カテゴリー: 臨床薬学
周術期の薬学管理
改訂2版
一般社団法人 日本病院薬剤師会 監修
定価
4,180円(本体 3,800円 +税10%)
- B5判 317頁
- 2018年12月 発行
- ISBN 978-4-525-77082-2
周術期患者の薬学的管理を実践するためのテキスト
薬剤師による術前外来が浸透し,病棟で手術患者担当の薬剤師に限らず,手術患者のすべての時期において,ほかの医療スタッフ,病院薬剤師,薬局薬剤師が連携しながら,患者サポートをすることが期待されている.本書では薬学的視点を軸に,麻酔と手術の基礎知識,注意が必要な患者背景,術後モニタリングのポイントをわかりやすく解説.
- 監修の辞
- 目次
- 序文
監修の辞
患者中心のチーム医療が再認識される中,周術期における薬剤師の参画が広がっている.手術室への薬剤師参画による業務整理の結果,手術室運営は効率化され,手術件数増加,手術待ち患者さんの減少,病院経営の改善などに貢献できたとする報告もある.一方,チーム医療とは各職種が専門性を発揮することで結果として患者さんのためにより良い医療が行われる体制に繋がることが前提にある.
特に,手術患者の総合的なリスクを決めるのは基礎疾患の有無であり,手術患者を受け持つすべての薬剤師が,周術期の診療内容を十分に理解し,既往歴や薬歴についての十分な評価を行う必要がある.そして周術期の薬学的問題点についての周到な準備と周術期全体を見据えた薬剤師業務を通じて手術患者の安全性を高めることが求められている.
手術適応の拡大と基礎疾患を有するハイリスク症例の急増への対応は多職種の協働なくしては不可能であることから,日本麻酔科学会は,「周術期管理チーム認定制度」を始め,手術患者の安全性を高めるために,「周術期管理チームテキスト」の作成,周術期セミナーの実施により,薬剤師に周術期知識のレベルアップを求め支援している.本書はすでに周術期の医療に携わっている薬剤師が中心となって薬剤師の立場から周術期にどのように取り組むかについて書いたテキストであり,日本麻酔科学会の「周術期管理チームテキスト」とともに,薬剤師職能を高めるための必須の教科書である.今後,より多くの薬剤師の経験が反映されてさらに優れたものに改訂されることが期待される.
入院期間が短縮し,外来での術前管理が進み,今後益々,地域医療連携が求められる中,薬剤師が周術期について高い専門性と臨床能力をもち,入院から手術,退院までの薬物治療プロセス全体に対して責任を担うことで,医療の質が大きく飛躍できる可能性がある.特に術前,術中,術後の薬剤師の連携など施設規模に応じた業務展開について方策を検討しながら,地域薬局および薬局薬剤師との連携を含め医薬品すべての使用場面において薬剤師が責任を果たし,適切な薬物療法の管理に貢献することを心から期待する.
2018年秋
一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長
木平健治
特に,手術患者の総合的なリスクを決めるのは基礎疾患の有無であり,手術患者を受け持つすべての薬剤師が,周術期の診療内容を十分に理解し,既往歴や薬歴についての十分な評価を行う必要がある.そして周術期の薬学的問題点についての周到な準備と周術期全体を見据えた薬剤師業務を通じて手術患者の安全性を高めることが求められている.
手術適応の拡大と基礎疾患を有するハイリスク症例の急増への対応は多職種の協働なくしては不可能であることから,日本麻酔科学会は,「周術期管理チーム認定制度」を始め,手術患者の安全性を高めるために,「周術期管理チームテキスト」の作成,周術期セミナーの実施により,薬剤師に周術期知識のレベルアップを求め支援している.本書はすでに周術期の医療に携わっている薬剤師が中心となって薬剤師の立場から周術期にどのように取り組むかについて書いたテキストであり,日本麻酔科学会の「周術期管理チームテキスト」とともに,薬剤師職能を高めるための必須の教科書である.今後,より多くの薬剤師の経験が反映されてさらに優れたものに改訂されることが期待される.
入院期間が短縮し,外来での術前管理が進み,今後益々,地域医療連携が求められる中,薬剤師が周術期について高い専門性と臨床能力をもち,入院から手術,退院までの薬物治療プロセス全体に対して責任を担うことで,医療の質が大きく飛躍できる可能性がある.特に術前,術中,術後の薬剤師の連携など施設規模に応じた業務展開について方策を検討しながら,地域薬局および薬局薬剤師との連携を含め医薬品すべての使用場面において薬剤師が責任を果たし,適切な薬物療法の管理に貢献することを心から期待する.
2018年秋
一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長
木平健治
目次
第1章 手術前に確認すべき患者プロフィールと薬歴
1 アレルギー歴,麻酔歴,家族歴
2 小 児
3 肥 満
4 貧 血
5 血小板減少
6 腎機能障害
7 肝機能障害
8 急性上気道炎,喘息,COPD治療薬
9 循環器疾患治療薬
10 糖尿病治療薬
11 甲状腺機能異常治療薬
12 副腎機能異常治療薬
13 膠原病患者の管理
14 神経疾患治療薬
15 抗精神病薬
第2章 周術期の指示
1 絶飲食
2 前投薬
3 術前中止が必要な薬,継続が必要な薬
4 感染管理―抗菌薬―
5 静脈血栓塞栓症予防策
6 長期ステロイド薬服用患者へのステロイド補充
7 自己血輸血
8 術後回復強化プログラム─ERAS─
第3章 術後に多い患者からの訴えとモニタリング
1 創部痛(周術期疼痛管理)
2 リハビリテーション
3 悪心・嘔吐
4 咽頭痛,喉頭痛,嗄声,歯牙損傷
5 脊髄くも膜下麻酔後頭痛(硬膜穿刺後頭痛)
6 末梢神経障害と褥瘡
7 シバリング
8 手術後のせん妄
9 排尿障害・排便障害
10 硬膜外血腫と硬膜外膿瘍
第4章 はじめての手術室
1 手術室の環境
2 手術室で働く医療スタッフ
3 手術申し込みから退室までの流れ
4 一般的な全身麻酔手術の流れ
5 麻酔中に使用する薬剤の種類 ―全身麻酔と局所麻酔―
第5章 術式ごとの確認項目
1 脳腫瘍摘出術
2 経鼻的下垂体腫瘍摘出術
3 冠動脈バイパス移植術
4 食道悪性腫瘍手術
5 肺切除術
6 乳腺悪性腫瘍手術
7 胃切除術
8 膵頭部腫瘍切除術
9 肝切除術
10 直腸切除術
11 子宮筋腫摘出術
12 帝王切開術
13 経尿道的前立腺切除術
14 人工膝関節置換術
15 白内障手術
16 緑内障手術
17 修正型電気けいれん療法
第6章 便利ツール
1 手術と麻酔の略語
2 麻酔記録監査シート
3 筋弛緩薬比較表
4 麻薬比較表
5 輸液比較表
6 手術室汎用薬の配合変化表
7 局所麻酔時の鎮静薬の選択と投与方法
8 生体組織接着剤の種類と使用方法
9 手術室消毒薬一覧
10 色素製剤の種類と使い分け
11 止血剤,凝固剤などの種類と使い分け
12 出血量と出血性ショック時の使用製剤
13 麻酔管理に使用するモニター
14 麻酔導入の種類
15 手術室で使用する院内製剤
付録 根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト
mini lecture
・喫 煙
・白内障手術患者の薬剤服用歴─α1遮断薬─
・麻薬及び向精神薬取締法
・ホルマリンと特定化学物質障害予防規則
・術中輸液療法
・ボスミン希釈液,ボスミン添加局所麻酔薬
・直接動脈圧測定法とヘパリン加生理食塩液
・ビスホスホネート─挿管時操作による顎骨壊死─
・腹腔鏡下手術
・筋弛緩薬の拮抗(リバース)
・がん化学療法後の血管の脆弱性・浮腫への対応
・体温管理と輸液製剤の加温
・術中覚醒
・血管吻合時のパパベリンとオルプリノンの局所使用
・気化器の医療安全対策
・電気メスによる薬剤の引火
・ダビンチ
・灌流液
・静脈ラインに残存していたアルチバによる呼吸抑制
・局所麻酔薬レスキュー
1 アレルギー歴,麻酔歴,家族歴
2 小 児
3 肥 満
4 貧 血
5 血小板減少
6 腎機能障害
7 肝機能障害
8 急性上気道炎,喘息,COPD治療薬
9 循環器疾患治療薬
10 糖尿病治療薬
11 甲状腺機能異常治療薬
12 副腎機能異常治療薬
13 膠原病患者の管理
14 神経疾患治療薬
15 抗精神病薬
第2章 周術期の指示
1 絶飲食
2 前投薬
3 術前中止が必要な薬,継続が必要な薬
4 感染管理―抗菌薬―
5 静脈血栓塞栓症予防策
6 長期ステロイド薬服用患者へのステロイド補充
7 自己血輸血
8 術後回復強化プログラム─ERAS─
第3章 術後に多い患者からの訴えとモニタリング
1 創部痛(周術期疼痛管理)
2 リハビリテーション
3 悪心・嘔吐
4 咽頭痛,喉頭痛,嗄声,歯牙損傷
5 脊髄くも膜下麻酔後頭痛(硬膜穿刺後頭痛)
6 末梢神経障害と褥瘡
7 シバリング
8 手術後のせん妄
9 排尿障害・排便障害
10 硬膜外血腫と硬膜外膿瘍
第4章 はじめての手術室
1 手術室の環境
2 手術室で働く医療スタッフ
3 手術申し込みから退室までの流れ
4 一般的な全身麻酔手術の流れ
5 麻酔中に使用する薬剤の種類 ―全身麻酔と局所麻酔―
第5章 術式ごとの確認項目
1 脳腫瘍摘出術
2 経鼻的下垂体腫瘍摘出術
3 冠動脈バイパス移植術
4 食道悪性腫瘍手術
5 肺切除術
6 乳腺悪性腫瘍手術
7 胃切除術
8 膵頭部腫瘍切除術
9 肝切除術
10 直腸切除術
11 子宮筋腫摘出術
12 帝王切開術
13 経尿道的前立腺切除術
14 人工膝関節置換術
15 白内障手術
16 緑内障手術
17 修正型電気けいれん療法
第6章 便利ツール
1 手術と麻酔の略語
2 麻酔記録監査シート
3 筋弛緩薬比較表
4 麻薬比較表
5 輸液比較表
6 手術室汎用薬の配合変化表
7 局所麻酔時の鎮静薬の選択と投与方法
8 生体組織接着剤の種類と使用方法
9 手術室消毒薬一覧
10 色素製剤の種類と使い分け
11 止血剤,凝固剤などの種類と使い分け
12 出血量と出血性ショック時の使用製剤
13 麻酔管理に使用するモニター
14 麻酔導入の種類
15 手術室で使用する院内製剤
付録 根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト
mini lecture
・喫 煙
・白内障手術患者の薬剤服用歴─α1遮断薬─
・麻薬及び向精神薬取締法
・ホルマリンと特定化学物質障害予防規則
・術中輸液療法
・ボスミン希釈液,ボスミン添加局所麻酔薬
・直接動脈圧測定法とヘパリン加生理食塩液
・ビスホスホネート─挿管時操作による顎骨壊死─
・腹腔鏡下手術
・筋弛緩薬の拮抗(リバース)
・がん化学療法後の血管の脆弱性・浮腫への対応
・体温管理と輸液製剤の加温
・術中覚醒
・血管吻合時のパパベリンとオルプリノンの局所使用
・気化器の医療安全対策
・電気メスによる薬剤の引火
・ダビンチ
・灌流液
・静脈ラインに残存していたアルチバによる呼吸抑制
・局所麻酔薬レスキュー
序文
日本麻酔科学会は,2001年度厚生労働省関連学会医薬品等適正使用推進試行的事業契約により,2000年初頭,麻酔指導病院 804 施設を対象として,現在臨床で最も使用頻度が高いにもかかわらず,問題視されている薬剤および使用方法に関する項目につき「麻酔薬および関連薬品等の適正使用に関するアンケート調査」を実施した.2005年には,厚生労働科学研究「医薬品の取り違え防止の視点に立った薬剤師業務のあり方に関する研究:医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業報告書」をもとに,日本病院薬剤師会薬剤業務委員会より,「薬剤師による手術部の薬剤管理業務手順(案)」が発出された.2000年代前半の周術期での薬剤師業務は,まさにモノの管理のサプライチェーンマネジメントであり,他団体より強く要請を受けてきた.
2007年,日本麻酔科学会では「周術期管理チームプロジェクト」を提唱し,周術期医療での薬剤師の積極的な関与を推奨している.さらに2010年には医師以外の医療スタッフを対象に「周術期管理チームテキスト」を刊行し,本腰を入れてチーム医療の推進に取り組んでいる.また,2009年8?12月までに8回にわたり「チーム医療の推進に関する検討会」(厚生労働省医政局)が行われてきた.
このような背景のもと2010年8月,日本病院薬剤師会にて「周術期プロジェクトワーキンググループ」が発足するなど,2010年代に入り,薬剤師によるヒトへの関与,貢献が始まった.周術期での薬剤師業務について教科書が存在しない状況であったため,日本病院薬剤師会監修のもと「ベッドサイドの臨床薬学周術期の薬学管理」を2012年4月に刊行した.また2014年6月?2017年6月には日本病院薬剤師会学術委員会の学術小委員会で調査研究を行い,「根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト」を報告した.
一方で,日本病院薬剤師会総務課による「病院薬剤部門の現状調査」結果からもモノとヒトの管理は定着推進されてきたが,情報の管理は不十分な状態であることが示された.さらに,世の中はAI,機械化,再生医療,単回使用医療機器(single-use device:SUD),医療の効率化推進とともに医療職の働き方見直しによる職種間でのタスクシフティング,タスクシェアリングが推進されている.手術室においてはダビンチ,自動麻酔記録装置から薬物血中濃度予測機能,再生医療用iPS細胞ストックによる再生医療,使用済みSUDを再利用するための再製造など,取り組むべき課題は山積みである.
初版2012年から早6年が経過し,本書を単に知識とするのではなく,本書をもって手術室さらには入退院センター等での術前術後管理への参画,歯科との連携(周術期口腔機能管理,計画策定)が評価されるよう薬剤師は地域へ出向いていただきたい.そのための薬剤師のバイブルになれば幸いである.
2018年秋
医療法人鉄蕉会亀田総合病院 薬剤部長
一般社団法人 日本病院薬剤師会2014/2015/2016 学術第8・5・3小委員会 委員長
舟越亮寛
2007年,日本麻酔科学会では「周術期管理チームプロジェクト」を提唱し,周術期医療での薬剤師の積極的な関与を推奨している.さらに2010年には医師以外の医療スタッフを対象に「周術期管理チームテキスト」を刊行し,本腰を入れてチーム医療の推進に取り組んでいる.また,2009年8?12月までに8回にわたり「チーム医療の推進に関する検討会」(厚生労働省医政局)が行われてきた.
このような背景のもと2010年8月,日本病院薬剤師会にて「周術期プロジェクトワーキンググループ」が発足するなど,2010年代に入り,薬剤師によるヒトへの関与,貢献が始まった.周術期での薬剤師業務について教科書が存在しない状況であったため,日本病院薬剤師会監修のもと「ベッドサイドの臨床薬学周術期の薬学管理」を2012年4月に刊行した.また2014年6月?2017年6月には日本病院薬剤師会学術委員会の学術小委員会で調査研究を行い,「根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト」を報告した.
一方で,日本病院薬剤師会総務課による「病院薬剤部門の現状調査」結果からもモノとヒトの管理は定着推進されてきたが,情報の管理は不十分な状態であることが示された.さらに,世の中はAI,機械化,再生医療,単回使用医療機器(single-use device:SUD),医療の効率化推進とともに医療職の働き方見直しによる職種間でのタスクシフティング,タスクシェアリングが推進されている.手術室においてはダビンチ,自動麻酔記録装置から薬物血中濃度予測機能,再生医療用iPS細胞ストックによる再生医療,使用済みSUDを再利用するための再製造など,取り組むべき課題は山積みである.
初版2012年から早6年が経過し,本書を単に知識とするのではなく,本書をもって手術室さらには入退院センター等での術前術後管理への参画,歯科との連携(周術期口腔機能管理,計画策定)が評価されるよう薬剤師は地域へ出向いていただきたい.そのための薬剤師のバイブルになれば幸いである.
2018年秋
医療法人鉄蕉会亀田総合病院 薬剤部長
一般社団法人 日本病院薬剤師会2014/2015/2016 学術第8・5・3小委員会 委員長
舟越亮寛