ブックタイトルいまどきの依存とアディクション

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概要

いまどきの依存とアディクション

7また,このような心理機制が働いていることは,この患者のアルコール問題が深刻化していることを示唆しています.穿った見方をすれば,この患者が「2 年前に妻と離婚し独居中」となった一因には,アルコール問題があったのでしょう.2) 診断をする前に上記のことはあくまで推測にすぎませんから,最終的に診断をする際には患者の口から飲酒量や頻度,あるいは飲酒に関連した問題を話してもらうことになります.そのうえでアルコール依存症なのか診断し,治療目標を設定することになりますが,この患者の場合,診断をする前にまず治療者と患者の信頼関係を築く必要があるようです.できるだけ治療者に心を開いて,正直に話してもらえる関係が重要です.初回の診察で診断することにそうこだわる必要もありません.患者に飲酒状況を確かめるために,「正確な診断のために飲酒状況を知る必要がある」「正確な診断がわからないと会社に提出する意見書が書けない」と駆け引きをすることもできますが,そのアプローチでは診断はできても治療の進展は期待できません.まずは,患者が独居で仕事をしながら生活していることに優しく共感の態度を示してみましょう.「お仕事も忙しいのに,疲れて帰ってそれから家事を1 人でこなすのも大変でしょう.食事などは規則正しくできていますか?」「夜は眠れていますか?」「周囲に気をつかいすぎて,ご自分の健康がおろそかになっていませんか?」などと,日常生活や健康を話題に声をかけてみましょう.こうした言葉かけは,主治医よりは看護師さんのほうがふさわしく上手かもしれません.多量飲酒者,特にアルコール依存症患者では,飲酒による問題を含め,これまでの喪失体験,挫折体験からしばしば孤立感や劣等感を抱いていることも多いのですが,態度はその裏返しで他者に強がって見せることもしばしばです.患者の拒否的な,ときには横柄な態度に振り回されず,その本心を見抜いて受け入れ,患者の境遇や苦労に共感を示しましょう.患者の優れた点やよい点を見いだし,上手にほめて,治療関係を築くことを目標にしましょう.患者との信頼関係ができる前にアルコールの話題に踏み込んでも,先に述べたように正しい情報は得られませんし,好ましい結果も得られません.たとえば,「肝臓が弱ると,身体が疲れやすくなったり,だるくなったり,ときには食欲がなくなったりたりし危険ドラッグ非向精神薬/OTC薬危険ドラッグ以外の違法薬物ベンゾジアゼピン系抗不安薬・向精神薬その他のアディクションアルコール