ブックタイトル危険なサインの謎を解く

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概要

危険なサインの謎を解く

危険なサインと全体イメージ5る.人間はとっさの危機的事態に対して,最初に直感的に気づき,無意識に反応あるいは行動し,その後に意識的に分析する.危険の察知においては,「直感は理性に先立つ」ほうが有利である*4.全体イメージ 前項では直感を医療者のサバイバルシステム(「外」の危険)として説明したが,以降本書では,患者自身が生き残るためのサバイバルシステム(「内」の危険)に限定して解説する. 人間は社会的な動物であり,日常生活では他者と円滑にコミュニケーションをとりながら,一貫性のある,理性的で協調的な言動や行動をとる.一方で,身体の「内」に命の危険が発生すると,サバイバルシステムが強く発動し,自分の意思や感情に関係なく,日常モードのコミュニケーションや行動が一変し,非常事態モードに変更される.「社会生活」のためから「生き残る」ためへと,「全体」のモードを変更するよう仕向けられるのだ.その結果,患者の「雰囲気」が大きく変化する(図2).加えて,内臓機能も図2  サバイバルシステムの発動と全体イメージ生命の危険に対してサバイバルシステムが活性化すると,全身が非常事態モードとなり,全体イメージが変化する.全体イメージを理解するためには,日常モードから非常事態モードへの変化という見方が重要である.*4:例えば森のなかで,ヘビか棒きれか見分けがつかないものに,ふいに出くわしたとする.そのときわれわれは,ヘビ(真の危険)なのか棒きれ(偽の危険)なのかを見分ける前に,無意識のうちに急に動きを止める(フリーズ状態).「ヘビかもしれない」という危険を直感し,意識することなくとっさに身体が反応し,そのあと本当にヘビなのかどうかを確かめる.「とにかく立ち止って,その後でじっくり考える」のが,危険を回避するサバイバルシステムの機能として合理的である.