ブックタイトル先生,漢方を鍼灸を試してみたいんですけど……
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先生,漢方を鍼灸を試してみたいんですけど……
168はじめに 多忙な西洋医学的診療のその合間をぬって東洋医学的な舌診・脈診・腹診を行い,漢方処方を決定することは困難といわざるを得ない.しかしながら,問診で(たしかにこれも西洋医学的な問診よりは詳細で時間が必要だが)かなりのところまで漢方処方の鑑別を絞り込むことができる.その問診の実践的なコツをこれから提示する.気き・血けつ・水すいの病態の鑑別(表1) まずは気・血・水のどこに問題があるのかを探る.その際に意識すべきは,「症状を悪化させる要因(trigger)は何か?」である.東洋医学では,気・血・水が円滑に流れることによって生命が営まれているという人体概念を基に診察している.a.「気」について 最初に,「気」についてであるが,これは生命エネルギー(vital energy)物質的なものではなく,機能的(function)なものを現している.① 気が足りない「気き虚きょ」と,② 気が滞っている「気き滞たい」の2 つにその病理が分類される(なお,「気き逆ぎゃく」は「気滞」に含まれる). ①の「気虚」では,エネルギー不足となるので元気がなくなり疲れやすくなる.典型的な疾患としては,慢性疲労症候群があげられる. ②の「気滞」では,イライラしたり,落ち込みやすくなったり,ストレスに弱くなる.典型的な疾患としては,うつ病があげられる. 「気」についての重要な問診は2 つ.①“肉体的労作によって悪化する症状”は「気虚」であり,②“精神的労作によって悪化する症状”は「気滞」である.また,①「気虚」の症状に日内変動や季節性の変動は少ないが,②「気滞」では,日内変動や季節性の変動がみられる.b.「血」について 次に「血」についてであるが,西洋医学的な意味での血液とその東洋医学的な問診から進める漢方の診察法