ブックタイトルわかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

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概要

わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

20.DNAのダイナミックな側面 ─ 組換え,損傷と修復,突然変異 ─ 26720塩基対の小規模なものから染色体レベルまでさまざまあるが,何らかの組換え反応やDNAポリメラーゼの機能欠陥がかかわることが多い.染色体の倍加や大規模な組換えは染せんしょくたいいじょう色体異常や相同組換えとして論じられることが多い.b 変異原 突然変異はDNA ポリメラーゼのミスがそのまま残ったり,シトシンがウラシルに変わる損傷が残ったために次のDNA 複製でアデニンが対合したりするなど,内因性の(細胞に原因がある)ものもある.これに対し,突然変異を起こす外因性のものを変へんいげん異原あるいは突然変異誘ゆういんぶっしつ引物質などというが,タール成分,紫外線,高温,化学物質などがあり,多くはDNA 傷しょうがいざい害剤と共通である. 個体のゲノムDNA のある部分の塩基配列が大多数の個体がもつ塩基配列である標ひょうじゅんてきえんきはいれつ準的塩基配列(参さんしょうえんきはいれつ照塩基配列ともいう)と異なる場合がある.この変化の頻度が1%未満であれば突とつぜんへんい然変異とし,1%以上のときは多たけい型(ゲノム多たけい型,遺いでんしたけい伝子多型)ということが多い.多型ははじめ制限酵素による切断で生じるDNA 断片の有無や長さの違いとして認識され(つまり,制限酵素認識配列の有無),その後はいろいろな方法で多たけいかいせき型解析が行われた.1 塩基の違いをもつ多型を1 塩えんきたけい基多型(SスニップNP)といい,ヒトゲノム中には数百万個が存在する.縦じゅうれつはんぷくはいれつ列反復配列であるマイクロサテライトDNA(繰り返しの単位が数塩基)やミニサテライトDNA(繰り返しの単位が数から数十塩基)の繰り返し数の違いによる多型も知られており,前者は個人での差異が大きいために個こじんしきべつ人識別(いわゆるDNA 指しもん紋)に利用され,後者は生物系統間で差異が大きいため系けいとうぶんせき統分析に利用される.次世代シークエンサー(NGS)の登場により個人のゲノムを短い期間で網羅的に調べることが可能になりつつあり,多型など塩基配列の違いの結果を元にしてより効率的・効果的に疾患の診断,治療,予防を行うゲノム医いりょう療が注目されている.解 説 ゲノム多型 ゲノムは意外に不安定であり,一定の確率で突然変異を起こすことも生物の1 つの特徴であると考えることができる.突然変異は一般に生存に不利に働くが,まれに有利に働くものもあり,ダーウィン C. R.Darwin による自しぜんせんたくせつ然選択説(自しぜんとうたせつ然淘汰説ともいう)ではこのような有利な突然変異がときとして生せいぶつ物の進しんか化や多たようせい様性の獲かくとく得に関連する(図)としている.なお,進化のメカニズムを説明する説の中には,生存に対して中立の立場にある変異の蓄積が進化のおもな原動力となるとする中ちゅうりつせつ立説もある.生物(野生型):突然変異による形質の変化(突然変異体)生存に有利生存に不利有利でも不利でもない進化した生物の発生(の元)適応性の拡大個体数・生活範囲の拡大形質の多様性の増大残る消える淘汰とうた図 突然変異は進化,生存,多様性の獲得に必要である解 説 突然変異と生物多様性,進化