ブックタイトル生きると向き合うわたしたちの自殺対策

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概要

生きると向き合うわたしたちの自殺対策

Part1.自殺と向き合う106衝動性という重要な自殺危険因子 救急隊や警察などから,「死んだっていい!」と家を飛び出した子ども,あるいは,「死んでやる!」と刃物をもった子どもを保護しているので,すぐに診察してほしいとの連絡を受けることがある.原因は些細なことで,ゲームをやめるよう注意され腹が立った,深夜までスマホをいじっていることを注意されムカついたなどさまざまである.CASE② 中学生の男子B男は,当直の夜に,警官2人に同行されて受診した.母親にゲームをやめて早く風呂に入るように何度もいわれたために腹を立てて家を飛び出した.深夜になっても帰宅しないため捜索願が出されたが,自宅近くで発見された.よくある親子喧嘩の類なのだろうと話を聞いていたが,やがて,B男には特殊な背景があることがわかった.B男の兄が高校生のときに,同様に些細な口論から家を飛び出し,数日後に,溺死体で発見されていた.兄の死は,事件性は否定され,転落事故とされていたが,自殺の可能性が高かった. 10?29歳までの年代別死因2位は不慮の事故である.転落事故や交通事故と判断されたケースのなかには,もしかすると,死んでもいいという自暴自棄な行動による死も含まれているのかもしれない. 衝動性が高く,ときに激しい攻撃性を呈する子どもは,自殺の危険が高まりやすい性格であるといえる.過去に何らかの刺激が加わった場面で,衝動的な行為に至ったことがある子どもについては,詳細な聴き取りが必要である.診察室での対応について 見立て(診立て)の作業は,子どもを丁寧に観察し,非言語的なメッセージも受けとめ,誰が困っており,なぜ受診に至ったのか慎重に情報を集め,これからの支援の方針を検討する作業となる. 待合室での親子の様子も重要な情報となる.入室後は,ねぎらいや共感の言葉をかけ,寄り添う姿勢を伝える.子どもと親,同席か個別か,順番をどうするかは,診療スタイルによるが,筆者は,まず親子一緒に入ってもらい,その後,子どものみと面談することが多い.その際,親子同席の際には敬語で会話し,子どものみとなった場合に,意識的に話口調を変えることにより,幾分,雰囲気を緩和できる印象がある.診察室で聞いたことは,基本的には他言しないことを伝え,無言でいる場合には,それを受け入れ,その理由を聞いてみる.