ブックタイトルプログレッシブ生命科学

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概要

プログレッシブ生命科学

3.タンパク質の構造と機能49する.すなわち,タンパク質の機能を調節する薬剤が「薬」の大半を占めている.言い換えれば,ほとんどの「薬」は,タンパク質と結合してその機能を調節する分子である. 臨床の現場で使われている薬の多くは,酵素や受容体を標的としている.なぜなら,歴史的に,タンパク質のもつ活性を指標に「薬」を見つけ出すことが可能であったからである.しかし,生命科学・医学の進歩によって,多彩な生命現象の分子メカニズムが解明されるにつれて,種々の疾患が生じる原因や疾患の症状を増悪するメカニズムが明らかとなってきた.その結果,旧来の方法では開発することがむずかしい創薬ターゲットとなるタンパク質やシグナル伝達経路が同定されてきた. 現代の創薬は,まず数十万個におよぶ治療薬のもとになる低分子化合物ライブラリーを準備し,創薬ターゲットとなるシグナル伝達経路の活性を簡便に検出する方法を開発する.そして,準備した低分子化合物ライブラリーの分子を1 つずつ添加して,創薬ターゲットの活性を制御する化合物存在することが報告され,分解以外にも,シグナル伝達,DNA 修復など,多彩な様式でタンパク質の機能を制御することが知られている(図3 - 22 C).ユビキチン修飾が多彩な役割を果たすのは,ユビキチン間の結合様式が異なるユビキチン鎖は,それぞれ異なった結合タンパク質によって認識されるためである.また,ユビキチン以外にも,SUMOなどのタンパク質性の翻訳後修飾因子も存在している.3-6 創薬への展開 タンパク質は,われわれの身体がはたらくために機能する実働部隊である.したがって,何らかの理由でタンパク質がはたらきすぎたり,逆に,はたらかなさすぎたりすると,われわれの身体はきちんと機能することができず,疾患を引き起こす.われわれが服用したり,注射したりする「薬」は,ほぼすべてがタンパク質を標的(ターゲット)としており,タンパク質の機能を抑制あるいは亢進図3 - 22 ユビキチン修飾によるさまざまなタンパク質の機能制御(A)UbKUbK基質タンパク質UbKUbK(B)ADP+PiATPプロテアソーム分解UbUbUbUbUbUbUbUbK基質タンパク質(C)UbUbUbUbUbUbK基質タンパク質UbUbUbUbUbUbKタンパク質Xシグナル伝達DNA修復