ブックタイトル創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド
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創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド
663- 1 知財戦略マネジメントの実務 知財戦略の目的は医薬品が上市されたのちの事業の保護であり,そのための一般的な留意点は次のとおりである.① 基本特許と周辺特許を組み合わせ,対象とする医薬品にかかわる事業全体を保護する(評価法,物質,用途,製法,製剤などの特許で,事業全体をカバーする特許ポートフォリオを構築する).② 臨床開発の前には基本特許を出願するなど,研究開発のタイムラインに連動して,特許ポートフォリオを構築するように出願する.③ 特許法の規定を最大限に利用して権利の拡大・存続期間延長を図る(国内優先権制度,保護期間の延長制度,特許の分割出願など).④ 国際的な事業展開に沿ったかたちで特許権を取得すべく,特許協力条約(PCT)に基づく国際出願制度の利用と指定国の選択などを工夫する. それでは,具体的に研究開始の時期からみていこう.知財戦略(特許戦略)とは特許権確保のための特許ポートフォリオ(開発・製造に必要な特許群)の構築であり,その考えかたを図3-1に示した.基礎研究段階の知財戦略 創薬の研究開発の実務は,治療対象とする疾患を決め,病態関連の治療標的分子を同定するところから始まる.化合物スクリーニング系の確立,ならびに,スクリーニングを行って標的分子の機能を修飾(阻害または増幅)する化合物を選択し,開発候補化合物を得るところまでが,基礎研究として行われる.このプロセスで,新規な化合物を創製して「物質特許」を,想定される適応症へ化合物を使用するための「用途特許」(効能・効果)を,さらに化合物を製造するための「製法特許」を生むことができる. 物質特許の出願にあたっては,リード化合物を含め,最適化された新規な開発候補化合物,さらには合成化合物であれば中間体も記載し,広く周辺化合物をおさえる(排他権を広くする)かたちで出願する.遺伝子であれば塩基配列,