ブックタイトル多職種で取り組む食支援

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概要

多職種で取り組む食支援

74はじめに 胃ろうは,経口で栄養補給ができない方が,長期的に安全に栄養補給するには,最適な手技であるのはいうまでもない.しかし,終末期認知症の方に経腸栄養(経鼻経管栄養,胃ろうなど)を行っても,生命予後やQOLが改善しない,ということがいわれており1),胃ろうを造設するかどうかは,本人・家族などの希望をもとに,慎重に検討すべき手技の1つである.昨今,メディアの影響もあり胃ろうの適応に関して慎重にするべきである,という議論が多くなっている.食べられなくなった方に対して「胃ろう以外ありえない」と,やみくもに胃ろうが造設されることに対して慎重になるのはよい.しかし,議論がおかしな方向に進み,逆に「不適切な非胃ろう」例が増えてはいないだろうか.1つの事例を紐解くことから,真の胃ろうの適応に関して議論をすすめる.事 例Ⅰ 80 代, 女性. アルツハイマー型認知症と診断され( その際のMMSE(mini-mental stateexamination)は20点),3年が経過した.洋服を自ら選んで着ることができなくなり,風呂に入ることもできず,デイサービスを利用していた.歩行はスムーズで食事は普通食をむせなく摂取,失禁は認めていなかった. ある日,発熱,呼吸困難のために救急外来を受診.低酸素状態で高流量酸素を要する状態であり,重症肺炎と診断された.入院後,抗菌薬による治療が奏効し肺炎はすみやかに軽快,酸素状態,血液検査,画像所見ともに改善していた. しかし,食事をしない状態で推移しており,食事時の様子は以下のような状態であった.● 食事を口元まで介助でもっていっても口を開けてくれない● かろうじて開けてくれた口から食事を入れても,吐き出してしまう● 時に食事を嚥下してくれるが,その際はむせはなく,食事中のSpO2低下は認めない 十分量食べられない状態が1週間続いていたために,医師と家族とで面談がなされた.その面談時の会話の一部分を以下に示す.医師: 食べられない状態が続いています.もともと認知症もあり,認知症の方が食べられない状態の場合は,終末期が考えられます.看取りにしますか? 胃ろうにしますか?強制栄養と看取りをめぐって胃ろうの適応について考える1