ブックタイトル生きると向き合うわたしたちの自殺対策

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概要

生きると向き合うわたしたちの自殺対策

147はじめに 自殺企図,強い希死念慮を伴う重症度の精神疾患をもつ人は,プライマリ・ケア医のみで抱え込まず,精神科医への紹介が推奨される.この際「よい精神科医を紹介してほしい」という質問,つまり適切な治療をする精神科医の見分け方についての問いを,しばしば受けてきた.もっともな質問であるが,意識して地域の医療機関の情報を集めているつもりでも,返答に窮してきた経験がある.プライマリ・ケア領域から精神科へ患者紹介する際に留意すべきことを,筆者自身の経験と,同僚精神科医,保健師,精神保健福祉士(PSW)の意見をまとめたものを紹介する.ここぞというときの一助となれば幸いである.切迫した自殺企図の際 状況から明らかに自殺企図の危険性があり,ただちに(24時間以内に)入院させるべきと判断したとき,すでにプライマリ・ケア-精神科の連携ができている地域ならば,精神科救急担当の特定の病院へ相談できるが,あうんの呼吸とまでは連携できていない場合,「精神科救急ダイヤル」などの名称で,各行政区に設置されている精神科救急の場合に受診すべき医療機関を確認できる窓口に相談することができる.小児科の救急相談の精神科版といったところのサービスであるが,行政区によって広報に差があり,緊急時にインターネットで調べようとしてもなかなかみつからないこともあるため,事前に各行政に確認しておくことを勧める. 患者に是が非でも入院してもらい,自殺企図から守ろうと決めたならば,精神科医の立場から,紹介時に二親等以内の家族(配偶者,親,成人の子)か成年後見人がいる場合には,必ず同伴していただくことをお願いしたい.詳細な法律の説明は割愛するが,医師が切迫した自殺企図があると判断して紹介入院となる場合,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下:精神保健福祉法」の医療保護入院となることが多い.つまり同意ができないほど患者の精神症状が重症なため,患者本人に代わって,家族などと精神保健指定医1人の同意によってなされる入院である.精神保健福祉法は度々改正されているが,年を追うごとに患者の人権への配慮が強くなり,医療精神科医との付き合い方─精神科医の立場から─26