カテゴリー: 臨床薬学
ミスよけ調剤 60,000枚の処方箋から導くエラー対策
1版
昭和大学 准教授 百 賢二 編著
明治薬科大学 准教授 安 武夫 編著
東京都立墨東病院薬剤科 科長 城田幹生 編著
定価
3,520円(本体 3,200円 +税10%)
- B5判 221頁
- 2023年8月 発行
- ISBN 978-4-525-77871-2
調剤エラーを予見して避けるために!
窓口の患者対応,疑義照会,処方箋の受付,調剤など……薬剤師の業務は多岐にわたるため,少しの油断でも調剤エラーに繋がりやすい.そこで本書では,どんな場面で,どんな薬剤において,どのような状況下でエラーが起こったのか,実際の約60,000枚の処方箋をもとにまとめた.日々の業務において調剤エラーを予見し回避する力を身に付けるためにおすすめの一冊.
- 序文
- 目次
序文
本書を手に取られた方は,「ミスよけ調剤」というタイトルから,おそらく医療安全,調剤,薬剤師教育など,さまざまなキーワードを想起しているのではないだろうか.
筆者は,調剤の現場で長く勤務していたかというと決してそうではなく,むしろ自身の薬剤師キャリアのなかでほんの一握りの時間である.しかし,自分がこれまで薬剤師としてどんなことをしていたかと思い返すと,やはり調剤室で処方箋を手に取って走り回っていた姿が思い起こされる.調剤は,目の前で薬を待っている患者がいることも多く,ある意味時間との勝負のようなところもある.当然,「じっくり」と,ほかの仕事をしないで調剤できれば間違いは起きないのかもしれない.しかし,臨床においてはそんなことはなく,窓口の患者対応,処方箋の受付,疑義照会,調剤など,頭と体を動かしながら正確かつ迅速に複数の行為を行う必要がある.1つのことならば集中すればミスもしないで済むのかもしれないが,そうもいかない.そんななか,新人薬剤師がミスをし,それを指摘する.これをくり返すことも教育であるが,それならばどんなシーンで,どんな薬剤を,どんな薬剤師が,どんなエラーをするのか,いつか明らかにしたいと考えていた.
共同編著者の安 武夫先生(明治薬科大学),城田幹生先生(東京都立墨東病院)と出会い,「薬剤師が調剤室で飛び回っているなか,どんなエラーをして,これをどのように後世に伝えるべきか」議論を重ね,エラー事例を周知することに行き着いた.最終的には有志の薬剤師30人以上による,東京都内20施設の薬剤部門において1週間にわたり,調剤エラーについて集計した.分析した処方箋は予備調査などを含めると約60,000枚にのぼる.実際にこの成果は学術論文として国際誌へ投稿し発表に至っている.しかし,われわれ薬剤師の取り組みを社会へ還元したいという思いは,本研究に関わったすべての薬剤師の願いであり,株式会社南山堂の全面的なご協力のもと,本書の発刊に至った.
なお,本書の執筆にあたり,分析した処方箋から実際のエラーをモディファイした架空の症例を提示し,執筆者の経験に基づいて書くことで,読者の皆さんにエラーとその結果がリアルに伝わるように心がけた.
本書が,調剤を通じた医療安全・薬剤師の臨床業務の発展・薬剤師教育の一助となれば幸いである.
2023年6月吉日
昭和大学 統括薬剤部/薬学部 病院薬剤学講座
百 賢二
筆者は,調剤の現場で長く勤務していたかというと決してそうではなく,むしろ自身の薬剤師キャリアのなかでほんの一握りの時間である.しかし,自分がこれまで薬剤師としてどんなことをしていたかと思い返すと,やはり調剤室で処方箋を手に取って走り回っていた姿が思い起こされる.調剤は,目の前で薬を待っている患者がいることも多く,ある意味時間との勝負のようなところもある.当然,「じっくり」と,ほかの仕事をしないで調剤できれば間違いは起きないのかもしれない.しかし,臨床においてはそんなことはなく,窓口の患者対応,処方箋の受付,疑義照会,調剤など,頭と体を動かしながら正確かつ迅速に複数の行為を行う必要がある.1つのことならば集中すればミスもしないで済むのかもしれないが,そうもいかない.そんななか,新人薬剤師がミスをし,それを指摘する.これをくり返すことも教育であるが,それならばどんなシーンで,どんな薬剤を,どんな薬剤師が,どんなエラーをするのか,いつか明らかにしたいと考えていた.
共同編著者の安 武夫先生(明治薬科大学),城田幹生先生(東京都立墨東病院)と出会い,「薬剤師が調剤室で飛び回っているなか,どんなエラーをして,これをどのように後世に伝えるべきか」議論を重ね,エラー事例を周知することに行き着いた.最終的には有志の薬剤師30人以上による,東京都内20施設の薬剤部門において1週間にわたり,調剤エラーについて集計した.分析した処方箋は予備調査などを含めると約60,000枚にのぼる.実際にこの成果は学術論文として国際誌へ投稿し発表に至っている.しかし,われわれ薬剤師の取り組みを社会へ還元したいという思いは,本研究に関わったすべての薬剤師の願いであり,株式会社南山堂の全面的なご協力のもと,本書の発刊に至った.
なお,本書の執筆にあたり,分析した処方箋から実際のエラーをモディファイした架空の症例を提示し,執筆者の経験に基づいて書くことで,読者の皆さんにエラーとその結果がリアルに伝わるように心がけた.
本書が,調剤を通じた医療安全・薬剤師の臨床業務の発展・薬剤師教育の一助となれば幸いである.
2023年6月吉日
昭和大学 統括薬剤部/薬学部 病院薬剤学講座
百 賢二
目次
Ⅰ 総 論
1 薬局・薬剤部門内での医療安全
2 調剤の流れ
3 もし「調剤内規」がなかったら?
4 「調剤エラー」傾向と対策
Ⅱ 各 論
A 内服計数の調剤エラー対策
1 錠剤の外観類似
2 包装形態が特殊な経口剤
3 一包化におけるエラー
4 用法が特殊な製剤
5 半錠調剤
6 計数調剤で間違えやすい薬剤(散薬分包品)
7 合剤から単味剤への変更
8 経口剤の名称類似
9 漢方エキス剤の外観類似
10 1日用量と合計調剤量
B 内服計量の調剤エラー対策
11 計量調剤で間違いやすい薬剤
12 錠剤の粉砕調剤
13 複雑なプロセスの調剤
C 外用剤の調剤エラー対策
14 外用剤の外観類似
15 包装形態が特殊な外用剤
16 外用剤の名称類似
17 溶解液が付属している薬剤
18 1回用量と1日用量
19 類似薬効製剤
D 製剤特性に起因する調剤エラー対策
20 粉末化してよい薬剤,いけない薬剤
21 多成分で構成される薬剤
E 患者背景・情報に起因する調剤エラー対策
22 適応疾患の確認が必要な薬剤
23 前回処方を確認すべき薬剤
24 同種同効薬の重複投与
25 検査値を確認すべき薬剤
26 TDMが必要な薬剤
27 患者のアレルギー情報
28 クリニカルパスに連動した処方
29 薬袋やラベルシールのクロス
F 服薬指導に起因する調剤エラー対策
30 服薬指導時の説明漏れ
31 服用しづらい,1回服用量が特殊な薬剤
32 調剤時に専用資材が必要な薬剤
G その他の調剤エラー対策
33 同一ブランドの名称類似
34 薬機法または内規に基づき帳簿へ記載する薬剤
35 薬品マスタに関連したエラー
36 重複調剤
37 処方オーダー時のエラーに対する疑義照会漏れ
Ⅲ 過去,現在,そして未来へ
1 調恨記 いたらぬが故の失敗談,人には言えない調剤師の記憶
2 手書き処方箋は,リスクが満載
3 読み取る力,癖字からバーコードへ
4 調剤今昔物語
5 散剤調剤―いのちがけ
6 薬剤師と想像力
7 夢の途中
1 薬局・薬剤部門内での医療安全
2 調剤の流れ
3 もし「調剤内規」がなかったら?
4 「調剤エラー」傾向と対策
Ⅱ 各 論
A 内服計数の調剤エラー対策
1 錠剤の外観類似
2 包装形態が特殊な経口剤
3 一包化におけるエラー
4 用法が特殊な製剤
5 半錠調剤
6 計数調剤で間違えやすい薬剤(散薬分包品)
7 合剤から単味剤への変更
8 経口剤の名称類似
9 漢方エキス剤の外観類似
10 1日用量と合計調剤量
B 内服計量の調剤エラー対策
11 計量調剤で間違いやすい薬剤
12 錠剤の粉砕調剤
13 複雑なプロセスの調剤
C 外用剤の調剤エラー対策
14 外用剤の外観類似
15 包装形態が特殊な外用剤
16 外用剤の名称類似
17 溶解液が付属している薬剤
18 1回用量と1日用量
19 類似薬効製剤
D 製剤特性に起因する調剤エラー対策
20 粉末化してよい薬剤,いけない薬剤
21 多成分で構成される薬剤
E 患者背景・情報に起因する調剤エラー対策
22 適応疾患の確認が必要な薬剤
23 前回処方を確認すべき薬剤
24 同種同効薬の重複投与
25 検査値を確認すべき薬剤
26 TDMが必要な薬剤
27 患者のアレルギー情報
28 クリニカルパスに連動した処方
29 薬袋やラベルシールのクロス
F 服薬指導に起因する調剤エラー対策
30 服薬指導時の説明漏れ
31 服用しづらい,1回服用量が特殊な薬剤
32 調剤時に専用資材が必要な薬剤
G その他の調剤エラー対策
33 同一ブランドの名称類似
34 薬機法または内規に基づき帳簿へ記載する薬剤
35 薬品マスタに関連したエラー
36 重複調剤
37 処方オーダー時のエラーに対する疑義照会漏れ
Ⅲ 過去,現在,そして未来へ
1 調恨記 いたらぬが故の失敗談,人には言えない調剤師の記憶
2 手書き処方箋は,リスクが満載
3 読み取る力,癖字からバーコードへ
4 調剤今昔物語
5 散剤調剤―いのちがけ
6 薬剤師と想像力
7 夢の途中