ブックタイトルがんと免疫の研究Update

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概要

がんと免疫の研究Update

2.がんの免疫監視機構からがん免疫編集132逃避相にある腫瘍ということになる.平衡相に関しては,その後,マウスの実験系での検証が報告され,発がん剤の投与後に小さな腫瘤が長期にわたりくすぶっているマウスに,抗CD4抗体,抗CD8抗体,抗IFN-γ抗体を投与して免疫不全とすると,くすぶっていた腫瘍が急速に成長することが示された8).2-3 がんの免疫監視機構の存在に対する批判と反証 化学発がん剤による腫瘍形成に関しては,免疫系,とくにIFN-γ産生細胞が存在すると,異物反応として化学発がん剤の周囲の線維化,被覆化が進み,発がん率が低下するのではないかという批判がなされた9).しかし,ほかのがん誘導法や,自然発生腫瘍による実験も行われ,やはり多くの免疫不全マウスで腫瘍の発生頻度が増加することが報告されている10).ノックアウトマウスによる発がん実験では,ノックアウトマウス作製時の遺伝子操作が不測の影響を及ぼしているのではないかという批判も可能であるが,さまざまな免疫担当細胞や免疫関連分子に対する抗体を野生型マウスに投与して,これらの細胞群および分子を消去あるいは中和する方法でも同様の結果が得られている10).図2-1 がん免疫編集における3 つの相R. D. Schreiberらは,免疫原性の高いがんが排除される排除相,がんは完全に排除されていないものの,急速に成長もしない平衡相,免疫系からの逃避,成長,転移などに有利な性質をがんが獲得する逃避相の3つの相を考え示した.マクロファージネオ抗原自然免疫と獲得免疫がんの排除CD8+ T細胞CD8+ T細胞CD8+ T細胞PD-L1NK細胞NK細胞 NK細胞TregMDSCIL-6IL-10TGF-βガレクチン-1IDO●PD-L1発現●免疫抑制細胞のリクルート●抗原減少●MHC減少などMDSC :骨髄由来抑制細胞Treg :制御性T細胞MSC :間葉系幹細胞TAM :腫瘍関連マクロファージCAF :がん関連線維芽細胞IDO :インドールアミン- 2,3 -ジオキシゲナーゼCD4+ T細胞CD4+ T細胞CD4+ T細胞NKT細胞γδT細胞γδT細胞γδT細胞MSCTAMCAF排除相平衡相逃避相