ブックタイトル「はたらく」を支える!女性のメンタルヘルス

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概要

「はたらく」を支える!女性のメンタルヘルス

A 双極性障害の症状と性差双極性障害は,抑うつエピソード(うつ状態)と躁病エピソード(躁状態)の二つの病相を繰り返す病気であり,躁状態の程度により躁病エピソードを有するⅠ型と軽躁病エピソードを有するⅡ型に分けられる.DSM-5 の診断基準では躁病エピソードでは気分異常の明らかな期間が少なくとも1 週間持続すること(双極Ⅱ型は4 日以内),抑うつエピソードでは2 週間以上持続することとされている.躁状態では気分が高ぶり,眠らずに活動しても平気で,次々とアイデアが湧き,誇大的となる.一方で,考えが次々と移り集中できず,金銭を浪費したり,性的逸脱行動がみられたりする.うつ状態ではうつ病と同様の症状で億劫な気持ちになり何も楽しめず,気持ちの落ち込み,会話や思考の速度が遅くなる,自責感や希死念慮を認めるなどの症状がある.そして,これらの両エピソードが改善したときには上記の症状は消失する.双極性障害の生涯有病率は1%未満である.うつ病では女性の有病率は男性の約2 倍であるのに対して,双極性障害の有病率には明確な男女差はないとされている.しかし,双極性障害の様相には性差がある.711 名の双極性障害患者を前方視的に調査した多施設大規模調査 1)では,女性のほうが男性よりもうつ病相の経験数とうつ病相に伴う入院回数が多く,うつ病相の期間は長かった.また,急速交代型(過去12 ヵ月間に4 回以上の気分エピソードを認める)や不安障害の併存は女性に多い傾向であった.一方で,躁病相については男性のほうが生涯エピソード数は多い傾向であった.女性では男性に比べ躁病相よりもうつ病相のほうが問題となりやすいことがわかる.双極性障害患者では23~26%に自殺企図を認め,男女比は1.7:1と女性に比べ男性のほうが自殺の完遂は多く,全自殺の3.4~14%を占め 2),双極性うつ病エピソードでの自殺は少なくない.B 性差に配慮した治療治療は薬物療法が柱となるが,それを支え強化するために,当然,心理社会的療法は重要であり,以下に述べる薬物療法を行うと同時に,心理教育,疾患教育,支持的精神療法,認知行動療法,対人関係療法などを併用していく.双極性障害は慢性疾患であるために,単に薬物療2双極性障害208