ブックタイトル「はたらく」を支える!女性のメンタルヘルス

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概要

「はたらく」を支える!女性のメンタルヘルス

では,女性の不本意非正規雇用割合が増え,非正規雇用就業を選択した理由に,「正社員として働ける会社がなかったから」とする回答割合が,全体でも18.6%と高いが,派遣労働者では41.4%,契約社員では35.8%と約2 倍,若年層では約1.5 倍とさらに高い.これらの結果から,雇用形態の種類と選択理由には留意する必要がある.厚生労働省の調査によると,正社員・正職員以外の女性の賃金は,どの年代でも20~24 歳の正社員・正職員の女性を下回り,各年齢階級別にほぼ横ばいで推移している(図1-1-1).そのため,働く女性の賃金は,フルタイム男性労働者の72.2%に留まっている.女性の高学歴化(女性48.2%.男性55.6%,2016 年度の大学進学率)は人的資本上の男女格差を縮小させたが,コース別雇用管理制度によって,女性は一般職が多く総合職の採用が少ない.なお,2015 年の人口動態統計によると,女性の初婚年齢は29.4 歳,第一子出産年齢は30.7 歳,合計特殊出生率は1.45 となっている.C 働く女性のストレスとメンタルヘルス指標の状況厚生労働省による2012(平成24)年の「労働者健康状況調査」で,「職業生活で悩みやストレスがある」と回答した女性労働者の割合が61.9%,男性労働者は60.1%と,旧労働省時代の1982(昭和57)年より5 年ごとに実施されてきたこの調査で,初めて女性が男性を上回った(図1-1-2) 4).一方,自殺についても人数は総数で2016 年に21,764 人と減少傾向で女性は男性の45%程度だが,女性の自殺率の国際順位は,男性よりも高い.「精神障害に関する事案の労災補償状況」について,2014(平成26)年度から女性の内数が発表されるようになった.2016(平成28)年度は,請求件数は1,586 件(うち女性627 件),決定件数1,355 件(うち女性487 件),支給決定件数は498 件(うち女性168 件)と増加している 5).精神障害発病の原因となった業務上の出来事では,「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,または暴行を受けた」は決定件数173 件(うち女性68 件),支給決定件数74 件(うち女性28 件)と,他の出来事と比較して,女性比率が高かった.特に「セクシュアル・ハラスメントを受けた」は決定件数50 件,支給決定件数29 件のうち28 件が女性であった.なお,支給決定件数のうち自殺(未遂を含む)は,84 件で,そのうち女性は2 件と少なかった.男女別にみた通院率では男女差がみられ,女性の通院率のほうが高い傷病が多い.精神・神経関係では,うつ病や心の病気,認知症については女性が男性よりも通院率が高い.うつ病は,女性ホルモンの影響を受けやすく,月経前(月経前不快気分障害),出産後(産後うつ病),更年期(更年期障害)などで増加する 6).うつ病以外にも日本の女性のライフステージに関連した女性特有の疾患とメンタルヘルス,ホルモン環境の変動と妊娠・出産などライフイベントの影響を受ける(図1-1-3) 7).妊娠女性の年齢は,「母子保健の主なる統計」2017 年版によると,35 歳以上が約28%,30 歳以上は60%以上になっている.妊娠女性の高年齢化は,4第1 章 女性のメンタルヘルス動向とトピック