ブックタイトル免疫学コア講義 改訂4版

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概要

免疫学コア講義 改訂4版

基礎免疫学編146する免疫応答が増強し,がんを駆逐できること,一方,Treg の認識抗原を免疫することによりがんに対する免疫応答を抑制し,野生型マウスの化学発がん剤による発がん促進,マウス移植腫瘍の増悪が起こることから,CD4+Treg はがん免疫応答抑制において重要な役割を果たしている.また,胃癌,卵巣癌,悪性黒色腫をはじめとする種々のがん患者で,末梢血およびがん局所に浸潤しているTreg の割合が健康人に比べて増加しており,がん局所でのTreg 数の増加,CD8+T 細胞/Treg比の低下は,予後不良因子となる.これらのことから,がん免疫療法の成功にはこのようながんの免疫逃避機構をコントロールすることが不可欠である.5)がんに対する免疫療法(図17-2) がんに対する免疫応答を活性化するために,生物に由来する物質,細胞を最新のバイオテクノロジー技術などを用いて大量に合成し,製剤として用いることが進んできている.これらを生物学的反応修飾剤biological response modifier(BRM )ると標的がん抗原の発現を低下,消失させる,③抗アポトーシス分子などの誘導により免疫担当細胞の殺傷効果を回避する,④がん微小環境に存在するグルコースなどをがん細胞が解糖系の亢進により過剰に消費する(ワールブルク効果)ことにより,エフェクターT 細胞の活性化に必要な代謝を抑制する,⑤ 免疫抑制細胞〔CD4+ FoxP3+ 制御性T 細胞(Treg),MDSC,抑制性マクロファージなど〕や免疫抑制性物質(IL -10,TGF-β,プロスタグランジンなど)を産生する,⑥ 免疫系は過剰な免疫応答をコントロールし,免疫応答の恒常性を維持するためエフェクターT 細胞に免疫抑制シグナルを伝達する免疫抑制機構を有している.その1 つが免疫チェックポイント分子(p. 147,Advance 参照)とよばれる分子群である.がん細胞は生体内で増殖する過程で,これらの免疫チェックポイント分子を利用して,抗腫瘍免疫応答を積極的に抑制することなどがあげられる. たとえば,CD4+Treg の場合は,マウスモデルにおいてTreg を除去することによりがんに対図17-2 さまざまながん免疫療法リンパ節TAM樹状細胞活性化T細胞MDSCTreg CARTregTCR導入T細胞CAR導入T細胞がん細胞不活性T細胞単球Fc受容体NK細胞TIM-3LAG-3CTLA-4細胞療法抗原提示細胞免疫チェックポイント阻害療法TCR 活性化T細胞抗PD-1抗体抗CTLA-4抗体CD80/CD86HLA-ペプチドCD28 PD-1PD-L1がんワクチン療法樹状細胞療法   TAM:腫瘍関連マクロファージ,MDSC:骨髄由来抑制細胞