カテゴリー: 臨床薬学
周術期の薬学管理
改訂3版
一般社団法人 日本病院薬剤師会 監修
定価
4,180円(本体 3,800円 +税10%)
- B5判 308頁
- 2024年11月 発行
- ISBN 978-4-525-77083-9
周術期患者の薬学的管理を実践するためのテキスト
周術期薬学管理を担当する薬剤師の必携書,6年ぶりの改訂!
2022年度診療報酬改定では,薬剤師による周術期薬剤管理を促進するために「周術期薬剤管理加算」や「術後疼痛管理チーム加算」の項目が設けられた.また,医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアが推進されており,周術期における薬剤師の担う役割はますます大きくなっている.このような背景変化や治療の発展をふまえ,「現在の周術期の薬学管理」に必要な内容にアップデートすべく改訂を行った.
術前の対応から術中業務の実際,そして術後フォローアップまで,周術期全体にわたって必要な知識をカバーした一冊となっている.
- 監修の辞
- 序文
- 目次
監修の辞
複雑かつ多様化した手術の安全な遂行において,周術期管理における薬剤師の役割や責任はますます重大になっています.このような状況の下,「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について(医政発0930第16号)」の通知では,薬剤師の重点項目の一つが「周術期における薬学的管理等」とされ,令和4 年度診療報酬改定においては,薬剤師による周術期の薬物療法に係る医療安全に関する取組を評価する「周術期薬剤管理加算」が新設されました.さらに質の高い術後疼痛管理を推進する観点から,「術後疼痛管理チーム加算」が新設され,まさに,周術期薬剤師業務は大きな転機を迎えています.
日本病院薬剤師会では,周術期医療における薬剤師業務の標準化を目的として,2016年に「根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト(チェックリスト)」を作成しました.その後,前述の「周術期薬
剤管理加算」の算定要件に「周術期薬剤管理の実施に当たっては,チェックリスト等を参考にすること」と明文化されたことをうけ,2022年度版として更新しました.また,周術期薬剤業務を円滑に遂行するためのガイドとして,「周術期薬剤業務の進め方」と「周術期薬剤業務事例集」を公開しています.これらをきっかけに周術期薬剤業務に取り掛かる施設が徐々に増え,その成果が報告されています.
一方で,術前,術中,術後を通して薬剤師が関与すべきことは多岐にわたるため,経験を積むにつれ,薬剤師の職能を発揮すべき場面が見えてくる一方で,医薬品情報は不足し,周術期特有の薬の適正使用に関する詳細な資料を望む多くの声が臨床現場からあがりました.本書はさまざまな機能の医療機関で周術期に携わる薬剤師が,各施設での活動を通して気づいた周術期の薬学的問題点を取り上げ,医薬品情報を整理した書籍であり,2012年に初版を作成して以来,多くの薬剤師に活用されています.
本改訂版は,診療報酬を反映した周術期薬物療法の適正化に関する実践の資料が豊富に盛り込まれており,加えて各種学会のガイドラインなどの最新情報が網羅された内容になっていることから,まさに周術期に携わるすべての薬剤師が必携するにふさわしい書籍となっています.本書が現場で活用され,充実した周術期薬物療法の一助となることを期待しています.
2024年秋
一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長
武田泰生
日本病院薬剤師会では,周術期医療における薬剤師業務の標準化を目的として,2016年に「根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト(チェックリスト)」を作成しました.その後,前述の「周術期薬
剤管理加算」の算定要件に「周術期薬剤管理の実施に当たっては,チェックリスト等を参考にすること」と明文化されたことをうけ,2022年度版として更新しました.また,周術期薬剤業務を円滑に遂行するためのガイドとして,「周術期薬剤業務の進め方」と「周術期薬剤業務事例集」を公開しています.これらをきっかけに周術期薬剤業務に取り掛かる施設が徐々に増え,その成果が報告されています.
一方で,術前,術中,術後を通して薬剤師が関与すべきことは多岐にわたるため,経験を積むにつれ,薬剤師の職能を発揮すべき場面が見えてくる一方で,医薬品情報は不足し,周術期特有の薬の適正使用に関する詳細な資料を望む多くの声が臨床現場からあがりました.本書はさまざまな機能の医療機関で周術期に携わる薬剤師が,各施設での活動を通して気づいた周術期の薬学的問題点を取り上げ,医薬品情報を整理した書籍であり,2012年に初版を作成して以来,多くの薬剤師に活用されています.
本改訂版は,診療報酬を反映した周術期薬物療法の適正化に関する実践の資料が豊富に盛り込まれており,加えて各種学会のガイドラインなどの最新情報が網羅された内容になっていることから,まさに周術期に携わるすべての薬剤師が必携するにふさわしい書籍となっています.本書が現場で活用され,充実した周術期薬物療法の一助となることを期待しています.
2024年秋
一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長
武田泰生
序文
周術期の薬剤師業務を振り返ると,日本麻酔科学会は2001年度厚生労働省関連学会医薬品等適正使用推進試行的事業契約により,2000年初頭に麻酔指導病院804施設を対象として,「麻酔薬および関連薬品等の適正使用に関するアンケート調査」を実施した.2005年には,厚生労働科学研究医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業「医薬品の取り違え防止の視点に立った薬剤師業務のあり方に関する研究」をもとに,日本病院薬剤師会薬剤業務委員会より,「薬剤師による手術部の薬剤管理業務手順(案)」が公表された.2007年,日本麻酔科学会では「周術期管理チームプロジェクト」を提唱し,日本麻酔科学会で医師以外の医療スタッフを対象に『周術期管理チームテキスト』を刊行し,2009年8~12月までに8回にわたり「チーム医療の推進に関する検討会」(厚生労働省医政局)により本腰を入れて周術期医療での薬剤師の積極的な関与が推奨されてきた.2000年代前半の周術期における薬剤師業務は,まさにモノの管理のサプライチェーンマネジメントの視点で他団体より強く要請を受けてきた.
このような背景のもと2010年8月,日本病院薬剤師会にて「周術期プロジェクトワーキンググループ」が発足するなど,2010年代に入り,薬剤師によるヒトへの関与,貢献が始まった.周術期での薬剤師業務について教科書が存在しない状況であったため,日本病院薬剤師会監修のもと2012年4月に『ベッドサイドの臨床薬学 周術期の薬学管理』,2018年12月に改訂2版を刊行した.
一方で,日本病院薬剤師会総務課により「病院薬剤部部門の現状調査」結果からもモノとヒトの管理は定着推進されてきたが,情報の管理は不十分な状態であることが示された.そのため2014~2017年には日本病院薬剤師会学術委員会の学術小委員会で調査研究を行い,「根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト」を公表し,2021~2024年には周術期薬剤管理加算の新設時の算定要件に本チェックリストを参考にする旨が明記され,改訂2022年度版を公表し,医薬品の供給管理にとどまらず薬剤師としての薬学管理の充実を後押ししてきた.
2023年6月8日に報告された厚生労働省保険局医療課令和4年度調査結果(速報)概要において,病院薬剤師確保が優先される現況にあるが,周術期の薬剤師業務の展望として,自家麻酔,区域麻酔への関与ならびに緊急時の対応に対する薬剤師の有用性を明らかにし,かつ術後感染(surgical site infection:SSI)予防目的の抗菌薬投与実施率の向上からSSI発生率の軽減のように,周術期医療全体のより質の高い患者安全,薬物療法の向上が期待されている.
改訂2版の発行から早6年が経過し,本書を単に知識にするのではなく,本書をもって手術室さらには入退院支援センター等での術前術後管理への参画,歯科との連携が評価されるよう薬剤師は地域へ出向いていただきたい.そのための薬剤師のバイブルになれば幸いである.
2024年秋
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 薬剤部長
一般社団法人 日本病院薬剤師会2014/2015/2016 学術第8・5・3小委員会委員長
2021/2022/2023 学術第7・5・2小委員会委員長
舟越亮寛
このような背景のもと2010年8月,日本病院薬剤師会にて「周術期プロジェクトワーキンググループ」が発足するなど,2010年代に入り,薬剤師によるヒトへの関与,貢献が始まった.周術期での薬剤師業務について教科書が存在しない状況であったため,日本病院薬剤師会監修のもと2012年4月に『ベッドサイドの臨床薬学 周術期の薬学管理』,2018年12月に改訂2版を刊行した.
一方で,日本病院薬剤師会総務課により「病院薬剤部部門の現状調査」結果からもモノとヒトの管理は定着推進されてきたが,情報の管理は不十分な状態であることが示された.そのため2014~2017年には日本病院薬剤師会学術委員会の学術小委員会で調査研究を行い,「根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト」を公表し,2021~2024年には周術期薬剤管理加算の新設時の算定要件に本チェックリストを参考にする旨が明記され,改訂2022年度版を公表し,医薬品の供給管理にとどまらず薬剤師としての薬学管理の充実を後押ししてきた.
2023年6月8日に報告された厚生労働省保険局医療課令和4年度調査結果(速報)概要において,病院薬剤師確保が優先される現況にあるが,周術期の薬剤師業務の展望として,自家麻酔,区域麻酔への関与ならびに緊急時の対応に対する薬剤師の有用性を明らかにし,かつ術後感染(surgical site infection:SSI)予防目的の抗菌薬投与実施率の向上からSSI発生率の軽減のように,周術期医療全体のより質の高い患者安全,薬物療法の向上が期待されている.
改訂2版の発行から早6年が経過し,本書を単に知識にするのではなく,本書をもって手術室さらには入退院支援センター等での術前術後管理への参画,歯科との連携が評価されるよう薬剤師は地域へ出向いていただきたい.そのための薬剤師のバイブルになれば幸いである.
2024年秋
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 薬剤部長
一般社団法人 日本病院薬剤師会2014/2015/2016 学術第8・5・3小委員会委員長
2021/2022/2023 学術第7・5・2小委員会委員長
舟越亮寛
目次
第1章 手術前に確認すべき患者プロフィールと薬歴
1 アレルギー歴,麻酔歴,家族歴
2 小 児
3 肥 満
4 貧 血
5 血小板減少
6 腎機能障害
7 肝機能障害
8 急性上気道炎,喘息,COPD治療薬
9 循環器疾患治療薬
10 糖尿病治療薬
11 甲状腺機能異常治療薬
12 副腎機能異常治療薬
13 膠原病患者の管理
14 神経疾患治療薬
15 抗精神病薬
第2章 周術期の指示
1 絶飲食
2 前投薬
3 術前中止が必要な薬,継続が必要な薬
4 感染管理─抗菌薬─
5 静脈血栓塞栓症予防策
6 長期ステロイド薬服用患者へのステロイド補充
7 自己血輸血
8 術後回復能力強化プログラム─ERAS─
第3章 術後に多い患者からの訴えとモニタリング
1 創部痛(周術期疼痛管理)
2 硬膜穿刺後頭痛
3 硬膜外血腫と硬膜外膿瘍
4 悪心・嘔吐
5 咽頭痛,喉頭痛,嗄声,歯牙損傷
6 シバリング
7 手術後のせん妄
8 排尿障害・排便障害
9 末梢神経障害と褥瘡
10 リハビリテーション
第4章 はじめての手術室
1 手術室の環境
2 手術室で働く医療スタッフ
3 手術申し込みから退室までの流れ
4 一般的な全身麻酔手術の流れ
5 麻酔中に使用する薬剤の種類─全身麻酔と局所麻酔─
6 薬品管理
第5章 術式別 手術の流れ
1 脳腫瘍摘出術
2 経鼻的下垂体腫瘍摘出術
3 冠動脈バイパス移植術
4 食道悪性腫瘍手術
5 肺切除術
6 乳腺悪性腫瘍手術
7 胃切除術
8 膵頭部腫瘍切除術
9 肝切除術
10 直腸切除術
11 帝王切開術
12 経尿道的前立腺切除術
13 人工膝関節置換術
14 修正型電気けいれん療法
15 眼科手術
第6章 便利ツール
1 手術と麻酔の略語
2 筋弛緩薬比較表
3 麻薬比較表
4 輸液比較表
5 手術室汎用薬の配合変化表
6 局所麻酔時の鎮静薬の選択と投与方法
7 生体組織接着剤の種類と使用方法
8 手術室消毒薬一覧
9 色素製剤の種類と使い分け
10 止血剤,凝固剤などの種類と使い分け
11 出血量と出血性ショック時の使用製剤
12 麻酔導入の種類
13 手術室で使用する院内製剤
付録 根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト(2022年度版)
mini lecture
喫 煙
白内障手術患者の薬剤服用歴─α1遮断薬─
注射薬配合変化試験における基本的な知識とピットフォール
ホルマリンと特定化学物質障害予防規則
直接動脈圧測定法とヘパリン加生理食塩液
骨吸収抑制薬に関連する顎骨壊死・顎骨骨髄炎
筋弛緩薬の拮抗(リバース)
体温管理と輸液製剤の加温
血管吻合時のパパベリンとオルプリノンの局所使用
術中覚醒
電気メスによる薬剤の引火
気化器の医療安全対策
灌流液
ボスミン希釈液,ボスミン添加局所麻酔薬
腹腔鏡下手術
静脈ラインに残存していたレミフェンタニルによる呼吸抑制
局所麻酔薬レスキュー
手術支援ロボット
1 アレルギー歴,麻酔歴,家族歴
2 小 児
3 肥 満
4 貧 血
5 血小板減少
6 腎機能障害
7 肝機能障害
8 急性上気道炎,喘息,COPD治療薬
9 循環器疾患治療薬
10 糖尿病治療薬
11 甲状腺機能異常治療薬
12 副腎機能異常治療薬
13 膠原病患者の管理
14 神経疾患治療薬
15 抗精神病薬
第2章 周術期の指示
1 絶飲食
2 前投薬
3 術前中止が必要な薬,継続が必要な薬
4 感染管理─抗菌薬─
5 静脈血栓塞栓症予防策
6 長期ステロイド薬服用患者へのステロイド補充
7 自己血輸血
8 術後回復能力強化プログラム─ERAS─
第3章 術後に多い患者からの訴えとモニタリング
1 創部痛(周術期疼痛管理)
2 硬膜穿刺後頭痛
3 硬膜外血腫と硬膜外膿瘍
4 悪心・嘔吐
5 咽頭痛,喉頭痛,嗄声,歯牙損傷
6 シバリング
7 手術後のせん妄
8 排尿障害・排便障害
9 末梢神経障害と褥瘡
10 リハビリテーション
第4章 はじめての手術室
1 手術室の環境
2 手術室で働く医療スタッフ
3 手術申し込みから退室までの流れ
4 一般的な全身麻酔手術の流れ
5 麻酔中に使用する薬剤の種類─全身麻酔と局所麻酔─
6 薬品管理
第5章 術式別 手術の流れ
1 脳腫瘍摘出術
2 経鼻的下垂体腫瘍摘出術
3 冠動脈バイパス移植術
4 食道悪性腫瘍手術
5 肺切除術
6 乳腺悪性腫瘍手術
7 胃切除術
8 膵頭部腫瘍切除術
9 肝切除術
10 直腸切除術
11 帝王切開術
12 経尿道的前立腺切除術
13 人工膝関節置換術
14 修正型電気けいれん療法
15 眼科手術
第6章 便利ツール
1 手術と麻酔の略語
2 筋弛緩薬比較表
3 麻薬比較表
4 輸液比較表
5 手術室汎用薬の配合変化表
6 局所麻酔時の鎮静薬の選択と投与方法
7 生体組織接着剤の種類と使用方法
8 手術室消毒薬一覧
9 色素製剤の種類と使い分け
10 止血剤,凝固剤などの種類と使い分け
11 出血量と出血性ショック時の使用製剤
12 麻酔導入の種類
13 手術室で使用する院内製剤
付録 根拠に基づいた周術期患者への薬学的管理ならびに手術室における薬剤師業務のチェックリスト(2022年度版)
mini lecture
喫 煙
白内障手術患者の薬剤服用歴─α1遮断薬─
注射薬配合変化試験における基本的な知識とピットフォール
ホルマリンと特定化学物質障害予防規則
直接動脈圧測定法とヘパリン加生理食塩液
骨吸収抑制薬に関連する顎骨壊死・顎骨骨髄炎
筋弛緩薬の拮抗(リバース)
体温管理と輸液製剤の加温
血管吻合時のパパベリンとオルプリノンの局所使用
術中覚醒
電気メスによる薬剤の引火
気化器の医療安全対策
灌流液
ボスミン希釈液,ボスミン添加局所麻酔薬
腹腔鏡下手術
静脈ラインに残存していたレミフェンタニルによる呼吸抑制
局所麻酔薬レスキュー
手術支援ロボット