ブックタイトル創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド

ページ
6/10

このページは 創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド

114アカデミア創薬に求められる薬事戦略 創薬の探索研究では,医療ニーズの十分な調査に基づいて広い視野から治療標的を決め,化合物の探索を進めていくであろう.その観点から,初期の探索研究でとくに意識しておきたい薬事要件を薬事戦略としてまとめてみたのが表4-2である.まず,治療対象とする疾患に対して,病因を探して根本治療薬を狙うのか,あるいは対象疾患の症状や合併症を治療して症状の改善を狙うのかが重要である(薬事戦略1).基礎研究者は前者を想定することが多いようであるが,臨床医や臨床研究者の場合は病態の改善を意識していることが多いように感じる.表4 -2 研究段階から考える薬事戦略薬事戦略1医療ニーズのなかの「治療薬ニーズ」を吟味し,研究対象を設定→ 基礎研究者に多い病因治療,臨床研究者に多い対症治療【事例:がんの場合】 ・病因の治療:延命,がん組織の縮小・抑制 ・合併症治療:がん性疼痛の鎮痛 ・副作用治療:化学療法時の制吐,脱毛防止,皮膚障害治療【事例:神経変性疾患の場合】 ・病因の治療:神経変性の抑制 ・症状の治療:認知機能・運動機能の改善,症状増悪の遅延,発作の抑制【事例:糖尿病の場合】 ・病因の治療:血糖降下,耐糖能の改善(インスリン分泌増加,グルカゴン分泌抑制) ・合併症治療:合併症(神経障害,腎障害,網膜症,黄斑浮腫)の改善薬事戦略2臨床的意義を反映したエンドポイント,客観的なエンドポイントの設定→ 同種の評価指標を採用した動物モデルの非臨床試験が望ましい【エンドポイントの設定】 ◎ True endpoint(真のエンドポイント)   治療行為のアウトカムで,死亡率低下,疾患発症率低下,QOL 向上,副作用低減など ◎ Surrogate endpoint(代理エンドポイント)   治療上のアウトカムを合理的に予測しうる,臨床検査値,腫瘍サイズなど【定量化と判定基準】 有効性判定のエンドポイントとしての評価項目は,比率(発症率や死亡率,再発率),時間(生存期間や再発までの時間),数値(血圧値やコレステロール値),症状の緩和(変化)などがある.定量的評価を行い,治療効果の反映値を決める必要がある【設定の根拠】 ・臨床試験で実施しうる妥当なエンドポイントとして選択する ・動物試験では,臨床的エンドポイントを反映する評価系を用いることが重要である ・同種の既存薬の臨床試験で使用されているエンドポイントも参考にする ・既存評価系がない場合,新たな系を考案し,学会や論文で認知してもらわねばならない ・新規指標を治験に用いる場合は,その妥当性を規制当局と相談する