ブックタイトルがんと免疫の研究Update

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概要

がんと免疫の研究Update

第Ⅰ部 抗腫瘍免疫応答34がん種を対象としたα-GalCer パルス樹状細胞療法が報告されている10 -12).1 肺がんに対するiNKT 細胞を用いた免疫細胞療法 切除不能進行期肺がんまたは再発非小細胞肺がんの標準治療が終了した症例を対象として,α-GalCer パルス樹状細胞の静脈内投与を計4 回施行する臨床研究を施行した13).末梢血単核球中のα-GalCer 刺激特異的IFN-γ産生細胞数を測定した17 例のうち10 例で明らかな増加を認めた.α-GalCer に反応するIFN-γ産生細胞は,通常はNKT 細胞であるが,α-GalCer パルス樹状細胞の投与後にはNK 細胞が加わっており,これはNKT 細胞のNK 細胞への賦活作用と考えている.登録した23 例の全生存期間の中央値は17.4カ月,治療後にIFN-γ産生の増強を認めた10例の全生存期間の中央値は29.8カ月と,不応例と比較して有意に延長を認めた.この作用機序として,α-GalCer パルス樹状細胞を単回投与したあとの切除検体を用いた解析において,腫瘍浸潤リンパ球中に明らかに多くの活性化したiNKT細胞画分が含まれることが明らかとなった14).これらの結果から,α-GalCer パルス樹状細胞の投与による全生存期間の延長を期待し,先進医療への申請を行った.2 頭頸部がんに対するiNKT 細胞を用いた免疫細胞療法 頭頸部がんにおける腫瘍局所での効率的な免疫反応を誘導するため,α-GalCer パルス樹状細胞の投与法の検討を行った結果,鼻粘膜(下鼻甲介)下に投与した場合,投与同側の頸部図4-2 肺がんおよび頭頸部がんに対する樹状細胞の投与方法肺がんの場合にはα-GalCerパルス樹状細胞の静脈内投与を行い,肺内でiNKT細胞の活性化を図る.末梢静脈から投与されたα-GalCerパルス樹状細胞は,早期は肺内に留まり,24時間以内に肝臓や脾臓などへ移行する.頭頸部がんの場合には患側鼻粘膜下に投与することで,α-GalCerパルス樹状細胞は頸部所属リンパ節へと移行し,そこでiNKT細胞の活性化を図る.鼻粘膜下投与iNKT細胞がん樹状細胞採血静脈内投与末梢血単核球α-GalCer