ブックタイトルがんと免疫の研究Update

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概要

がんと免疫の研究Update

第Ⅲ部 治療への応用134的に試みられていたが,十分な治療効果が得られなかった.その後,同様の目的で,腫瘍浸潤リンパ球tumor-infiltrating lymphocyte(TIL)が用いられた.TIL は腫瘍に集積する性質があり,抗腫瘍活性が強いと考えられたためである.実際にTIL を取り出し,増幅して投与するTIL 療法がメラノーマ(悪性黒色腫)患者において試みられたところ,LAK 療法よりは有効性が高いことが報告されている.しかし,TIL 療法は煩雑であり,一般化するには至っていない. そこで,遺伝子操作によりT 細胞の腫瘍ターゲティング効率を高めるストラテジーの臨床開発が最近進んでいる.ターゲティングの方法としては,抗体分子を含んだCAR を患者T 細胞に発現させる方法が注目されている.B 細胞性腫瘍の場合,標的となる腫瘍細胞の表面抗原の1 つであるCD19 抗原(B 細胞の分化抗原)に対する抗体のFab 部分を単鎖抗体のかたちで利用し,それとCD3ζ鎖のキメラ分子(キメラ抗原受容体)をT 細胞に発現させる方法である1, 2)(図16 -1,図16 -2).この第1世代のCAR を用いた場合は,in vitro では抗腫瘍活性が認められたものの, in vivo では効果が不十分であった.そこで,つぎの段階としCAR-T 遺伝子治療:がん関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現させた患者T 細胞を体外増幅して輸注する養子免疫遺伝子療法.抗体を利用して特異性を付与し,有効性を高めた遺伝子操作T 細胞療法の1 つ.TCR 遺伝子治療:がん関連抗原を認識するT 細胞受容体(TCR)を遺伝子クローニングし,それを発現させた患者T 細胞を体外増幅して輸注する養子免疫遺伝子療法で,特異性を高めた遺伝子操作T細胞療法の1 つ.サイトカイン放出症候群(CRS):遺伝子操作T 細胞療法を行った場合,活性化T 細胞から放出されるサイトカインが引き起こす治療初期の副作用であり,発熱,低血圧,さまざまな神経症状などが出現する.この治療にはトシリズマブの投与が有効である.解説図16-1 キメラ抗原受容体(CAR)の構造共刺激シグナル発生ユニットを1つ含んだものが第2世代CARとよばれている.CD28または4-1BB共刺激シグナル発生ユニット(CD28または4-1BB)の追加単鎖抗体第1世代CAR 第2世代CARVH VLモノクローナル抗体T細胞受容体VLVHCD3ζCD3ζ