ブックタイトル高齢者のポリファーマシー

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概要

高齢者のポリファーマシー

4 慢性腎臓病105 糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)患者および軽度以上のタンパク尿を呈する糖尿病非合併のCKD 患者では,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与が第一選択として推奨されている1).高齢のCKD 合併高血圧患者においてもレニン?アンジオテンシン(RA)系阻害薬投与症例が増加しており,腎機能低下や高カリウム血症の発症が増加している2).RA 系阻害薬は,同等の降圧レベルであっても,他の降圧薬よりも尿タンパク減少効果が強く,腎障害の進展を抑制する.これは,RA 系阻害薬が糸球体輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を低下させることが大きな要因である.一方,心臓から糸球体輸入細動脈に至る血管系の内腔が狭小化しているような病態(腎硬化症や間質性腎炎など)では糸球体高血圧を来しにくいため,タンパク尿も軽度にとどまることが多く,上述したようなRA 系阻害薬による抗タンパク尿効果や腎保護作用については確立していない. 高齢のCKD 合併高血圧患者は,タンパク尿が陰性もしくは軽度でGFR が低下した患者が多い.このような患者の腎機能低下の要因は動脈硬化による腎硬化症もしくは虚血性腎症が多いと推定され,必ずしも糸球体内圧は上昇していない.また,高齢者ではCKD 患者の5~22%が動脈硬化性腎動脈狭窄症を合併していると報告されている.高齢のCKD 合併高血圧患者は軽度の過降圧により,腎糸球体への灌流圧が低下し,急性腎障害を来すことがある(正常血圧虚血性急性腎障害).特に,RA 系阻害薬の使用時は,糸球体内圧の過降圧を来しやすく,注意を要する(図3?3)3). 高齢者では,RA 系の低下に伴い高カリウム血症を来しやすい.アルドステロン受容体拮抗薬併用により高カリウム血症が増加したことや4),RA 系阻害薬の併用や直接的レニン阻害薬5)の併用により,高カリウム血症のリスクが増加することも報告されている6).      オルメサルタン20 mg/日とアムロジピン2.5 mg/日へと処方変更し,朝食前に血圧を測定して,収縮期圧<110 mmHg の場合はオルメサルタン10 mg/日へと減量するように指示した.その後の処方