ブックタイトル創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド
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創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド
162研究達成よりも難しいこと 筆者が企業研究所に所属していたとき,所内でミニコミ誌を出していたことがあった.企業も大学と同じで,各研究室は「隣は何をする人ぞ」という状況になりやすい.それを防いで交流を促し,シナジー効果を高めようという狙いである. あるとき,「研究の壁にぶつかったとき,あなたはどのように対処しますか?」という特集が組まれたことがあった.企業では,大学での教育のように教授などの研究責任者が研究を指導するケースはまれなので,自主的に研究に取り組んでいかないと,仕事が進まない.また,同じテーマをチームで分担して研究することが多いため,一人の仕事のペースがチーム全体の律速となることが,しばしばある.こうした状況で,上記の特集は,研究歴の少ない悩める若手研究者に先輩研究者から経験知を伝えてもらおうという企画であった.経験豊富な上級研究者からは多くの示唆に富む対処法が寄せられた.企業では,研究者であり続けられるのは「選ばれし者」という側面があるので,そうした研究者からの提言には説得力に富む箴言に近いものもあった. そのなかに,今でも忘れられない次のような言葉があった.「研究の失敗なんて所詮たいしたことはない.やり直せばすむことだ.それよりも失恋はつらい.相手にも明確な意思があり,自分の努力だけではどうにもならない.失恋に比べれば,研究の失敗など悩むに値しない.もう一度やってみよう…」 実際,この言葉を寄せた研究者は優れた成果をあげていた研究者で,そのタフネスの秘訣はここにあったのかという想いであった.たしかに,やり直せばすむことであるし,やり直しの効くあいだは本当の失敗ではない.この「箴言」は,当時,筆者を含む独身の研究者達を大いに励ましたものである.今でも通用する言葉ではなかろうか.Column