告書の電子化システム(EDC:Electronic Data Capture)などが進められている.このEDCにより電子的にデータを管理,運営することにより,データの信頼性に関する問題点を明確にすることができるようになる.
本書は医療機関における治験のながれ(治験準備段階,治験開始前,治験中,治験終了)の中でCRCが取り組む業務とともに,それに伴う法的事項などについても事例を挙げて解説して頂いた.医療機関におけるCRCは,薬剤師,看護師,臨床検査技師,放射線技師ら様々な職種により運営されている.本書では薬剤師,看護師のCRCの立場からご執筆頂いた.各々の立場からのCRC業務への取り組み,連携を図るためには相互の業務について知ることが必須である.
本書がCRCを目指したい,あるいはCRC業務の確認をしたい薬剤師,看護師のガイドライン的な役割,さらに,薬学生,看護学生のテキストとなり,臨床において発生する情報を入手するための一助となることを期待する.
おわりに本書の編集,出版に多大の協力をいただいた(株)南山堂編集部の方々に心よりお礼を申し上げる.
2006年早春
NTT東日本関東病院 薬剤部長 折井孝男
京都大学医学部附属病院 教授・薬剤部長 乾 賢一
目次
CRCへのメッセージ
薬剤師CRC養成研修
全職種を対象とした初任者CRC養成研修
CRCに期待されるもの
治験コーディネータに期待すること
序章 治験の流れとCRC業務
第1章 治験の準備に伴う支援業務
治験コーディネータの位置づけ
治験内容のヒアリング
同意説明文書の作成
1.同意説明文書に記載する必要項目(省令GCP第51条)
2.同意説明文書作成時のポイント
3.同意説明文書のフォーマット
CRCにかかわる事務局業務
1.類の確認
2.治験審査委員会(IRB)への陪席
3.契約内容の確認
4.必須文書の保管
5.治験依頼者へ提出する文書の作成
治験スタッフのための教育・訓練
1.準備
2.病棟説明会,関連部署への説明会
スタートアップミーティング
Q&A
第2章 治験の実施に伴う支援業務
被験者に対する業務
1.インフォームド コンセント
2.治験開始時の対応
3.来院時の対応
4.負担軽減費(治験協力費)
5.治験中止・終了時の対応
Q&A
治験責任医師・治験分担医師に対する業務
1.被験者の選定支援
2.スクリーニング
3.インフォームド コンセント
4.治験開始時の対応
5.来院時の対応
6.治験中止・終了時の対応
7.症例報告書作成支援
8.治験依頼者,医療機関の長への提出書類作成補助
Q&A
他部門に対する業務
1.医事課(受付・会計)との連携
2.薬剤部との連携
3.検査部・放射線部との連携
4.看護部と連携
Q&A
治験薬管理業務
1.治験薬の受領・返却と保管
2.治験薬調剤・交付・回収,治験薬管理表の記載
3.服薬指導,薬剤調製など
Q&A
臨床検査などに関する業務
1.外注臨床検査
2.院内臨床検査
3.検査機器・提供品の管理
Q&A
治験データ管理に関する業務
1.スケジュール管理
2.データの収集と管理
3.逸脱防止の取り組み
4.症例報告書と原資料の整合性のチェック
Q&A
モニタリング・監への対応
1.モニタリング・監査の概要
2.モニタリング実施の手順
Q&A
有害事象発生時の対応
1.有害事象情報収集・被験者の治療
2.重篤な有害事象報告の手順
3.補 償
Q&A
治験依頼者(モニター)に対する業務
1.実施中の連絡・対応,情報の提供
2.必要書類の提出
3.モニタリング・監査への対応
Q&A
治験事務局業務
1.新たな安全性情報報告への対応
2.治験実施計画変更への対応
3.治験契約変への対応
4.継続審査への対応
Q&A
第3章 治験の終了に伴う支援業務
治験終了の報告書などの作成
1.被験者の治験終了の報告
2.治験依頼者への被験者情報の提供
3.有害事象の有無,転帰確認
4.追跡調査の必要性の確認
5.被験者のケア
6.治験依頼者とのスケジュール確認
7.治験終了報告書作成の支援
8.治験薬返却(回収)時の立会いと未返却分の確認
9.治験依頼者から貸与された機材,物品の返却
10.担当CRCによる般評価
記録の保存などに係る業務の支援
1.保存義務の規定
2.原資料の保存手順の確認
3.CRCの記録の保存
規制当局による調査の受け入れ
1.調査の準備
2.調査当日の対応
3.調査結果の報告
Q&A
第4章 治験業務と法的問題?Q&A
CRC業務関連
有害事象と補償・賠償問題
個人情報保護法やプライバシー保護問題
CRC業務に必要な法律全般
治験関連略語一覧
薬剤師CRC養成研修
全職種を対象とした初任者CRC養成研修
CRCに期待されるもの
治験コーディネータに期待すること
序章 治験の流れとCRC業務
第1章 治験の準備に伴う支援業務
治験コーディネータの位置づけ
治験内容のヒアリング
同意説明文書の作成
1.同意説明文書に記載する必要項目(省令GCP第51条)
2.同意説明文書作成時のポイント
3.同意説明文書のフォーマット
CRCにかかわる事務局業務
1.類の確認
2.治験審査委員会(IRB)への陪席
3.契約内容の確認
4.必須文書の保管
5.治験依頼者へ提出する文書の作成
治験スタッフのための教育・訓練
1.準備
2.病棟説明会,関連部署への説明会
スタートアップミーティング
Q&A
第2章 治験の実施に伴う支援業務
被験者に対する業務
1.インフォームド コンセント
2.治験開始時の対応
3.来院時の対応
4.負担軽減費(治験協力費)
5.治験中止・終了時の対応
Q&A
治験責任医師・治験分担医師に対する業務
1.被験者の選定支援
2.スクリーニング
3.インフォームド コンセント
4.治験開始時の対応
5.来院時の対応
6.治験中止・終了時の対応
7.症例報告書作成支援
8.治験依頼者,医療機関の長への提出書類作成補助
Q&A
他部門に対する業務
1.医事課(受付・会計)との連携
2.薬剤部との連携
3.検査部・放射線部との連携
4.看護部と連携
Q&A
治験薬管理業務
1.治験薬の受領・返却と保管
2.治験薬調剤・交付・回収,治験薬管理表の記載
3.服薬指導,薬剤調製など
Q&A
臨床検査などに関する業務
1.外注臨床検査
2.院内臨床検査
3.検査機器・提供品の管理
Q&A
治験データ管理に関する業務
1.スケジュール管理
2.データの収集と管理
3.逸脱防止の取り組み
4.症例報告書と原資料の整合性のチェック
Q&A
モニタリング・監への対応
1.モニタリング・監査の概要
2.モニタリング実施の手順
Q&A
有害事象発生時の対応
1.有害事象情報収集・被験者の治療
2.重篤な有害事象報告の手順
3.補 償
Q&A
治験依頼者(モニター)に対する業務
1.実施中の連絡・対応,情報の提供
2.必要書類の提出
3.モニタリング・監査への対応
Q&A
治験事務局業務
1.新たな安全性情報報告への対応
2.治験実施計画変更への対応
3.治験契約変への対応
4.継続審査への対応
Q&A
第3章 治験の終了に伴う支援業務
治験終了の報告書などの作成
1.被験者の治験終了の報告
2.治験依頼者への被験者情報の提供
3.有害事象の有無,転帰確認
4.追跡調査の必要性の確認
5.被験者のケア
6.治験依頼者とのスケジュール確認
7.治験終了報告書作成の支援
8.治験薬返却(回収)時の立会いと未返却分の確認
9.治験依頼者から貸与された機材,物品の返却
10.担当CRCによる般評価
記録の保存などに係る業務の支援
1.保存義務の規定
2.原資料の保存手順の確認
3.CRCの記録の保存
規制当局による調査の受け入れ
1.調査の準備
2.調査当日の対応
3.調査結果の報告
Q&A
第4章 治験業務と法的問題?Q&A
CRC業務関連
有害事象と補償・賠償問題
個人情報保護法やプライバシー保護問題
CRC業務に必要な法律全般
治験関連略語一覧