ブックタイトルわかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版
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わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版
130 Ⅱ. 生化学編 脂肪酸の炭素が単結合のみで連結されているものを飽ほうわしぼうさん和脂肪酸(例:パルミチン酸,ステアリン酸),二重結合をもつものを不ふほうわしぼうさん飽和脂肪酸〔例:オレイン酸,リノール酸(図11-1)〕といい,不飽和化したものは同じ炭素数でも融点が下がる(つまり低温でも固化しにくい).健康面で注目されているEPA(エイコサペンタエン酸さん)やDHA(ドコサヘキサエン酸)も不飽和脂肪酸の一種である.不飽和脂肪酸は細CH HH CH HCH HCH HCH HC = ==HCHCH HCHCHCH HCH HCH HCH HCH HCH HCH分子構造HCOOH=(別の表し方)カルボキシ基疎水性部分親水性部分二重結合COOH17 15 13 12 10 9 7 5 318 16 14 11 8 6 4 2①①~⑥:ω系列の種別を識別するためのもの. この場合はω6② ④③ ⑤⑥1図11-1 リノール酸の構造 不飽和脂肪酸はその生合成経路に基づいて特定のωオメガけいれつ系列(n 系列ともいう)に分類されるが,これは最初の二重結合がカルボキシ基の反対側の炭素から何番目の炭素にあるかによって識別できる.たとえば,リノール酸(図11-1)は最初の二重結合が6 番目にあるので,ω 6 系列である.よく知られたω系列としてω 3 系列(例:α - リノレイン酸,EPA,DHA),ω 6 系列(例:リノール酸,アラキドン酸),ω 9 系列(例:オレイン酸)があるが,これらの不飽和脂肪酸は二重結合が油脂の融点を下げて細胞膜の流動性を高め,また血中コレステロール濃度を下げるなどの効果が示唆されており,医学的,栄養学的に注目されている.解 説 不飽和脂肪酸のω系列トランス脂肪酸は健康をむしばむ?! 不飽和脂肪酸の二重結合している炭素は自由に回転できず,そこから伸びる炭素は向きが同じか反対かのいずれかになる.これら異性体のうち,前者の折れ曲がった形をシス型といい,後者の伸びた形をトランス型という(図).天然の不飽和脂肪酸はほとんどがシス型である.水素を使って不飽和脂肪酸から付加価値の高いマーガリンやショートニングなどの固形油脂を製造する(炭素に水素を結合させて二重結合をなくして飽和脂肪酸にする.融点が上がって固化する)と,副産物としてトランス不飽和脂肪酸ができる.トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし,動脈硬化や心筋疾患を悪化させるといわれている.R1R1R2R2シス(cis)型 , :適当な炭化水素の構造を表す二重結合の炭素は単結合と違い,自由に回転できないC =HCHR1R2トランス(trans)型C =HCH図 二重結合のシス型とトランス型Column