ブックタイトルぼくらのアルコール診療

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概要

ぼくらのアルコール診療

224 在宅医療の現場では,多くの介護者たちが,家族の病状や衰弱の進行とそれに伴う介護負担というストレスにさらされる.介護者のなかには,その不適切なコーピングとして,危険飲酒行動を選択し,気づかれずにアルコール依存症に陥るケースがあり得る.また家族に,介護者でもあるがアルコールの問題をもともと抱えている人物がいる場合,主介護者が2 重の介護負担を強いられることがある.これらのケースはいずれも,主介護者がその役割を果たせず,在宅医療の続行が困難となることを意味する. ストレッサーとは,「個人によりネガティブに評価され,その個人に心理的ストレス反応を引き起こす刺激事態」と定義される1).個人がストレッサーにより引き起こされた心理的ストレス反応を経験すると,その個人はそれを低減することを目的とした行動,すなわちコーピングを行う.ここでの行動とは,思考と行為を含む広義の行動を意味する.重要なのは,問題処理のプロセスとは異なり,心理的ストレス反応への対処としてコーピングが行われることにある.A 介護者とアルコール問題B 在宅介護者におけるストレスモデル介護者にアルコール問題がある場合にはどう対応すればいい?本項では,在宅医療の現場で介護している家族にアルコール問題をみつけた場合の対処法をまとめてみた.最初にポイントを提示しておく.・ 介護とアルコール問題の双方を抱えた危機的局面である・ 介護者のストレスモデルを評価する・ コーピングとしての飲酒行動の有無と程度を評価する・ 家族図を描き,相互の関係性を俯瞰してチームで対応する32D 往診先