ブックタイトルがんと免疫の研究Update

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概要

がんと免疫の研究Update

第Ⅱ部 腫瘍免疫制御124所属リンパ節や腫瘍内のTreg の数が減少することが動物モデルやヒト検体の解析結果から報告されている9 , 10). CD80,CD86はすでに述べたとおり,おもに抗原提示細胞上に発現されるCD28,CTLA-4のリガンドであるが,最近,CD80 がPD-L1との相互作用によってT 細胞機能を抑制することが明らかにされた11).したがって,実際には抗原提示細胞やT 細胞に発現されたこれらの分子が双方向性にシグナルを送りながら,免疫反応を複雑に制御している可能性がある.2)PD-1 PD-1 は,エフェクターCD4+ T 細胞およびエフェクターCD8+ T 細胞の活性化に伴ってダイナミックに発現される共抑制分子であり12),その代表的なリガンドはおもに抗原提示細胞や腫瘍細胞に発現されるPD-L1である.PD-L1はTCR で抗原を認識して活性化したエフェクターT 細胞が放出するサイトカイン,インターフェロン-γ(IFN-γ)により腫瘍上にダイナミックに発現される.したがって,腫瘍特異的T 細胞が腫瘍を攻撃する効果相において,PD-1とPD-L1の結合によるT 細胞の抑制が強くはたらく.実際,がんに浸潤するがん抗原特異的CTL は選択的にPD-1 による抑制を受けていることが明らかにされた13).PD-1 はTreg には恒常的に発現されており,その分化や機能維持を担うことが示唆されている.CTLA-4 と同様,PD-1 ノックアウトマウスでは,腎炎,関節炎,心筋炎など多彩な自己免疫疾患が自然発生することが知られている. 抗PD-1 抗体は抗CTLA-4 抗体についで臨床応用された免疫チェックポイント阻害剤であ図15-2 がん免疫誘導相に関与するおもな共刺激分子,共抑制分子リンパ節などで抗原提示細胞に提示されたがん抗原を,がん特異的T細胞がT細胞受容体(TCR)によって認識する(シグナル1).その際,補助刺激(シグナル2)を担う分子(共刺激分子,共抑制分子)とそのリガンドのおもなものを示す.がんに対する免疫反応を増強するシグナルを緑,減弱するシグナルを黒で示す.エフェクターT細胞制御性T細胞抗原提示細胞がん免疫誘導相抑制シグナル 活性化シグナル 活性化シグナル,機能発現 抑制シグナルCTLA-4PD-1TIGITBTLATIM-3LAG-3PD-L1 HVEMCD155ガレクチン-9CD80ICOSCD274-1BBOX40GITRCD226CTLA-4PD-1ICOSTIGITLAG-3CD704-1BBLOX40LGITRLCD155ICOSLCD27TIM-3PD-L1 CD155ガレクチン-9CD80 ICOSL CD70MHCクラスⅡMHCクラスⅡOX40GITROX40LGITRL