ブックタイトルプログレッシブ生命科学

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概要

プログレッシブ生命科学

9.生殖・発生・遺伝1614 DNA多型とゲノムワイド関連解析 われわれの姿形が千差万別であるように,約30億塩基対からなるDNA の配列も個人のあいだで比較するとかなり多くの部位で異なっている.これをDNA 多た 型けいとよび,その代表的なものを示す.ⅰ) 1 つの塩基がほかの塩基に置き換わっているもの:SNP SNP(single nucleotide polymorphism, 一塩基多型)は,数百から千塩基対に1 箇所くらいの割合で存在していると推測されているので,ゲノム中には3, 000, 000 ~ 10, 000, 000 箇所のSNP が存在すると考えられる.なお,DNA 制限酵素が認識して切断する配列部位にSNP がある場合には,DNA をDNA 制限酵素で切断した場合のDNA 断片の長さが変わることになり, これをRFLP(restriction fragment length polymorphism,制限酵素切断断片長多型)とよぶ.RFLP はサザンブロット法と組み合わせて利用され,1980 年代は遺伝子多型解析法の主流であった.最近でも,PCR産物を制限酵素で切断して遺伝子変異や多型を調べることもあり,PCR-RFLP とよばれている.ⅱ) 塩基配列の繰り返しの単位が異なるもの これは2 種類に大別され,繰り返しの単位が数塩伝子の染色体上の位置を決定し,原因遺伝子を単離して病態を追求できるようになった(ポジショナルクローニング, 図9 - 15).1980 年代後半から1990 年代にかけて,デュシェンヌ型筋ジストロフィー,嚢胞性線維症,家族性大腸腺腫症,ハンチントン病,遺伝性乳がんなど,種々の単一遺伝性疾患の原因遺伝子がポジショナルクローニングにより同定された.しかし,各研究グループがそれぞれ関心のあるところのゲノム解析をしていても非効率的なため,すでに述べたような国際協力が生まれた. 一方で,われわれが遭遇する疾患の大半は多因子遺伝性疾患であると考えられる.OMIM(OnlineMendelian Inheritance in Man)によると,何らかの遺伝素因がその発症に関与している疾患は,2013年3月31日の時点で21, 730種類にものぼるが,それらのうち,相当数の原因遺伝子は同定されていない.原因遺伝子が発見されれば,遺伝子診断が可能になり,予防医学が発展し,基礎となる生物学的異常の理解も進み,創薬のアイデアも生まれるだろう.図9 - 15 ポジショナルクローニングの流れ患者家系のDNA から疾患遺伝子の染色体上の位置を決定し,データベースなどでその領域に存在する遺伝子数十個をもとに,患者における遺伝子変異を検索して原因遺伝子を単離する.ゲノムデータベース遺伝子変異の同定・・・CTCGC・・・・・・CTAGC・・・遺伝子診断抗体生化学細胞生物学モデル動物遺伝子治療原因遺伝子候補遺伝子のクローニング連鎖解析:DNAマーカー制限酵素地図YAC/BACCpGCpGCpGCpG染色体異常