ブックタイトル図解 機能形態学
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図解 機能形態学
3章循環器系 手を降ろしたまま上腕をきつく縛ってみてください.前腕や手の静脈が浮き出し,手を上にあげても元に戻りません.心臓から手に流れてきた血液が静脈経由で心臓に還ろうとしても,縛られた部位で止められ,還ることができないためです.ですから,縛ったところをゆるめると,浮き出ていた静脈はすっと見えなくなります. 今なら,誰もが「血液は心臓から動脈を通って身体中に送られ,静脈経由で心臓に還る」ことを知っています.でも,この「血液循環説」を初めて明らかにしたのはハーヴェイ(1628 年)で,それ以前は,ガレノス(紀元2 世紀)の「食物から栄養を吸収し,肝臓で造られた血液は心臓に入り,肺からの空気とともに鮮紅色の“精気”となって全身に送られて使い切られる」という説が信じられていました.当時は,動脈と静脈の区別もなく「血液が心臓へ還る」ことさえ知られていなかったのです. 今なら当たり前の「血液循環」を証明したハーヴェイですが,実は「動脈と静脈の連絡」までは発見していません.毛細血管が発見されるには,顕微鏡によるマルピギー(1661 年)の観察を待たなければなりませんでした. 本章では17 世紀から現代までの長い間に積み重ねられてきた「血液循環」の事実を少しずつ(かなり急ぎ足ですが)確認してみることにしましょう.