ブックタイトルZEROからの生命科学 改訂4版

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概要

ZEROからの生命科学 改訂4版

12Chapter 2 生命の最小機能単位・細胞3 細胞膜 cell membrane(1)細胞膜の構造 細胞膜は原形質の周囲を囲む厚さ5 ?8 nmの膜です.現在,膜構造に関してはシンガーとニコルソンによって提唱された流動モザイクモデルfluid mosaic model が支持されています.それによると,リン脂質は親水部が外側を向き,疎水部が内側を向いて2 層に重なり,そのリン脂質の層にタンパク質がモザイク的に埋め込まれています(図2ー13).さらにリン脂質やタンパク質などの構成分子は流動的な性質を持ち,自由に移動することができるというものです.リン脂質の間を埋めるタンパク質には,特定の分子を通過させるチャネルタンパク質やホルモンなどの受容体タンパク質,ナトリウムポンプなどのタンパク質,細胞間結合に関係するタンパク質などがあります.また,細胞膜の表面には,自己・非自己の認識において目印となる糖鎖が伸びています.(2)細胞膜の働き 細胞膜は選択的透過性を持った半透性の膜(半透膜)ということができます.a.半透性と浸透圧 半透膜とは,分子量の大きな溶質(糖など)は通さないが,分子量の小さな溶媒(水など)は通す膜をいいます.細胞膜のような生体膜の他にはセロハン膜が半透性を示します.半透性の性質を実験で示すと図2ー14 のようになります.半透膜を境にショ糖溶液と水を入れた容器を用いると,やがてショ糖溶液の液面が重力に逆らって上昇する現象が見られます.これは,小さな穴が開いている半透膜のモデルで考え,分裂に先立って核内でDNA が複製され,次いで染色体が形成されるころ核膜が消失し,核の内部は細胞質にさらされ,分裂装置の働きで染色体が娘細胞に等分されます.このように核は,遺伝子DNA を子孫に受け継ぐための安定した環境を与えているのです. また,核は形質発現に際しDNA からmRNAへの転写の場として重要な役割を担っています.転写とは,RNA ポリメラーゼ(RNA 合成酵素)によってDNA の塩基配列が相補的にmRNA(正確にはmRNA 前駆体)に写し取られる過程をいいます.出来上がったmRNA 前駆体は有用な遺伝情報を持つ部分(エクソン)と持たない部分(イントロン)を含むので,スプライシングによってイントロン部分が切り取られてエクソン部分のみのmRNA が完成します(p. 120).なお,核液の中に1 ?数個見られる核小体には,リボソームRNA を合成するDNA が含まれており,現在,核小体からのリボソーム形成過程が研究されています.二重らせんDNA2 nmヒストン10 nmヌクレオソームヌクレオソームフィラメント動原体染色分体0.7μm染色体糸状の染色体図2ー12 染色体の構造親水性の頭部疎水性の尾部膜内在タンパク質(ナトリウムポンプやイオンチャネル)糖鎖リン脂質( 2 層)細胞質側リン脂質図2ー13 細胞膜の流動モザイクモデル