ブックタイトル在宅医療 臨床入門 改訂2版

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概要

在宅医療 臨床入門 改訂2版

2(保険診療用語では「訪問診療」)と呼ばれてきた.「定期往診」と「24時間対応」が,医師が行う「現代の在宅医療」の基本的構成要素である.この「現代の在宅医療」は,以前より行われていた,急病に対する「往診」とは,(利用される技術内容は似ているとはいえ)医療技術的位置づけが異なる.診断・治療技術が単純な時代においては,診断機器も限られ,「往診での医療水準」は「外来での医療水準」と遜色なかった.そして,患者さんが急病になると医師を自宅に呼ぶ「往診」が広く行われていた.このような診療形態は,「臨時往診」と呼ばれてきた.しかし,1970 年代以降,技術進歩により,緊急に検査を駆使して行う「救急外来」が高水準の医療を提供するようになった.ここにきて,急性疾患に対して行う「往診」では,診断水準が劣るため,医師は安易に往診を行うことができなくなった.急性疾患を有する患者さんに対しては,外来に来てもらうか,救急外来などに搬入し,必要な検査を行った上で,急性疾患を治療する手順が標準的となった.反面,自宅では迅速に種々の検査ができないため,急性疾患に対する「臨時往診」はしだいに時代遅れとなり,医師も行わなくなっていった.昨今,市民から「以前の医師は往診してくれたのに,最近の医師は往診してくれない」という不満を聞く.それに対しては,「これは必ずしも医師の精神性の課題ではなく,技術進歩により,急性疾患に対する自宅での診断技術が低いため,往診での急性期医療がハイリスクであり,以前と違って,簡単にはできなくなったのである」と私は説明している.B.病院医療の光と影一方,平行して,1970 ?80 年代には,病院隆盛の影にさまざまな矛盾が指摘されるようになった.「スパゲティ症候群」「植物状態」「転院問題」「転院先老人病院の治療および療養環境の問題」などである.「Do-notresuscitate order(現在ではDo-not attempt resuscitatin order:DNAR)」の問題も,この頃,議論され始めた.痛みに耐えながら亡くなってい