ブックタイトルいまどきの依存とアディクション
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いまどきの依存とアディクション
31患者・家族からのメッセージ③私の夫はアルコール依存症で断酒して5 年になります.断酒して2 年6 か月目に前立腺がんが見つかり,前立腺摘出手術を受けました.その2 年後の検診で,泌尿器科医師より「ほぼ完全に前立腺癌は治りました.今後は何をしてもいいです.お酒も飲んでいいです」と言われたと,夫が言いました.アルコール依存症の治療は唯一『断酒』.一口も飲まないこと.一口でも飲めば『再発』する.再発とはアルコール地獄に再び落ちること.断酒というクモの糸にしがみついてアルコール地獄から抜け出そうとしているアルコール依存症者と家族の足を引っ張る「お酒飲んでもいいですよ」という言葉は今の平穏になった日々を奪う悪魔の囁き以外の何物でもありません.それが白衣を着た医師なのですから,家族にとっては「何ということを言ってくれるのか」と思わざるをえないのです.また,アルコール依存症者には『否認』という厄介な症状があり,否認症状があるからアルコール依存症であるとも言われています.要するにアルコール依存症者本人は自分がアルコール依存症という病気に罹っていることを認めない,認めたくないということで,夫も断酒して5 年経っても否認症状は根強く残っています.「俺はアル中じゃない.だから冠婚葬祭には飲むぞ.冠婚葬祭に飲んだからといって,日々の晩酌をするような連続飲酒にはならん」と飲みたい時たまに言い出します.家族としては「一口でもお酒を飲んだら離婚します.お酒を飲むあなたと暮らすことはできません」と宣言して,再発を何とか防いでいるのが現状です.専門外とはいえ医師から「お酒を飲んでもかまいませんよ」と言われてしまうと,断酒という細いクモの糸にすがって必死でアルコール地獄から抜け出そうとしている本人と家族は,再びアルコール地獄に落ちることになるのです.専門外であっても医師という科学者として,下記のように伝えて欲しいとアルコール依存症者の家族の私は切に願います.①アルコール依存症の治療は断酒しかない②お酒には毒性がある③お酒は人間という生物が生きていくのに必要不可欠な物質ではない〔家族 女性 supported by 猪野亜朗〕