ブックタイトルがんと免疫の研究Update

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概要

がんと免疫の研究Update

18.抗体療法(免疫チェックポイント阻害療法)16518おける遺伝子発現プロファイルによる解析からもバイオマーカーが報告されている73 , 74). 最近,がん細胞における体細胞変異の数とイピリムマブ,ペンブロリズマブといった免疫チェックポイント阻害剤の治療効果が相関するとの報告がなされた75 , 76).その機序としては,がん細胞に体細胞変異が生じると異常タンパク質をつくることがあり,その異常タンパク質が免疫系に異物(ネオ抗原)として認識される確率が上がると考えられている.患者個別に全ゲノムシークエンスを行って体細胞変異をカウントする必要があるため,現時点ではコスト面の問題があるものの,今後どのように応用されるか注目される. さらに,DNA のミスマッチ修復欠損のある大腸がん患者やその他の固形がん患者では,ミスマッチ修復欠損のない大腸がん患者と比較して,抗PD-1 抗体が高い奏効率を示し,無増悪生存期間,全生存期間の延長を認めたと報告された77).おわりに 現在,悪性黒色腫,非小細胞肺がん,腎細胞がん,頭頸部がん,膀胱がん,胃がんなどで各種の免疫チェックポイント阻害剤の第Ⅲ相臨床試験が行われている.また,本章で詳述した薬剤以外にも,T 細胞の活性化を制御する抗体療法の開発が進んでいる(図18 -4).今後,さまざまながん種に対して,単独療法および従来の薬剤や新しい薬剤と併用した多くの臨床試験が行われていくことだろう. 従来の化学療法とは異なり,有害事象がほとんど生じないことが多い一方,免疫療法特有のirAE を生じてしまうと,対応が遅れた場合には副作用が重症化・遷延化することもあるため,免疫チェックポイント阻害剤を用いる場合はあらかじめこれらの副作用とその対策を知っておく必要がある. 現時点で,免疫療法による治療効果,治療抵抗,耐性のメカニズムの理解は不十分であり,免疫療法によって奏効する症例は限られている.臨床開発と連動したかたちで治療に対する感受性や毒性をあらかじめ予測できるバイオマーカーの探索を行っていくことが求められている.図18-4 T細胞の活性化を制御する抗体療法の開発状況抗原提示細胞や一部のがん細胞イピリムマブ毒性強く開発中止 (米国承認)ICOS BTLAOX40 TIM-3GITR LAG-34-1BB PD-1 PD-L1CTLA-4活性化抗体 T細胞 ブロッキング抗体CD28活性抑制第Ⅲ相試験第Ⅰ相試験第Ⅰ相試験前臨床第Ⅲ相試験前臨床前臨床前臨床? ニボルマブ (日米承認) ? ペンブロリズマブ (米国承認)