ブックタイトル土曜日の紹介は嫌われる
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土曜日の紹介は嫌われる
地域包括ケアにおける規範的統合の実例として 日本は地域包括ケアの時代を迎えた.地域包括ケアは,医療・介護・福祉の統合に関して地域ごとに最適解を創出することである.地域における問題(個人の問題だけにとどまらない)に関連するさまざまな職種がチームを組んで取り組むこと,これは水平統合と呼ばれる.また,地域にかかわるさまざまな施設,たとえば診療所,小病院,大病院,さらに療養施設などを,1 人の地域住民あるいは患者は状態に応じて移動していくが,この連携がスムーズに行われることを垂直統合という.これらの統合がうまくいくためには,価値や文化の共有あるいは相互理解が必須である.たとえば,健康や病いに関する価値観はしばしば職種ごとに,あるいは施設ごとに異なることがあり,その差異によってケアがスムーズにいかないことがよく生じる.こうした価値観や文化の相互尊重・理解は規範的統合と呼ばれる. 本書に収められた対話は,病院総合診療医と診療所家庭医の連携に必要な規範的統合の枠組みを探る試みであるといえる.たとえば,在宅の発熱の患者を診て病院に送る側,そしてその在宅患者を受ける側が,高齢者の発熱について共通のルールをどのように形成していくかの対話こそが,規範的統合の具体的内実であることがよくわかる. また,こうしたかなりSensitive な対話が成り立つのは,病院総合医と診療所家庭医がそこに至るまでの多くのトレーニングの内容が共通であり,患者とは? 健康とは? 医療者はどうあるべきか? といった根本的価値観が共有できているということに他ならない. 本書をきっかけに,多くの地域で規範的統合に向けた,施設間での生産的な対話が生まれることに期待したい. 2017 年10 月藤沼康樹