ブックタイトルいまどきの依存とアディクション

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概要

いまどきの依存とアディクション

6る」などの理由で,職場と連絡を取ることについて本人の承諾を得て,職場との協力体制構築をはかるべきでしょう.連絡先としては総務を通して相談を行います.職場内の衛生担当者(企業規模・業種に応じて安全衛生管理者,衛生管理者,衛生推進者など)と連絡を取るのがよいと思われますが,会社によって体制は異なるため,まず総務と相談するのがよいでしょう.担当者に現在医学的に把握している内容について簡単に説明するとともに,医学的管理の必要性,会社として対応策を検討してほしいことを説明します.必要に応じて産業医と連絡を取り,定期的な管理をどこで行うかを相談するとより確実となります.その他の介入については,本書part Ⅱ.3.E を参照下さい.[ 吉本 尚]精神科医はこう考えるアルコール依存症を疑う飲酒問題が比較的重篤な患者が医療機関を受診してアルコールの話題に触れられるとき,アルコール依存症(いわゆるアル中)と今なお差別の残るレッテルを張られ,自分にはとても無理に思える断酒を強いられ,断酒したら趣味もなく楽しみがなくなり,断酒できなかったら意志の弱い人間と評価される,といった不安を多くの患者が抱いていると考えられます.まずは,こうした心理を当然のことと受け止めてから診察に望みましょう.1) 健診のデータからわかることこの男性患者のγ -GTP の値が1,336 IU/L と4 桁で,ALT も122 IU/L の異常値を示し,毎日の飲酒歴があることから,可能性として,まずアルコール性肝障害が疑われます.さらに,この肝機能障害がアルコール性の肝障害であれば,背後にアルコール依存症の存在が強く疑われます.またそうであれば,患者が飲酒量や生活習慣について語ろうとしないのは,先に挙げたような不安もあって否認の防衛機制が働いているからだと思われます.否認とは,「自分には大したアルコール問題がない」と問題を矮小化し,「自分のアルコール問題は〇〇のせいだ」とその原因をほかに求め,責任を回避するような心理機制を指します.