カテゴリー: 臨床薬学
薬剤師、在宅へ行く。
1版
北河修治 編集代表
岩川精吾 編
髙尾宜久 編
長嶺幸子 編
定価
2,420円(本体 2,200円 +税10%)
- B5判 148頁
- 2022年8月 発行
- ISBN 978-4-525-78591-8
45の事例と学ぶ 在宅デビューの“お守り”BOOK
在宅医療のニーズが高まるなか,薬剤師による薬学管理もチーム医療において求められています.しかし,在宅医療を始めることに不安や悩みをもっている薬剤師は少なくありません.本書は,患者宅への訪問から薬剤管理,患者サポート,看取りへの備えなど,在宅医療だからこそ起こるさまざまな課題に対し,どのように患者と向き合い解決できるのか,現場の薬剤師が経験してきた45の事例をまじえて解説しました.また,医療保険制度や介護保険制度、居宅療養管理指導の基礎知識についてもわかりやすく解説しています.「在宅デビューしたけど不安・・・」のお守りになる1冊です!
- 序文
- 目次
- 事例一覧
- 書評
序文
高齢化の進展に伴い,医療ニーズが慢性疾患を中心とするものに変化してきている.このような医療環境の変化に伴い,住み慣れた地域の中で患者や高齢者の生活を支える医療・介護の連携した「地域包括ケアシステム」の構築が,団塊の世代が75歳を迎える2025年を目途に推進されている.在宅医療において薬剤師もチームの一員として多職種間で協働し,専門性を生かした質が高く安心・安全な医療を提供することが求められている.
しかし,在宅医療をはじめ地域医療において薬剤師が十分に活用されていない現状がある.その背景には,多職種間での連携不足が考えられる.このような社会情勢を受けて神戸薬科大学エクステンションセンターでは,2012年から地域医療に貢献できる実践力のある薬剤師の育成を目的に,薬物治療のリスクマネジャーとしての実践力を鍛える「生涯研修スキルアッププログラム」と,在宅医療を支援している地域医療機関(多職種連携の勉強会・情報交換会を立ち上げ,神戸市垂水区を中心に活動する特定非営利活動法人エナガの会および垂水区医師会)と連携してチーム医療での実践力を鍛える「臨床能力育成プログラム」を構築した.
そして,このような地域医療に貢献できる薬剤師の育成プログラムをもとに,在宅医療をはじめる薬剤師や在宅医療をはじめたが悩みを抱えている薬剤師を対象にした書籍を企画した.本書の特徴は,在宅現場で薬剤師が経験した45症例をもとにさまざまな切り口から組み立てられていることである.本書からは,実際の症例からの学びだけでなく,多面的な視点を得ることができる.在宅患者や患者家族と信頼関係を築くコミュニケーションの取り方から看取りに接した時の薬剤師としての寄り添い方,認知症患者や高齢者での服薬管理,排便コントロール,緩和ケア,高齢者のフレイルに大きく影響する栄養管理,そして薬の効果・副作用を評価するためのフィジカルアセスメントの考え方について,問題点を解決するポイントやヒントを薬剤師の視点から解説している.他にも,在宅に行く前に知っておくべき医療保険制度や介護保険制度,居宅療養管理指導の基礎知識についてもわかりやすく解説している.巻末には,臨床検査値と病態についての表を載せている.これは薬剤の効果や副作用の判断,薬剤変更や減薬・用量調整の提案などをするときに役立つものと思われる.
地域包括ケアシステムにおけるチーム医療に,それぞれの専門性を生かして多職種で関わることが,患者やその家族を支えることになる.在宅医療への薬剤師の積極的な参加は患者にとってメリットがあることを他職種に知ってもらうよい機会になる.また薬剤師も他職種の業務を知ることができ,適切な情報を提供できるようになる.チーム医療では,必要に応じて訪問の依頼・相談ができる顔の見える関係を普段から築いておくことが大切である.
今回,本書を企画するきっかけを与えてくださいました「エナガの会」代表の中村治正医師,また多くの在宅現場での症例を提供してくださいました薬剤師の先生方,無理なお願いに快く応じてくださいました執筆者の先生方に心からの感謝を捧げたいと思います.また本書の出版にあたり,企画から出版まで長きにわたり辛抱強く,企画,構成,編集に多大なるご尽力を賜りました南山堂編集部の古川晶彦氏,山田歩氏に深く感謝し,心より御礼申し上げます.
2022年6月
編者一同
しかし,在宅医療をはじめ地域医療において薬剤師が十分に活用されていない現状がある.その背景には,多職種間での連携不足が考えられる.このような社会情勢を受けて神戸薬科大学エクステンションセンターでは,2012年から地域医療に貢献できる実践力のある薬剤師の育成を目的に,薬物治療のリスクマネジャーとしての実践力を鍛える「生涯研修スキルアッププログラム」と,在宅医療を支援している地域医療機関(多職種連携の勉強会・情報交換会を立ち上げ,神戸市垂水区を中心に活動する特定非営利活動法人エナガの会および垂水区医師会)と連携してチーム医療での実践力を鍛える「臨床能力育成プログラム」を構築した.
そして,このような地域医療に貢献できる薬剤師の育成プログラムをもとに,在宅医療をはじめる薬剤師や在宅医療をはじめたが悩みを抱えている薬剤師を対象にした書籍を企画した.本書の特徴は,在宅現場で薬剤師が経験した45症例をもとにさまざまな切り口から組み立てられていることである.本書からは,実際の症例からの学びだけでなく,多面的な視点を得ることができる.在宅患者や患者家族と信頼関係を築くコミュニケーションの取り方から看取りに接した時の薬剤師としての寄り添い方,認知症患者や高齢者での服薬管理,排便コントロール,緩和ケア,高齢者のフレイルに大きく影響する栄養管理,そして薬の効果・副作用を評価するためのフィジカルアセスメントの考え方について,問題点を解決するポイントやヒントを薬剤師の視点から解説している.他にも,在宅に行く前に知っておくべき医療保険制度や介護保険制度,居宅療養管理指導の基礎知識についてもわかりやすく解説している.巻末には,臨床検査値と病態についての表を載せている.これは薬剤の効果や副作用の判断,薬剤変更や減薬・用量調整の提案などをするときに役立つものと思われる.
地域包括ケアシステムにおけるチーム医療に,それぞれの専門性を生かして多職種で関わることが,患者やその家族を支えることになる.在宅医療への薬剤師の積極的な参加は患者にとってメリットがあることを他職種に知ってもらうよい機会になる.また薬剤師も他職種の業務を知ることができ,適切な情報を提供できるようになる.チーム医療では,必要に応じて訪問の依頼・相談ができる顔の見える関係を普段から築いておくことが大切である.
今回,本書を企画するきっかけを与えてくださいました「エナガの会」代表の中村治正医師,また多くの在宅現場での症例を提供してくださいました薬剤師の先生方,無理なお願いに快く応じてくださいました執筆者の先生方に心からの感謝を捧げたいと思います.また本書の出版にあたり,企画から出版まで長きにわたり辛抱強く,企画,構成,編集に多大なるご尽力を賜りました南山堂編集部の古川晶彦氏,山田歩氏に深く感謝し,心より御礼申し上げます.
2022年6月
編者一同
目次
Ⅰ いま,在宅に行ってできることを整理する
1 患者宅でのコミュニケーションのはじまり─患者宅訪問
・「患者宅に行く」心構え
・チーム医療における他職種との連携
・Bad Newsを受容できない患者への対応
column:多職種情報交換会の必要性─「HANASUの会」発足を通して経験したこと
2 薬を飲む・使う環境を整える─薬を飲めない・飲まない原因と対策
・在宅でよくある「薬を飲めない・飲まない」原因と対策
・服薬管理でヘルパーに依頼できること・できないこと
column:内用薬の変更調剤
column:ポリファーマシー─薬剤師目線でのチェックポイント
3 「飲み込む」を評価・支援する─嚥下障害への対応
・嚥下機能の評価
・嚥下困難者を支援する
・飲み込みやすいポジショニング
・高齢の嚥下困難者で留意すべき低栄養・脱水・肺炎
column:ユニバーサルデザインフード
4 家族と協力して服薬管理する─認知症患者のケアと服薬管理
・認知症の定義と分類
・認知症の治療・ケアの心構え
・認知症の薬物療法の留意点と抗認知症薬
・MCI:認知症の予備軍
・若年性認知症
5 薬学管理に役立つ患者情報を収集する─フィジカルアセスメントと薬の効果・副作用の評価
・薬剤師が行うフィジカルアセスメント
・バイタルサインのアセスメント
・五感や薬剤師目線からのアセスメント
6 患者の「つらい状態」をサポートする
・がん患者の痛みをサポートする
・睡眠障害をサポートする
・便秘をサポートする
・脱力感・筋力低下をサポートする
・呼吸困難をサポートする
column:在宅医療における麻薬管理
column:パルスオキシメータの原理
7 高齢者の栄養状態を評価する
・低栄養状態を把握する
・高齢者の低栄養状態を評価する特有の項目
・低栄養状態の患者への対応
・栄養素の必要量
column:特別用途食品
8 看取りに備える─エンド・オブ・ライフケア
・看取りでの薬剤師の役割
・在宅での看取りに関する注意点
・QODを高める
Ⅱ 本当は在宅に行く前に知っておきたい知識
1 地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の役割
・地域包括ケアシステムの推進
・薬局・薬剤師に期待されていること
2 医療保険制度と介護保険制度
・社会保険制度
・医療保険制度,介護保険制度における薬学的管理指導業務
・保険からみた在宅訪問の流れ
3 特定保険医療材料
・在宅医療における特定保険医療材料
4 セルフメンタルケア─ストレスをマネジメントする
・ストレスの成り立ち
・ストレスコーピング
・ソーシャルサポート(社会的支援)
・コミュニケーション不一致によるストレスマネジメント
付録:臨床検査値と病態
・採血なしの非侵襲検査からわかること
・採血を伴う侵襲検査からわかること
索引
1 患者宅でのコミュニケーションのはじまり─患者宅訪問
・「患者宅に行く」心構え
・チーム医療における他職種との連携
・Bad Newsを受容できない患者への対応
column:多職種情報交換会の必要性─「HANASUの会」発足を通して経験したこと
2 薬を飲む・使う環境を整える─薬を飲めない・飲まない原因と対策
・在宅でよくある「薬を飲めない・飲まない」原因と対策
・服薬管理でヘルパーに依頼できること・できないこと
column:内用薬の変更調剤
column:ポリファーマシー─薬剤師目線でのチェックポイント
3 「飲み込む」を評価・支援する─嚥下障害への対応
・嚥下機能の評価
・嚥下困難者を支援する
・飲み込みやすいポジショニング
・高齢の嚥下困難者で留意すべき低栄養・脱水・肺炎
column:ユニバーサルデザインフード
4 家族と協力して服薬管理する─認知症患者のケアと服薬管理
・認知症の定義と分類
・認知症の治療・ケアの心構え
・認知症の薬物療法の留意点と抗認知症薬
・MCI:認知症の予備軍
・若年性認知症
5 薬学管理に役立つ患者情報を収集する─フィジカルアセスメントと薬の効果・副作用の評価
・薬剤師が行うフィジカルアセスメント
・バイタルサインのアセスメント
・五感や薬剤師目線からのアセスメント
6 患者の「つらい状態」をサポートする
・がん患者の痛みをサポートする
・睡眠障害をサポートする
・便秘をサポートする
・脱力感・筋力低下をサポートする
・呼吸困難をサポートする
column:在宅医療における麻薬管理
column:パルスオキシメータの原理
7 高齢者の栄養状態を評価する
・低栄養状態を把握する
・高齢者の低栄養状態を評価する特有の項目
・低栄養状態の患者への対応
・栄養素の必要量
column:特別用途食品
8 看取りに備える─エンド・オブ・ライフケア
・看取りでの薬剤師の役割
・在宅での看取りに関する注意点
・QODを高める
Ⅱ 本当は在宅に行く前に知っておきたい知識
1 地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の役割
・地域包括ケアシステムの推進
・薬局・薬剤師に期待されていること
2 医療保険制度と介護保険制度
・社会保険制度
・医療保険制度,介護保険制度における薬学的管理指導業務
・保険からみた在宅訪問の流れ
3 特定保険医療材料
・在宅医療における特定保険医療材料
4 セルフメンタルケア─ストレスをマネジメントする
・ストレスの成り立ち
・ストレスコーピング
・ソーシャルサポート(社会的支援)
・コミュニケーション不一致によるストレスマネジメント
付録:臨床検査値と病態
・採血なしの非侵襲検査からわかること
・採血を伴う侵襲検査からわかること
索引
事例一覧
事例1 患者がなかなか心を開かない
これで解決!→患者の興味・関心を探りながら会話する
事例2 正確な患者情報が得られない
これで解決!→質問の仕方を工夫する
事例3 患者の精神状態が排便コントロールに影響している
これで解決!→家族との情報交換を積極的に行う
事例4 患者に家事の手伝いを頼まれる
これで解決!→断り方を工夫する
事例5 ケアマネジャーと情報を共有しづらい
これで解決!→伝え方を工夫する
事例6 「顔を合わせない」スタッフとうまく連携できない
これで解決!→共有ノートを設置する
事例7 若年末期がん患者の,麻薬に対する嫌悪感が強い
これで解決!→コントロールする必要性が高い症状に焦点を当てて説明する
事例8 病気で失明したことを受け入れられない
これで解決!→信頼関係を築きながら環境を整える
事例9 食事の回数と薬の服用回数が違う
これで解決!→患者の生活スタイルに合わせた服用時間への変更を提案する
事例10 食前・食後の区別がつかない
これで解決!→食後服用の薬を食前服用に変更してもらう
事例11 嚥下困難で錠剤・カプセル剤が飲めない
これで解決!→剤型変更,錠剤の粉砕,脱カプセルを提案する
事例12 患者が「薬の味が苦手」と訴える
これで解決!→飲みやすい剤形への変更を提案する
事例13 吸入剤をうまく吸入できない
これで解決!→剤形変更,補助具の使用を提案する
事例14 握力が弱く,点眼剤をさせない
これで解決!→補助具を使用する
事例15 病識・薬識が不足しており血糖コントロールが悪い
これで解決!→具体的な説明を繰り返す
事例16 薬の種類が多く管理できていないため一包化を提案するが,患者が希望しない
これで解決!→薬箱を使って整理する
事例17 外用薬だけアドヒアランスが悪い
これで解決!→適切な設置場所を提案する
事例18 疼痛が悪化しているがん患者が,麻薬の使用を拒否する
これで解決!→否認に配慮した精神的サポートを行う
事例19 経済的な理由で服薬を拒否する
これで解決!→薬の見直しを提案し,それでも難しいことは他職種につなげる
事例20 治療への意欲がみられない
これで解決!→減薬と多職種連携により服薬意欲の向上を図る
事例21 ときどき誤飲する
これで解決!→処方薬の剤型変更を提案する
事例22 錠剤の飲み込みが困難になってきた
これで解決!→簡易懸濁法や服薬補助ゼリー剤の使用を勧める
事例23 嚥下困難な患者に何か食べさせたい
これで解決!→経腸栄養剤を凍らせる
事例24 高齢認知症患者のアドヒアランスが悪い
これで解決!→親族・医療従事者のチームで対応する
事例25 認知症患者がたびたび転倒してしまう
これで解決!矢印転倒のリスクがある薬を減薬する
事例26 健康サポート薬局での健康講座がきっかけで認知症が判明した
これで解決!→「物忘れ外来」を紹介する
事例27 三叉神経痛の高齢女性が突然意識を失った
アセスメント!→脈拍をチェックする
事例28 発熱・咳があり薬を服用したが,3日経っても解熱しない
アセスメント!→患者の話し方から呼吸数を推測する
事例29 ワルファリン服用患者が下血を訴える
アセスメント!→鼻出血,口腔内出血,体表面の紫斑,下血の有無を確認する
事例30 降圧薬を服用したら振戦が出現した
アセスメント!→定期的な血中濃度測定を提案する
事例31 利尿薬を追加しても浮腫が改善しない
アセスメント!→薬剤性浮腫の可能性を検討する
事例32 患者が「最近息切れする」と訴える
アセスメント!→心不全症状をチェックする
事例33 下剤を服用しているのに便秘が増悪した
アセスメント!→ブリストルスケールで便の状態を評価する
事例34 傾眠傾向のある認知症患者が不眠を訴える
これで解決!→処方している睡眠薬をプラセボ薬に変更する
事例35 胃弱患者の排便コントロールができていない
これで解決!→酸化マグネシウムの服用量や回数を調整する
事例36 利尿薬服用患者が,自分で漢方薬を購入して服用していた
これで解決!→利尿薬を減量し,漢方薬を中止する
事例37 SpO2値が急に大きく低下した
これで解決!→SpO2値が低下する原因を挙げて検討する
事例38 ワルファリン服用患者の低栄養状態が疑われる
これで解決!→ビタミンK の含有量を考慮しながら経腸栄養剤を提案する
事例39 看取りに直面し,主介護者が精神的に不安定になった
これで解決!→主介護者の意思を尊重する
事例40 老老介護で患者の妻のストレスがたまっている
これで解決!→居宅療養管理指導により薬剤師が介入する
事例41 急な体調変化により,臨時の訪問指導依頼があった
これで解決!→調剤報酬の算定要件を確認する
事例42 中心静脈カテーテルを挿入した在宅患者の処方箋を,初めて応需することになった
これで解決!→処方箋で交付できる医療材料を確認・準備する
事例43 在宅業務と通常業務が重なり,忙しすぎてイライラする
これで解決!→仕事を一人で抱え込むのではなく,他の人に任せるようにする
事例44 在宅業務をしたくて転職したが,現場に慣れず自信をなくした
これで解決!→人的,物的サポートを使う
事例45 自分と性格が異なる人と,どう接していいのかわからない
これで解決!→違いを理解し,関わり方を工夫する
これで解決!→患者の興味・関心を探りながら会話する
事例2 正確な患者情報が得られない
これで解決!→質問の仕方を工夫する
事例3 患者の精神状態が排便コントロールに影響している
これで解決!→家族との情報交換を積極的に行う
事例4 患者に家事の手伝いを頼まれる
これで解決!→断り方を工夫する
事例5 ケアマネジャーと情報を共有しづらい
これで解決!→伝え方を工夫する
事例6 「顔を合わせない」スタッフとうまく連携できない
これで解決!→共有ノートを設置する
事例7 若年末期がん患者の,麻薬に対する嫌悪感が強い
これで解決!→コントロールする必要性が高い症状に焦点を当てて説明する
事例8 病気で失明したことを受け入れられない
これで解決!→信頼関係を築きながら環境を整える
事例9 食事の回数と薬の服用回数が違う
これで解決!→患者の生活スタイルに合わせた服用時間への変更を提案する
事例10 食前・食後の区別がつかない
これで解決!→食後服用の薬を食前服用に変更してもらう
事例11 嚥下困難で錠剤・カプセル剤が飲めない
これで解決!→剤型変更,錠剤の粉砕,脱カプセルを提案する
事例12 患者が「薬の味が苦手」と訴える
これで解決!→飲みやすい剤形への変更を提案する
事例13 吸入剤をうまく吸入できない
これで解決!→剤形変更,補助具の使用を提案する
事例14 握力が弱く,点眼剤をさせない
これで解決!→補助具を使用する
事例15 病識・薬識が不足しており血糖コントロールが悪い
これで解決!→具体的な説明を繰り返す
事例16 薬の種類が多く管理できていないため一包化を提案するが,患者が希望しない
これで解決!→薬箱を使って整理する
事例17 外用薬だけアドヒアランスが悪い
これで解決!→適切な設置場所を提案する
事例18 疼痛が悪化しているがん患者が,麻薬の使用を拒否する
これで解決!→否認に配慮した精神的サポートを行う
事例19 経済的な理由で服薬を拒否する
これで解決!→薬の見直しを提案し,それでも難しいことは他職種につなげる
事例20 治療への意欲がみられない
これで解決!→減薬と多職種連携により服薬意欲の向上を図る
事例21 ときどき誤飲する
これで解決!→処方薬の剤型変更を提案する
事例22 錠剤の飲み込みが困難になってきた
これで解決!→簡易懸濁法や服薬補助ゼリー剤の使用を勧める
事例23 嚥下困難な患者に何か食べさせたい
これで解決!→経腸栄養剤を凍らせる
事例24 高齢認知症患者のアドヒアランスが悪い
これで解決!→親族・医療従事者のチームで対応する
事例25 認知症患者がたびたび転倒してしまう
これで解決!矢印転倒のリスクがある薬を減薬する
事例26 健康サポート薬局での健康講座がきっかけで認知症が判明した
これで解決!→「物忘れ外来」を紹介する
事例27 三叉神経痛の高齢女性が突然意識を失った
アセスメント!→脈拍をチェックする
事例28 発熱・咳があり薬を服用したが,3日経っても解熱しない
アセスメント!→患者の話し方から呼吸数を推測する
事例29 ワルファリン服用患者が下血を訴える
アセスメント!→鼻出血,口腔内出血,体表面の紫斑,下血の有無を確認する
事例30 降圧薬を服用したら振戦が出現した
アセスメント!→定期的な血中濃度測定を提案する
事例31 利尿薬を追加しても浮腫が改善しない
アセスメント!→薬剤性浮腫の可能性を検討する
事例32 患者が「最近息切れする」と訴える
アセスメント!→心不全症状をチェックする
事例33 下剤を服用しているのに便秘が増悪した
アセスメント!→ブリストルスケールで便の状態を評価する
事例34 傾眠傾向のある認知症患者が不眠を訴える
これで解決!→処方している睡眠薬をプラセボ薬に変更する
事例35 胃弱患者の排便コントロールができていない
これで解決!→酸化マグネシウムの服用量や回数を調整する
事例36 利尿薬服用患者が,自分で漢方薬を購入して服用していた
これで解決!→利尿薬を減量し,漢方薬を中止する
事例37 SpO2値が急に大きく低下した
これで解決!→SpO2値が低下する原因を挙げて検討する
事例38 ワルファリン服用患者の低栄養状態が疑われる
これで解決!→ビタミンK の含有量を考慮しながら経腸栄養剤を提案する
事例39 看取りに直面し,主介護者が精神的に不安定になった
これで解決!→主介護者の意思を尊重する
事例40 老老介護で患者の妻のストレスがたまっている
これで解決!→居宅療養管理指導により薬剤師が介入する
事例41 急な体調変化により,臨時の訪問指導依頼があった
これで解決!→調剤報酬の算定要件を確認する
事例42 中心静脈カテーテルを挿入した在宅患者の処方箋を,初めて応需することになった
これで解決!→処方箋で交付できる医療材料を確認・準備する
事例43 在宅業務と通常業務が重なり,忙しすぎてイライラする
これで解決!→仕事を一人で抱え込むのではなく,他の人に任せるようにする
事例44 在宅業務をしたくて転職したが,現場に慣れず自信をなくした
これで解決!→人的,物的サポートを使う
事例45 自分と性格が異なる人と,どう接していいのかわからない
これで解決!→違いを理解し,関わり方を工夫する
書評
知識・技能あり,医療人マインドを持って患者のそばへ!
仮家公夫(神戸学院大学名誉教授)
25年ほど前に病院薬剤部と調剤薬局・ドラッグストアで各1週間研修し,その後は「地域の多職種での勉強会」などで見聞した視点と,患者・家族の期待する立場からの書評である.本書は大きく「在宅で何をせねばならないか」と「勤務先での在宅の位置付け」に分けられている.前者は42事例,後者は3事例の解説と対応例が示されている.在宅薬剤師の役割は,患者の主訴や家族・屋内の状態を把握し,薬物の適正使用を主観・客観的に確認し,患者・家族そして主治医など他職種に伝えることにある.各専門職も「人」である以上,判断に錯誤もある.他職種に恐れず「教えを乞う」気持ちで,患者・家族のために「疑問」を投げかけよう.患者・家族や他職種とのコミュニケーション力や事象の理解・表現力と同様に,医療人マインドも日々の経験で形成される.本書が在宅のヒントや再発見につながり,一歩踏み出せないでいる薬剤師の道標になれば,編者・執筆者の本望だろう.
仮家公夫(神戸学院大学名誉教授)
25年ほど前に病院薬剤部と調剤薬局・ドラッグストアで各1週間研修し,その後は「地域の多職種での勉強会」などで見聞した視点と,患者・家族の期待する立場からの書評である.本書は大きく「在宅で何をせねばならないか」と「勤務先での在宅の位置付け」に分けられている.前者は42事例,後者は3事例の解説と対応例が示されている.在宅薬剤師の役割は,患者の主訴や家族・屋内の状態を把握し,薬物の適正使用を主観・客観的に確認し,患者・家族そして主治医など他職種に伝えることにある.各専門職も「人」である以上,判断に錯誤もある.他職種に恐れず「教えを乞う」気持ちで,患者・家族のために「疑問」を投げかけよう.患者・家族や他職種とのコミュニケーション力や事象の理解・表現力と同様に,医療人マインドも日々の経験で形成される.本書が在宅のヒントや再発見につながり,一歩踏み出せないでいる薬剤師の道標になれば,編者・執筆者の本望だろう.