ブックタイトルぼくらのアルコール診療

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概要

ぼくらのアルコール診療

56はじめに アルコール問題を抱える人は「いうことを聞かない」「飲んでいるのはわかっているのに平気で嘘をつく」「暴れる」「暴言を吐く」「何度治しても,飲んでまた悪くなる」「やめる気がないからどうしようもない」「ちょっとくらい飲まないと人生楽しくないよ.完全にやめるようになんていえない」といった理由で,アルコール問題を抱える人にはかかわりたくない,というのが医療者側の本音だろうと思う. しかし,これこそがアルコール問題を抱える人の症状そのものなのである.まさに飲酒の習慣がそのような症状を出させているのであり,「本来のその人」がどうしようもない人間ではないのである.「アルコールによって起きている問題」と「本来のその人」を分けてみることが最も大切である.「本来のその人」は,われわれと同じ普通の人間なのだ. 酔っぱらっている人の態度や暴言にさらされているときも,おとなしく受診している人を診るときも,いつもこのことを思いながら診療したいものである. 診療所での一般内科医としての経験のなかで,アルコール問題を抱える人,がん患者を含むすべての患者に対して,常に大切な姿勢として考えてきたことは次のようなことである.① 多量飲酒やアルコール依存症は,糖尿病などのほかの慢性疾患と同じ「普通の病気である」ことを念頭に置き,治療の対象とする.② 患者には知る権利,学習する権利,自己決定する権利などがあり,これはアルコール問題を抱える人やアルコール依存症を抱える人に対しても同様であることを忘れず,病気を正しく理解アルA コール問題に対する医療者側の姿勢・接し方医療者側の「アルコールに関する10 ネガティブな感情」とのつき合い方