ブックタイトル「はたらく」を支える!職場×発達障害

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概要

「はたらく」を支える!職場×発達障害

90こともできず,周囲からは「何度言っても同じミスをする」「やる気がないのか」「集中して仕事をしろ」と指摘されることが多かった.相手の言ったことを言葉どおりにとらえてしまうまた,相手が何を考えているのか,どんな気分でいるのかを想像するのが苦手で,相手の言ったことを言葉どおりにとらえてしまうことがあった.学生時代のアルバイトでミスをした際に,店長に呼ばれ「何でミスをするんだ!」と叱られた際に「忘れたから忘れました」と答え,さらに激しく怒られたことがあった.自分では「何で」と言われたから,「忘れた理由」を質問されたものと思い答えたことであった.メモをするなどの努力でカバーするが…就職してからは記憶力を補うために,自席のみならず,つねにメモ帳と筆記用具を肌身離さず持ち歩き,会話をする際は必ずメモを取っていた.話を聞くことと,キーワードを抽出し要約することを同時に実行するのは困難で,とにかく相手の話すことを,話のスピードに負けないように必死に一字一句メモしていた.話された内容は,記憶からさっぱりと消えてしまい,メモを見ないかぎり思い出すことは困難だった.相手から「○○を△△にしてくださいね,お願いします」と言われた直後に,自分から「○○を△△ですね.分かりました」と声に出して復唱すれば,記憶に残りやすいかと考え,一時期実行してみたが,効果はほとんどなかった.上司から叱責を受けることが多くなるそれでも就業時間内は必死に業務を遂行し,職場内で平均的なパフォーマンスを発揮し,周囲からも一定の評価を受けていた.経験年数が増えるにつれ,任される業務の種類は増え,業務量も増えていった.質的,量的な労働負荷の増加に伴い,強い疲労感から集中力を欠き,記憶の苦手さと相まってミスにつながることが多くなり,上司から叱責を受けることが多くなった.上司の顔色を伺うことにつねにエネルギーを費やすまた,上司に業務内容について相談するだけで怒られることもあった.後から,その様子を見ていた同僚に「部長があんなに機嫌悪そうにしているのに,何であのタイミングで,そんなことを相談に行ったの?」と不思議そうに質問された.同僚からみると,その日の部長は朝から明らかに不機嫌な表情で,忙しそうに仕事をしていたらしいのだが,そのことに全然気付けなかった.メンタルクリニックを受診,うつ病と診断されるそのような仕事の仕方を10 年以上続けていたが,メモを取ることや上司の顔色を読むことに常にエネルギーを使い,同僚から疎まれている感じを強く感じるようになった.ま第2章 発達障害と分かったら